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トヨタ 新型bZ4Xは、今の時代を読んだ完成度の高い商品力を備えた電気自動車だった!

MōTA / 2022年3月25日 17時0分

トヨタ 新型bZ4X

トヨタが新開発したBEV(Battery Electric Vehicle)の新型bZ4X。前回は自動車ジャーナリストの今井優杏さんが新型bZ4Xの走りの部分をお届けしたが、今回は内外装や使い勝手の部分を解説する。

トヨタ 新型bZ4X

トヨタとスバルが共同開発した新型BEVの「bZ4X」と「ソルテラ」

トヨタの本格的なBEV(Battery Electric Vehicle:バッテリー駆動の電気自動車)となる新型bZ4X。前回は肝心な走りはどうか、ということを書いた。

今回はパッケージとしての魅力、インテリアやエクステリア、使い勝手といった、走り以外の商品的な部分に触れていきたいと思う。走りはもとより、これもまた“初めて”にふさわしい、そして今の時代を読んだ、実に完成度の高い商品力を実現しているので、じっくりと見ていきたい。

そしてこの新型bZ4Xはスバルとの共同開発によってリリースされたクルマだ。よって、よく似た形の「ソルテラ」というモデルがスバルにも存在する。この2台の違いはどこか、といった観点からもお話しをしたい。

電気自動車ならではの特徴を活かし、低重心でロングホイールベースのパッケージを実現

まずはエクステリアだ。

寸法はトヨタのRAV4とよく似たサイズ、と思ってもらっていい。新型bZ4XとRAV4の関係性で言えば、全長は新型bZ4Xのほうが95mm長く、全幅が20mm広く、そして全高は60mm低い。しかし、明らかに新型bZ4Xのほうが見た目が大きいように見えてしまう。実際には背(全高)は新型bZ4XのほうがRAV4よりも低く設定されているにもかかわらず、だ。この視覚効果がどこから来ているのかというと、低く設計されたボンネットと広いホイールベースのおかげかと推測している。ちょっと既視感のないロー&ワイドな雰囲気を実現しているのだ。

実際には新型bZ4XはSUVとして設計されているため、アプローチ&デパーチャーアングルも緻密に計算され、さほど最低地上高が低いというわけではない。四輪駆動制御システムであるXモードも搭載されているから、走破性を削ぐような低さでは決してない。

しかし、近年のモデルの中ではこれまでにないほどにボンネットが薄い印象を受けるから、なんとなくウエストラインが低いように見えるのだ。

実際、新型bZ4XのボンネットフードはRAV4に比べて50mm低い。この薄さはボンネットフードの中にエンジンが存在しないがゆえに叶えられている。

そしてホイールベースはなんとRAV4比+160mm!こちらもレイアウトに自由度が高い電気自動車だから実現した寸法だ。今回、この新型bZ4XはRAV4とよく似たサイズではあるものの、RAV4のプラットフォームを流用せず、新しいBEV専用のプラットフォームを新開発している。兄弟車であるスバル 新型ソルテラとの共同開発なのだが、専用開発だからこそ前後にモーターを配し、床下にバッテリーを敷き詰めるという電気自動車ならではの特徴を活かして、低重心でロングホイールベースのパッケージを実現することが出来た。

このロングホイールベースのおかげで、詳しくは後述するが車内空間、特に後席の足元は驚くほど広い。また、エクステリアデザイン的にも前後に大きく引き伸ばされたタイヤがまるでエンジンモデルを前後にストレッチしたようにも見せている。

新型bZ4Xと新型ソルテラで大きくキャラクターを分けるフロントフェイス

トヨタ 新型bZ4X

さて、この薄いボンネットに象徴されるフロントフェイスだが、ここが新型ソルテラと新型bZ4Xのルッキングを大きく分けているポイントでもある。

新型bZ4Xはボンネットフードの切れ込みとグリルの鼻先までの庇のような空間にトヨタエンブレムを入れ、また、ライトの上にもボディ同色の装飾を入れている。対して新型ソルテラは他のスバルモデルのライトの意匠を継承し、上下方向に大きなライト面を活かしてエンブレムをグリル内に持ってきた。このライト自体もトヨタはシャープなキレ長タイプ、スバルは他のモデルにも見られるコの字型タイプとキャラを分けている。

スバル 新型ソルテラ

また、ご覧の通りグリルデザイン自体も大きく違う。そもそもBEVはエンジンモデルに比べて冷却がさほど必要ではないため、グリル部分に大きな開口部を設置する必要がない。むしろ、この部分をクローズにすることで、空気抵抗を抑え、航続距離を伸ばせるというメリットがあるため、新型bZ4X/ソルテラもそれに倣いボディ同色のエリアが多い、独特のデザインを実現した。

新型bZ4Xはこのボディ同色の前面部分に装飾をなるべく排除し、スッキリとした前面投影面積を持ち、スバルは六角形のモチーフを鼻先に持ってきている。ベースは同じなのに“すごく違う”と感じさせるデザイン手法は、各メーカーのアイデンティティの見せ所だ。

GR86/BRZと同じ手法が使われている空力パーツ

さらにトヨタ/スバルそれぞれらしい、空力パーツの配置の違いもこのフロントフェイスの中に隠されている。バンパーサイドの空力開口部だ。

この中に、トヨタは通称“お魚フィン”ことエアロスタビライジングフィンを配した。御存知エアロスタビライジングフィンはトヨタの様々なクルマにすでに採用されている小さな空力パーツだが、これがこの穴の中に3本備えられている。対してスバルは“空力シボ”と呼ばれる、細かな柄の入った塗装のような樹脂パーツが配された。この柄により鮫肌効果で空力を整える、というのがスバル側の説明だが、この2つを見て思わず新型GR86/BRZを思い出した人は少なくないだろう。そう、同じ手法が使われていたのは面白い。

樹脂むき出しのフェンダーがEVらしからぬワイルドさを演出

トヨタ 新型bZ4X,スバル 新型ソルテラ

トヨタ 新型bZ4X,スバル 新型ソルテラ

リアデザインもライト類の配置で見た目を分けている。

新型bZ4Xはボディを一直線に横切るLEDを使って、横広の印象にした。トヨタ ハリアーなど都会派SUVにも通ずるような、流行のリアライトデザインだ。対して新型ソルテラは左右独立にして堅実な印象に。フロントと同じくコの字型を強調し、横方向の広がりを意識したデザインになっている。

双方に共通するのはフェンダーを樹脂むき出しにしたこと。これがいい意味でEVらしからぬワイルドさを演出しており、めちゃくちゃカッコいい。ちょっとしたアナログ感を感じさせるような部分でもあって、全体的に漂う先進感をうまく現代に落とし込んでいるような手法に思える。

注目のワンモーショングリップ&ステアバイワイヤは、まずは中国市場に導入予定

トヨタ 新型bZ4X

インテリアも共通部分が多い。違うのは新型ソルテラがパドルシフトを備えているということくらいだろうか。スバルの顧客が運転に拘る人が多いのに対して、トヨタの顧客は比較的クルマにコンフォートさやイージーさを求める傾向にあるという判断からの装備だそうだが、細かに顧客の好みを分析して引く装備は引き、足す装備は足しているのは好感が持てる。

ちなみに新型bZ4Xのみが設定する、まるでF1みたいなルックスの“ワンモーショングリップ&ステアバイワイヤ”だが、これはまだ日本には入ってこない予定。実は日本よりも先進感をBEVに求める中国市場にまず導入されるのだそうだ。日本でも要望が多ければ導入予定とのことだが、実際にクルマには意外にコンサバな日本だから、いったいどうなるのか。続報を楽しみに待ちたい。

通常のステアリングホイールでも、充分に室内は未来的だ。まず、メーターがフードレスのむき出しに。ステアリングホイールから飛び出すようなラインに沿って、フロントガラス手前にフルデジタルのメーターが配置される。明るさによって彩度を自動調整する液晶を採用しているため、フードレスでも、またどんな天気でも優れた視認性を確保している。さらに、このメーターに向かって漫画の集中線のようにハンドルから伸びる直線デザインは、走行中に自車の位置を把握しやすいように、との狙いもあるという。

このメーターのあたり、助手席のダッシュボードに至る部分には、リサイクルファブリックの装飾がなされている。これまでなら間違いなく“上級車には本革”という流れだったのだろうが、SDGsの観点から、上級車にこそファブリック、という風潮は世界で広がりを見せつつある。新型bZ4Xでも同様に、BEVだからこそファブリックを採用しました、との言葉を頼もしく思った。

メインディスプレイは12.3インチと大型。しかし、トヨタ プリウスPHVもしくはスバル レヴォーグのような縦型の超大型、というわけではないのが興味深い点。コストと実用のバランスだろうか。使用感は上々。画面も美しい。

シフトレバーも丸形のものを採用し、新しさを強調する。使用感はプリウスなどと同じだが、コンパクトに配置された操作系は未来を感じさせるものだ。

驚くほどの広さを確保する後部座席

さて、その下にスマホの非接触充電が出来るコンパートメントがある。蓋をワンクリックするとそのエリアが出現するのだが、この蓋こそがおしゃれな感じになっていて、中にスマホを入れると、すこし透けて見えるようになっているのだ。

超先進的でありつつ、だからこそくつろげるようなルーミーな空間づくりがなされているのは微笑ましいポイントであり、これこそが今後のインテリアデザインの主流なのかもしれないと思わせる部分でもあった。

後部座席はかなり足元が広い。先述のロングホイールベースのおかげでRAV4比+55mmと、狭い室内空間にしては相当な数字だ。実際に乗ってみてもこの広さは驚くほど。前の座席につま先をぶつけることなく足が組めることに、おもわず「おお!」と声が出てしまう。

グローバルでもSUVタイプのBEVは後部座席のニークリアランスを重視する傾向にあるが、新型bZ4Xもしっかりとその流れに乗っていた。

走りの方のインプレッションは先に掲載済みなので是非そちらもご覧頂きたいが、ルックスやユーティリティだけでも充分に驚きの新型bZ4X。一般市場に登場するのを是非ご期待いただきたい。

[筆者:今井 優杏/撮影:小林 岳夫・トヨタ自動車]

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