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ボルボ初のBEV、新型C40 リチャージはスポーツ性能を備えながらもアクセル操作に対して自然なフィーリングが特徴

MōTA / 2022年4月18日 10時0分

ボルボ C40 Recharge

2030年までに100%BEVメーカー化を進めているボルボ。日本では新型BEVのC40リチャージを導入し、EVメーカーとしてのプレミアムブランド化に意欲的に取り組んでいる。そんな新型C40リチャージを自動車研究家の山本シンヤさんが解説する。

ボルボ C40 Recharge

ボルボ初のBEV専用モデル、新型C40 リチャージを日本に導入

すでに日本で発売している全てのモデルの“電動化”が完了しているボルボ。これは「2030年に100%BEV(Battery Electric Vehicle:バッテリー駆動の電気自動車)メーカー」になると宣言した布石だが、すでに48Vマイルドハイブリッド/プラグインハイブリッドの販売は直近で11%伸びているそうだ。となると、次のステップはBEVとなるのは自然の流れだろう。そんな中、ボルボ初となるBEV専用モデルが日本に導入された。それが新型C40 リチャージだ。

XC40との共通部分が多い内外装も随所にBEVらしさが感じられる

エクステリアはざっくり言うと同社のコンパクトSUV「XC40」のクーペ版である。フロント周りはXC40との共通項が多いが、ボディ同色でカバーされるグリル部はBEVらしさを表現。Bピラーから後方は専用デザインで、単純にクーペ化しただけでなく全高も-65mm下げられている。個人的には20インチタイヤが少々オーバーデコレーションに感じるが、この辺りは好みの問題だろう。

インテリアも基本的にはXC40に準ずるが、驚きなのはスターターボタンとサイドブレーキが存在しないこと。つまり、ドアロック解除でスタンバイ状態……と言うことだ。この辺りは慣れてしまえば全く問題ないと思うが、2台所有している人は注意が必要かも!?

日本では本革が人気だが、今後はレザーフリーを徹底

ボルボは電動化に加えて「レザーフリー」の宣言も行っているが、新型C40 リチャージのステアリングやシートなどは合成素材が採用される。実際に触れると触感の滑らかさに僅かな違いがあるが、言われなければ気が付かないレベル。加えて、カーペットやドアトリムにはリサイクル素材が使用される。実は日本では今も本革仕様の人気が高いが、それでも「やる!」と言ったら徹底する姿勢は、何ともボルボらしい。

ちなみに試乗車は「フィヨルドブルー」のコーディネートだったが、個性的なのに奇抜ではなくクールで品があるインテリアに仕上がっていた。これは他のモデルにも水平展開していただきたい。

電動化でもパッケージに苦しさはなし

パワートレインは前後に204ps/330Nmのモーターを搭載するツインモーターAWDで、システム出力は408ps/660Nmを誇る。

プラットフォームはボルボの小型系をカバーする「CMA」だが、そもそも電動化を視野に入れた設計のため床下に78kWhのバッテリーを敷き詰めてもパッケージに苦しさはない。シートポジションも他のボルボと同じく自然で、後席の居住性もクーペとして考えれば十分以上のスペースが備えられている。

「モリモリ湧き出る力強さ」ではなく自然なフィーリング

一般道を普通に走らせると「あれっ、本当に408ps/660Nmあるの?」と思うくらい、穏やかな特性だ。

BEVならではの応答性の良さやトルクを実感するも「モリモリ湧き出る力強さ」ではなく、あくまでもドライバーのペダル操作に合わせて力強さが増していく自然なフィーリングだ。BEVでも「ボルボ」らしさが感じられて一安心した。

ちなみに通常はアクセルOFFでコースティング(惰性)するが、ワンペダルモードを選ぶと回生ブレーキで完全停止までカバーする。ただ、かなり強力な回生ブレーキなのでコントロールは慣れが必要なのと、切り替えが面倒(モニターの階層を追う必要がある)なので、ワンタッチ操作が可能なスイッチを別に用意するべきだと思った。

ただ、そこで終わらないのが新型C40 リチャージだ。アクセルを素早く踏み込むとその性格は激変、強烈なGと共にクルマは瞬時にダッシュ。その印象はポルシェ タイカンに匹敵するレベルで、思わず「おー!」と声を発してしまったくらい(笑)。ちなみに0-100km/h加速4.7秒は、かつてボルボS60/V60に設定されていた「ポールスター」を遥かに超えるレベルのスポーツ性である。

モデルイヤーを重ね最良の仕上がりに

このように、パワートレインは「ボルボらしさ」と「ボルボらしからぬ」が共存している。現状のBEVは内燃機関と比べて不便が強いられるが、だからこそ、それをしてでも欲しいと思わせる“個性”が必要だと思っている。そういう意味では、新型C40 リチャージの二面性も個性の一つと考えていいと思う。

ブレーキは回生協調式を採用するが、良くできた油圧ブレーキと同じ滑らかタッチと操作に忠実なフィーリングを備える。実は初期の48Vマイルドハイブリッド/プラグインハイブリッドは鉄板を踏んでいるかのような硬いフィールとコントロール性の難しさが気になっていたが、モデルイヤーを重ねるごとにアップデート。新型C40 リチャージは現状では最良の仕上がりと言っていいかもしれない。

フットワークはちょっと引き締められている印象はあるものの、穏やかで滑らかな特性は内燃機関のボルボと変わらず。ただ、前後バランスの良さと重厚な乗り味は新型C40 リチャージ独自のもので、コーナリング時の一連のクルマの動きの無駄の少なさと4つのタイヤが常に効率的に仕事をしていることが分かるハンドリングバランスは、ボルボ最上級かもしれない。

この辺りは約500kgのバッテリーを車体中央に搭載することによる前後重量バランスの良さ(限りなく50:50)と低重心化が大きく寄与しているのは間違いないだろう。

乗り心地は「インスクリプション以上Rデザイン未満」

乗り心地は若干硬めながらも角が取れているので不快な印象はなかった。他のボルボで例えるなら「インスクリプション以上Rデザイン未満」と言った印象かな…と。

航続距離はWLTCモードで485km。今回試乗した感じでは実用で400kmと言った所だった。これを多いと見るか少ないと見るかは人それぞれ。

個人的には1台で全て賄うなら使い方を含めてコツや工夫が必要、2台所有なら十分以上と言った感じである。

ちなみに「ここまでパフォーマンスは必要ない」と言う人には、FFで231ps/330Nmのシングルモーター仕様もラインアップされているので、そちらを選ぶといいだろう。

[筆者:山本 シンヤ 撮影:小林 岳夫]

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