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三菱 新型アウトランダーPHEVは車中泊しやすい? 車内や機能を徹底インプレッション

MōTA / 2022年3月28日 11時30分

高い機動力と利便性を誇る三菱 新型アウトランダーPHEV。懐が深い車だからこそ「趣味や被災時に、苦がなく車中泊できるのか?」は気になるところ。 フルフラットにしたときの余裕や寝心地、車中泊で便利に使える装備を徹底的にチェックしてみた。

まずはフラットスペースの広さをチェック

今回は「短期間での車中泊」を前提として、三菱 新型アウトランダーPHEVをレビューする。そもそもSUVは構造上、日常的な車中泊には向いていないし、ユーザーも数日程度の寝泊まりするケースが大半だろう。そため、SUVという枠組みの中で評価。アウトドアスポーツの寝床、あるいは災害発生時の緊急避難先としての性能を確かめていく。

まずは、SUVでの車中泊で一般的な「セカンドシートを前に倒して荷室と繋げる」状態をチェック。シートアレンジの手軽さや広さ、寝心地を調べてみた。

新型アウトランダーPHEVの荷室は、スクエアで余計な張り出しがない

シートアレンジはとっても手軽!

セカンドシートはシートバックのレバーを引いて畳む「シングルフォールディング型」。ワンアクションで済むので、座面を引き起こす「ダブルフォールディング型」や、座面とシートバックごと前に倒す「タンブル型」に比べて圧倒的に手軽だ。

しかも、シート本体だけでなく、荷室にあるレバーでもセカンドシートを倒せる。一部の高級車では電動式を採用しているが、手動式でスピーディに倒せるのがありがたい。このあたりは利便性を考慮した結果かもしれない。SUVを作り慣れた三菱だけに、よく考えられている。

シート本体のレバーは取っ手が大きく、前に倒す作業も楽

セカンドシート折り畳み用レバーは、荷室の左右側面にもある

7人乗り仕様でフルフラットにする場合は、当然サードシートを格納しなければならない。こちらは「タンブル型」で腕力がやや必要だが、「左右跳ね上げ式」よりは楽。しかも、フロア下へ完璧に格納可能。仕組みとしての完成度は高い。

サードシートは座面とシートバックを手前に倒して格納する

フロントシートでもフルフラットにできるが……

新型アウトランダーPHEVには、実はもうひとつフルフラットにできるアレンジがある。フロントシートのヘッドレストを外し、シートバックを後方に倒すことでセカンドシートと繋げる方法だ。実は、このシートアレンジがメーカーのカタログでも紹介されていない。

ただし、新型アウトランダーPHEVのフロントシートはサイドのサポートが肩まわりまで大きく張り出しているため、フラットとは言えない。またヘッドレストを外したり、電動シート(P、Gグレードに標準)を寝かせたりするのに手間がかかる。

荷室に荷物を積んだまま寝たいときには使えるが、それ以外のケースではセカンドシートと荷室を繋げるアレンジの方が快適だろう。

床面は波打っているが、体を伸ばして寝られるスペースは確保できる

フルフラットの寝心地をチェック

車中泊で肝心なのは、なんといっても寝心地。フルフラットにしたときの空間的な余裕や、床面のフラット感を確かめてみる。

大人ひとりが寝るなら上等のスペース

メーカーによるとセカンドシート&サードシートを格納したときの荷室長は2040mm、荷室幅は最小部1070mm、最大部1300mm。アウトドア用テントで言うなら「大人2人用」のフラットスペースが、なんとか確保できる仕様だ。

スペック上はギリギリ2名分のスペースとなる

実際に寝転んでみると、確かにリアゲートを閉めた状態でも、身長170cmの筆者なら頭はどこにもブツからない。頭上空間について体を起こして座るには首を曲げた姿勢になるが、SUVとしては十分に合格点だった。

ただし、実際に大人2名が肩を並べて寝るのは少し無理があるだろう。頭と足を互い違いの方向にして横になれば可能だが、顔の横に他者の足があるのは心地が良いとは言えないだろう。

もちろん、1人でならまるで問題ない広さであり、ミドルクラスのSUVでこれだけのスペースを確保できているのは賞賛すべきだろう。現行型のトヨタ RAV4やハリアーより奥行きは長いし、幅(最小部)も少し広い。リアホイールハウスの荷室への張り出しを極力抑えた作りが効いている。

平滑具合にはちょっと難あり?

さて寝心地はどうか? 結論から及第点といったところだ。倒したセカンドシートの背もたれは完全に平らにならず、やや傾斜している。シングルフォールディング型シートの宿命だが、横になるときは大きな問題ではない。

最も気になったのはリアゲート側に足を向けて寝たとき、ちょうど後頭部の下あたりで床面が途切れてしまうこと。スペック上の荷室長は2040mmだが、これは前方にスライドさせた前席背面までの距離。フルフラットにした床面自体は1600mmほどしかないのだ。

そのため、快適に寝るには対角線上に横になるのがベター。2人で寝るときには隙間をクッションで埋めるなどの工夫が必要だ。

真っ直ぐに寝ると前席とのくぼみに後頭部が落ちる格好になってしまう

荷室とセカンドシート背面との間に少し隙間ができる

居住空間としての快適性をチェック

車中泊の快適度を左右する要素は、床面の面積やフラットさだけではない。住まいと同様に、遮音性や空調、断熱性も快適性に大きく影響する。プライバシーを確保できるかも重要だ。そういった視点でも、車内をレビューしていく。

遮音性も断熱性も申し分なし

新型アウトランダーPHEVは遮音性能を相当に重視して開発された。価格帯がプレミアム・カテゴリーに足を踏み入れたSUVであるため、外部からのノイズを遮断する高い静粛性が求められたのだ。

そのこだわりは内装材に吸音素材をふんだんに仕込むだけでなく、ガラスにも遮音フィルムを挟み込むほど。実際エンジン&モーターをオフにした車内では、周囲からの騒音が気にならなかった。

車内後部のエアコン温度はリアシートからも調整可能

断熱性についてもメーカーは言及していないため、決して悪くないと推測される。クオーターウィンドウなどはジャンボジェット機の窓のように壁面から窪んだ位置にあり、内装材の厚さがよく分かる。車内に鉄板剥き出しの部分はなく、フルフラットにした床面もほとんどにカーペットが敷かれている。毛足こそ短めだが、厚めの作りで床下の冷気を感じずに済む。想像していた以上の快適性だった。

プライバシーを保つには工夫が必要

一方で車中泊時のプライバシーについては、ガラスエリアが大きいゆえに今ひとつ。リアガラスのスモークも薄めだ。もちろん、これは車内の開放感を優先した結果。閉塞感を感じさせないという点では好手であり、一概にマイナスとは言えない。

そうは言ってもプライバシーを保つには、自身でガラスに吸盤式シェードを付けるなど対策が求められる。窓をすっぽり覆い隠すシェードなら車中泊時の断熱効果も高まるので一石二鳥。ここは「カー用品でプライバシーを守れる上、昼は開放感を楽しめる」と前向きに捉えるのも良いだろう。

リアガラス用のロールサンシェード(P、Gグレードに標準)

車中泊で便利に使える装備をチェック

実際に車中泊してみると、近くに小物入れやドリンク置き場があったら……と感じる場面が少なくない。新型アウトランダーPHEVはそうした収納も充実しているが、フルフラット時の使い勝手はどうだろうか?

小物入れ、ドリンクホルダーが至る所に!

フラットスペースには後席用アームレストが裏返って露出し、そのまま利用可能。ドリンクが手に届く位置に置けるのはありがたい。

後席のドリンクホルダーはアームレストに穴が開いたシンプルな形状

加えて足元側にあるサードシート用のドリンクホルダーとスマホ置き場も使うことができる。車中泊時は小物をなくしてしまいやすいので、小物入れがたくさんあるのは助かるだろう。

サードシート用にもドリンクホルダーがある

乗降用グリップにロープやベルトを通せば、ランタンや洋服を吊しておける。多くの車で可能だが、車内が広い新型アウトランダーPHEVではより使い勝手が良く感じた。

S字フックをかければ手荷物をぶら下げられる

車内で家電が使える!

車内装備の中でも特筆すべきは、荷室壁面に備わったAC1500W電源だろう。一般的な電子レンジやIHクッキングヒーターなど多くの家電が使用可能。車中泊の快適性が格段に上がる。さらに災害発生時の非常電源としても使える安心感も好印象だ。

AC1500W電源はなんと全グレード標準装備

新型アウトランダーPHEVの車中泊適性は期待以上だった

新型アウトランダーPHEVの車内を総合的にチェックしたが、車中泊への適性はハイレベル。フルフラット時の就寝スペースは国産ミドルクラスSUVの中ではトップクラスだろう。加えて、小物入れなども充実しており、大人1名+子ども1名が趣味で車中泊する分には全く申し分ない。

一方で災害時などに連泊しなければならない状況では工夫が必要だ。優れた発電・給電能力を備えているが、フロアとシートの隙間を埋めたり、フロアをよりフラットにしたり、窓に目隠しを貼ったりするなど、長期滞在への備えが必須だ。

ただ、それはあくまで緊急時のこと。SUVとしては上出来なレベルと言える。駆動用バッテリーやモーターなどを腹下に搭載するPHEVで、これほど車内が快適なのは正直驚きだった。

[筆者/撮影:たけだ たけし]

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