レクサス 新型LXオフロード試乗┃ボコボコの岩盤の上でも“レクサスらしさ”を感じさせる悪路走破性
MōTA / 2022年5月29日 12時0分
14年ぶりにフルモデルチェンジを行い、4代目となる新型モデルが2021年12月末に登場したレクサスのフラッグシップSUV「LX」。そんな新型LX600のインプレッションを自動車ジャーナリストの今井優杏さんが「公道編」と「オフロード編」の2回に渡りお届けする。今回は、前回の公道編に引き続き「オフロード編」をお届けする。
新型LXはランクルのレクサス版ではなく、れっきとしたレクサスのフラッグシップSUV
では、肝心のオフロードはどうかだ。ご存知の通りLXはトヨタのランドクルーザーと兄弟車という関係。しかし、今回は開発陣自らが「新型LXは“ランクルのレクサス版ではなく、設計段階からレクサスのフラッグシップSUVとして、作り上げて来ました」と豪語している。とすれば、この“レクサスのフラッグシップ”としての本領を発揮できるのは、オフ/オンどちらに用意されているのか。
試乗する前はきっと、オンロードにあるのだろうと思っていたし、実際にとても良かった。
しかし正直、オフロードで乗った新型LXは、オンロードよりも“さらに良かった”と言える。
富士スピードウェイ内には本格オフロードコースが存在
通い慣れた富士スピードウェイの、しかもショートコースの上にこんな施設があったとは。
聞けば以前からも存在していたそうだが(私はスケジュールの都合で不参加だったが、以前ハイラックスの試乗会にも使用したという)、今回は新型LX試乗会のために、イチから整備し直したんだそう。いやはや、実にもったいない。是非このまま保管して常設のコースにし、他メーカーの試乗会などに積極的に貸し出していただきたいくらいだ。
…と感じ入るほどに、そのコースは本気のオフロードであった。しかも前日の雨で、ぬかるみMAX。人の脚では走破出来ないレベルで、余談だが事実、カメラマンさんは体力を消耗しきっていた。
どう考えても地面に突き刺さりそうなダウンヒルでも、そそり立つ壁のような勾配の、滑る岩場を登るときでも、そして前後輪が浮くような、トリッキーな接地でも。
いや、状況が過酷になればなるほど、レクサスらしい上質さが際立つと言っても良い。どんな状況でも室内はとても静かで、とてもフラットだったのだ。
ボコボコの岩盤の上でも“レクサスらしさ”を感じさせる悪路走破性
事実、オフロードコースでは「この程度の道ならオートで全然いけちゃいます」と、けっこう怯んでしまうような路面の走行を指示されたのだが、本当に呆気ないくらいスルンと走り抜けてしまったので、思わずあとで路面を確認しに行ってしまったくらい。
クロールコントロールとは、超悪路走行時をアシストするトヨタの技術で、駆動量とブレーキ油圧を自動で制御するというものだ。これを使えばドライバーはアクセルやブレーキを操作せずとも、ステアリング操作のみで極低速にて、悪路からの脱出が容易になる。このブレーキ制御が電子制御になり、また新しい高性能ESCモジュレータを採用したことによって、かなり繊細に制御を行えるようになった。
作動は至極簡単。クロールコントロールスイッチを押して、5段階ある速度を任意で設定するだけ。ちなみに、今回体感したようなハードな悪路だと、一番低い1km/hの設定をオススメされた。
これがもう、圧巻の走破性なのだ。え? こんなところまで? と思うような道を、実に涼しい顔してクリアする。「ああ、レクサスだ…」ボコボコの岩盤の上でも、そう思わせられる。
そしてさらに、視覚的な安心もある。
オフロードコースは狭小で、さらにすぐ横が崖! なんていうシチュエーションも多い。そんなとき、車両周辺の状況を4つのカメラで撮影した映像を、ほぼタイムラグなくディスプレイに表示させてくれる。また、手前で撮影された過去の映像を床下透過映像として提供し、現在の車両やタイヤ位置を示す線を合成することで、車両下の状態や前輪の位置を確認できるという機能も。
これは実際の走行中、かなりの効果を発揮する。視覚的に「まだ行ける」という安心感を得ることで、ライン取りの幅も増えるし、なにより怖くないのだもの。
オフロード走行中でも究極のリラックスを体感できる後席
一番ラグジュアリーな4座シートを備える「エグゼクティブ」では、NASAが提唱する「中立姿勢」を参考にリクライニング姿勢を設計している。この着座姿勢はリアコントロールパネル内の“リラックスモード”を選択することにより、ワンアクションでセット出来るのだが、この姿勢でオフロードに行くと、恐ろしいくらいに“なんともない”のだ。いや、嘘じゃない。本当に「え? 今なにか起こってます?」っていうくらい、登坂中であってもダウンヒル中であっても、身体のどこにも余計な力が入らない…なにこれ? 究極のリラックス。不思議な体験だった。
このようにレクサスは今後、体験などを提供するという試みも始めていくようなので、今もしかしたらレクサスオーナーになると、なんだかワクワクするようなアレコレを提供してもらえるかもしれない。
そういうホスピタリティも含めて、非常に魅力的であることは間違いない1台だった。
[筆者:今井 優杏 撮影:小林 岳夫]
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