日産 エクストレイルの内装やサイズ、価格、納期、おすすめグレードなどを紹介
MōTA / 2022年9月12日 11時0分
2022年7月末に、およそ9年ぶりとなるフルモデルチェンジを果たし4代目へと進化した日産 エクストレイル。初代モデルを彷彿とさせるスクエアなフォルムに高級感あふれる内装、待望のe-POWER搭載と、注目度満点の新型エクストレイルについて、カーライフ・ジャーナリストの渡辺陽一郎さんが詳しく解説します。
新型エクストレイル、発売から1ヶ月で1万7000台の受注と好調なスタート
今はSUVが人気のカテゴリーになり、新車として売られる小型/普通乗用車の約30%を占めます。しかし悪路向けSUVのブームが去った2000年代当時は、10%以下の小さな市場でした。しかし、日産 初代エクストレイルは、2000年に前輪駆動を採用したシティ派SUVとして発売され、ヒット商品になりました。
初代エクストレイルが人気を得た理由は、前輪駆動をベースにしながら、外観や内装を悪路向けSUVのように仕上げたことです。アウトドアのツールとして使える「タフギア」のコンセプトは、この時点で確立されました。
この後、2007年に登場した2代目エクストレイルは初代の考え方を受け継ぎましたが、2013年に発売された3代目エクストレイルでは、シティ派SUVの性格を強めています。北米で売られるローグと共通化され、舗装路における走行安定性は向上しましたが、タフギアのコンセプトから少し離れて一般的なSUVになりました。
このような経緯を経たエクストレイルが2022年7月25日に4代目へフルモデルチェンジし、2022年8月31日の時点で1万7000台を受注しています。先代型の3代目エクストレイルが約9年間にわたって販売され、乗り替え需要が豊富な事情もありますが、好意的に受け止められているようです。そこで今回、新型エクストレイルの試乗を行いました。
日産 新型エクストレイルのボディサイズ
新型エクストレイルのボディサイズは全長4660mm × 全幅1840mm × 全高1720mm、ホイールベースは2705mm。先代に比べホイールベース自体は同等ながら、30mm短く、20mmワイドで、20mm低いボディサイズとなります。日産 新型エクストレイルの外観・デザイン
新型エクストレイルの外観は、先代型と同じく基本的には北米で販売されるローグと共通ですが、水平基調とあって比較的シンプルな印象です。開発者は「原点(初代モデル)に回帰した面もある」といいます。車内に入って運転席に座ると、SUVらしくボンネットが良く見えます。ボディの先端や車幅は分かりやすいです。フロントピラー(柱)が比較的手前に位置するので、斜め前側の視界も悪くないです。
ボディ後端のピラーは太めで、真後ろのウインドウも大きくはないため、後方視界は良くないです。SUVの平均水準ですが、初代や2代目エクストレイルに比べると、前方も含めて視界は明らかに悪化しています。最小回転半径は18/19インチタイヤ装着車ともに5.4mです。先代型は5.6mだったので、小回りの利きは少し向上しました。
日産 新型エクストレイルの内装
新型エクストレイルの内装は、今回の試乗車では最上級のG・e-4ORCEとあって質感が高いです。インパネには柔らかいパッドが使われ、合成皮革でカバーされています。ステッチ(縫い目)もあしらわれ、ていねいに造り込みました。新型エクストレイル G・e-4ORCEでは、インパネの中央には12.3インチのワイドなディスプレイと日産コネクトナビゲーションシステムが装着されています。エアコンのスイッチは比較的高い位置に備わり、ATの切り替えレバーも含めて、視認性と操作性が良いです。
ATレバーの手前にはドライブモードセレクターが備わり、オート/オフロード/スノー/スポーツ/エコという切り替えがあります。オフロードは悪路向けのモードで、多板クラッチの締結力を強めるなど、力強い走破性を可能にしました。 前席の座り心地は快適です。柔軟な印象はありませんが、腰をしっかりと支えて着座姿勢が乱れにくいです。長距離を移動する時も快適です。後席は座面の奥行寸法が若干短く、柔軟性も少し乏しいです。座面の角度は水平に近く、直進時は快適ですが、カーブを曲がる時などは腰をもう少し安定させて欲しいです。開発者は「後席の背もたれを前側に倒して荷室面積を広げる時、床を平らにするために、後席の座面が水平に近付いた」と説明しています。
それでも後席の足元空間は広いです。身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ半に達します。Lサイズセダン並みの余裕です。後席に座る乗員の足が前席の下側に収まりやすく、後席の膝先空間が握りコブシ1つ半になるまでスライド位置を前側に寄せられます。荷室面積を拡大させやすいです。日産 新型エクストレイルの荷室
新型エクストレイルの荷室は奥行き寸法に余裕があって面積も広いです。リヤゲートの角度も比較的立っているので、背の高い荷物も積みやすいです。荷室で注意したいのは、e-POWER専用車になったこともあり、先代型のノーマルエンジン車に用意されていた防水フレキシブルラゲッジ/防水ラゲッジボードが廃止されたことです。開発者は「防水された荷室は質感がいまひとつで、人気も伸び悩んだ」といいますが「タフギア」のコンセプトを表現する装備でした。アウトドアで汚れた荷物を積む機会がなくても、その機能を備えることに価値があります。日常的に使われない悪路向けSUVの走破力も同様でしょう。このようなSUVならではの機能は、所有することのプライドにも繋がります。
日産 新型エクストレイルのパワートユニット、燃費
試乗したグレードは、最上級のG・e-4ORCE(イーフォース)です。新型エクストレイルのパワーユニット(動力を生じさせる装置)は、直列3気筒VCターボエンジンを搭載するe-POWERのみです。駆動方式は、前輪駆動の2WDと後輪をモーターで駆動する4WDがあり、G・e-4ORCEは後者です。エンジンは、圧縮比を8から14まで変化させる可変機能を装着しており、なおかつターボも備えています。しかもe-POWERですから、このエンジンは発電を担当して、駆動はモーターが行います。発電用エンジンとしては、メカニズムがとても贅沢に思えますが、発電性能、燃費効率、静粛性などの上質感をバランス良く向上させることができました。
なお、新型エクストレイルのWLTCモード燃費は、2WDが19.7km/L、4WDは18.4km/L(3列シート車は18.3km/L)です。
日産 新型エクストレイルの走行性能
新型エクストレイルを試乗してみると、モーター駆動の特徴として、アクセルペダルを踏み増した次の瞬間には速度を素早く高めます。そのために巡航中にアクセルペダルを踏み増した時の感覚は、V型6気筒3.5Lエンジンに相当するような印象でした。しかも通常はエンジン音が小さいです。登坂路でアクセルペダルを深く踏み込むと、3気筒特有の粗いノイズが聞こえたり、低速域でエンジンが始動するとゴロゴロとした音質になりますが、頻繁に生じるわけではありません。
走行安定性は特に機敏な感覚はありませんが、操舵に対する反応が正確です。進路を少しだけ変えるような操作も安心して行えます。カーブを曲がっている最中も、前輪がしっかりと接地して安心感が伴います。高重心のSUVは、下り坂のカーブで安定性が不足しやすいですが、新型エクストレイルは後輪の接地性が高く挙動を乱しにくいです。全高が1700mmを超えるSUVとしては、高速道路や峠道を走る時の安心感を高めました。その代わりに乗り心地は、時速50km以下の低速域を中心に、少し硬めに感じます。硬めでもタイヤが路上を跳ねるような接地不足はなく、段差を通過する時の突き上げ感も抑えましたが、細かなデコボコを乗員に伝えやすいです。乗り心地はもう少し柔軟にする余地があるでしょう。
この乗り心地にはタイヤも関係しています。G・e-4ORCEのタイヤサイズは19インチ(235/55R19)で、銘柄はハンコック・ベンタスS1エボ3でした。指定空気圧は前輪が250kPaで、後輪は230kPaです。 一方、新型エクストレイルにラインナップされているAUTECH(オーテック) e-4ORCEは、20インチ(255/45R20)を装着しており、タイヤの銘柄はミシュラン・プライマシー4です。指定空気圧は若干低い240/220kPaに抑えられています。オーテックも乗り心地は硬めですが、G・e-4ORCEに比べると粗さを抑えた角の丸い印象で、20インチながらも乗り心地が上質に感じます。タイヤサイズの違いによってタイヤが路面をつかむ力も高く、ステアリングホイールを通じて、前輪のグリップ具合がドライバーの掌へ明確に伝わります。例えば路面が荒れた状態で、なおかつ濡れているカーブを曲がる時、オーテックなら路面とタイヤの状態が直感的に分かりやすく、G・e-4ORCEよりも安心して運転できました。購入時には、可能であればオーテックの試乗車にも乗ってみてください。
日産 新型エクストレイルの価格、おすすめグレード、納期状況
グレード選びとしては、走行安定性の違いも含めると、後輪にもモーターを搭載する4WDのe-4ORCEが良いでしょう。2WDとe-4ORCEの価格差も、装備の違いを補正して約20万円ですから後者が割安です。受注状況を見てもe-4ORCEが90%を占めます。Sグレードは、運転支援機能のプロパイロットなどを装着できないので、避けた方が良いでしょう。そうなると中級のX・e-4ORCE(379万9400円)か最上級のG・e-4ORCE(449万9000円)です。推奨装備の違いに応じて判断すれば良いですが、G・e-4ORCEにはプロパイロット緊急停止支援システム、SOSコール、日産コネクトナビ、アダプティブLEDヘッドライトなどが標準装着されています。G・e-4ORCEの価格は、X・e-4ORCEに比べて69万9600円高いですが、プラスされる装備は80万円に相当するので買い得です。
なお新型エクストレイルの納期を販売店に尋ねると「2022年9月中旬に契約して、納車されるのは2023年の6月」とのことでした。約9ヶ月を要します。新型エクストレイルに限った話ではありませんが、購入を希望されるなら、商談を早めに開始しましょう。
[筆者:渡辺 陽一郎 カメラマン:小林岳夫/茂呂 幸正]
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