日産 新型サクラはデイズとの価格差に見合う価値を備えた買い得な電気自動車┃高い走行性能、質感が魅力
MōTA / 2022年7月17日 10時0分
日産 新型サクラは今夏に発売される軽自動車規格の電気自動車です。他の電気自動車と比べて軽自動車であるため、安価で取り回しもしやすく、街乗りメインで使用するならちょうど良い航続距離が魅力のモデルです。 今回、改めてグレード別の価格やサイズ、兄弟車の三菱 新型eKクロス EVとの違いについて、カーライフ・ジャーナリストの渡辺陽一郎さんが詳しく解説します。
電気自動車のメリットは環境性能だけでなく、走行安定性と乗り心地も向上させやすいところ
エンジンを搭載しない純粋な電気自動車(EV)の価値は、走行段階において、二酸化炭素を含めた排出ガスを発生させないことです。環境負荷の少ないパワーユニットです。その一方で電気自動車は、快適性でも注目されます。エンジンを搭載しないモーター駆動なので、走行音はきわめて小さいです。加速も滑らかで、同乗者も快適です。
さらに電気自動車は、重い駆動用リチウムイオン電池を居住空間の床下に搭載するため、重心が低いです。衝突時には電池を確実に守る必要があるため、ボディの底面部分の補強も入念に行われます。
このように電気自動車は、低重心かつ高剛性のボディを備えることで、走行安定性と乗り心地も向上させやすいです。環境性能と併せて、安全で上質なクルマを開発する上でも有利なカテゴリーです。
価格面、航続距離で課題のある電気自動車だが、新型サクラはこれらを払拭
その代わり電気自動車は、価格も高いです。販売台数の多い日産 リーフでも、買い得グレードのX・Vセレクションが394万6800円です。経済産業省による補助金の78万6000円を差し引いても、316万800円になります。電気自動車には、1回の充電で走行できる航続可能距離が短いという指摘もあります。リーフX・Vセレクションの航続可能距離は、WLTCモードで322kmです。WLTCモード燃費が15km、燃料タンク容量が50Lのガソリン車なら、10Lの余裕を残して40Lだけを使っても600kmを走れます。
電気自動車は以上のような欠点を備えていますが、軽自動車サイズの日産 新型サクラは、これらを払拭させてメリットを上手に活用しています。
新型サクラの価格は実質239万300円〜
まず新型サクラの価格は、リーフと比べても大幅に安いです。上級グレードの新型サクラGは、運転支援機能のプロパイロットなどを標準装着して294万300円です。経済産業省による補助金の55万円を差し引くと239万300円ですから、リーフX・Vセレクションの316万800円を約77万円下まわります。また新型サクラと共通のプラットフォームを使うデイズハイウェイスターGターボプロパイロットエディションは、価格が174万7900円です。デイズに22万2037円のカーナビを加えて新型サクラGと条件を合わせると、約197万円になります。
補助金を差し引いた新型サクラGの価格は前述の239万300円ですから、デイズよりも約42万円高いですが、電気自動車とあって購入時に納める税額も約3万円安くなります。これを差し引くと、両車の実質的な価格差は39万円まで縮まります。
自治体によっては、経済産業省とは別の補助金を交付しています。東京都は45万円と多額です。この金額まで差し引くと、新型サクラGはさらに安くなりますが、一般的な損得勘定は、経済産業省による55万円の補助金だけを考慮して行うのが良いでしょう。
新型サクラの外装┃上級電気自動車に通じるデザイン
ガソリンエンジンを搭載するデイズとの実質差額は39万円ですが、果たして新型サクラGに、それだけの価値があるのでしょうか。試乗して確認してみましょう。 新型サクラGには「小さな高級車」のような雰囲気があります。外観では、フロントマスクをアリアなどの上級電気自動車に通じるデザインで仕上げました。ボディ側面の形状も異なり、共通のプラットフォームを使うデイズに比べて、ボディパネルにボリュームがあります。 ちなみに姉妹車になる三菱 新型eKクロス EVの外観は、ガソリンエンジンのeKクロスとほぼ同じですが、サクラは大きく異なります。外観でデイズと共通化したのは、ウィンドウ程度です。もちろん新型eKクロス EVとも異なり、遠方から見ても、新型サクラであることが明確に分かります。新型サクラのボディサイズ
また、新型サクラのボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1655mmと、全長と全幅はデイズ、ルークスと変わらないものの、全高はルークスに比べるとヒンジドアである分下げられており、デイズよりは少し頭上方向が高いです。新型サクラの内装
インパネなどの内装も独特です。デイズは助手席の前側が手前に張り出しますが、新型サクラはトレイ状で、ファブリック調の表皮を巻きました。プレミアムパッケージ(4万4000円)を加えると、本革巻きのステアリングホイールなども備わり、シート表皮も合成皮革とトリコットになって質感が一層向上します。 前席は座り心地も優れ、シートは背中から大腿部をしっかりと支えます。新型サクラが1回の充電で走行できる距離は、WLTCモードで180kmとされ、長距離を移動するためのクルマではありませんが、上質な内装と相まって長時間運転にも応えられます。新型サクラGなら運転支援機能のプロパイロットも標準装着されているので、高速道路の走りも快適です。後席は座り心地にもう少し柔軟性が欲しい
注意したいのは後席です。デイズに比べると座り心地を改善しましたが、座面はもう少し柔軟に仕上げる余地があります。床と座面の間隔も十分とはいえません。3〜4名で乗車する機会のあるユーザーは、後席の座り心地を確認しましょう。新型サクラの走行性能は、加速力に余裕があり乗り心地も快適
運転感覚は、モーターのノイズが小さく、回転感覚も滑らかです。しかも瞬発力が強いため、モーターの回転が下がっている停車時や巡航時にアクセルペダルを踏み増すと、力強い加速を即座に開始します。デイズのターボエンジン車よりも加速力に余裕があり、感覚的には1.8Lエンジンに相当します。ボディ剛性も高く、乗り心地も快適です。時速40km以下では路上のデコボコを伝えますが、段差を通過する時の吸収力は優れ、走りの満足度は小型車並みです。ちなみに走行性能や乗り心地は新型eKクロス EVと共通ですから、デザインの好みに応じて選んでも良いでしょう。
新型サクラの推奨グレードは?
推奨されるグレードは、プロパイロットが不要なら、ベーシックなXに必要なオプションを加えるのが得策です。プロパイロットが欲しい時には、価格がXよりも54万1200円高いGを選びます。Xにプロパイロットを含んだセットオプション(44万5500円)を加えることも可能ですが、この選び方をすると、価格が大きく高まるのに、Gに比べて内装の質が見劣りします。またXにオプションを多く加えると、数年後に売却する時も不利です。売却時の査定は、主に車種/グレード/年式/走行距離に基づいて行われ、オプションはあまり評価されないからです。オプションをたくさん付けるなら、Gにグレードアップさせましょう。
それにしても、新型サクラは買い得な電気自動車です。販売店では「デイズからサクラに乗り替えるお客様も多いです」と述べています。デイズとの価格差に見合う価値を備えています。
[筆者:渡辺 陽一郎 撮影:茂呂 幸正]
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