新型クラウンクロスオーバーはセダンとSUVの中間的な存在! 同門ハリアーと比べて分かった新型クラウンクロスオーバーの特徴と欠点とは
MōTA / 2022年10月6日 11時0分
トヨタは2022年7月15日(金)、新型クラウンを発表しました。16代目となる新型クラウンは近未来感のある新しいデザインを取り入れ、トレンドとなっているSUVを含む全4タイプのボディを用意します。 そんな新型クラウンの走行性能や価格、スペック、内外装のデザインについて、カーライフ・ジャーナリストの渡辺陽一郎さんが詳しく解説します。
新型クラウンはSUVを3種類、セダンを1種類そろえる
「フルモデルチェンジ」は文字通りクルマのすべてを造り替えることですが、通常は車種の基本的なコンセプトやサイズは継承します。基本コンセプトまで変えると、まったく別のクルマになるからです。
ところがトヨタ 新型クラウンは、基本コンセプトから変更しました。従来型の日本向けの上級セダンでは、売れ行きが低迷して、商品として成り立たなくなったからです。
販売不振が深刻なら、以前のマークXやプレミオ&アリオンのように、クラウンを廃止する方法もありました。しかしトヨタは、それを避けたいです。クラウンは初代モデルを1955年に投入した伝統ある商品になるからです。
そこで新型クラウンは、SUVを3種類、セダンを1種類そろえる「クラウンシリーズ」に発展しました。SUVなら海外でも販売しやすく、合計4種類のボディがあれば、販売総数も高く保ちやすいという狙いです。
その新しいクラウンシリーズの第1弾として、「クラウンクロスオーバー」が登場したので試乗しました。試乗したグレードは、直列4気筒2.5Lのハイブリッドを搭載するGアドバンストと、そのレザーパッケージです。トヨタの上級SUVとしてはハリアーが人気なので、比較チェックも行います。
新型クラウンクロスオーバーのデザイン
新型クラウンクロスオーバーの外観を見ると、大径ホイールとタイヤが装着され、それを縁取るフェンダーには、ブラックの樹脂パーツも備わっています。SUVのデザイン手法ですが、新型クラウンクロスオーバーのボディタイプはセダンです。後席と荷物を収めるトランクスペースは分離され、小さなトランクフードを使って出し入れします。
新型クラウンクロスオーバーの荷室
荷室の使い勝手をハリアーと比べると、新型クラウンクロスオーバーは見劣りします。荷室容量は450Lと十分ですが、荷室開口部の広さが大幅に減るからです。またハリアーなら、後席の背もたれを前側に倒して1600mm以上の荷室長を確保できますが、新型クラウンクロスオーバーにこの機能はありません。
新型クラウンクロスオーバーのインテリア
新型クラウンクロスオーバーの車内に入ると、インパネは渋い仕上がりです。造り込みはていねいですが、派手な印象は抑えました。従来のクラウンとは、デザインや手触りが大幅に異なります。メーターの視認性や操作性は良好です。
新型クラウンクロスオーバーの居住性、後席
居住性については、新型クラウンクロスオーバーの場合、後席に個性があります。燃料タンクを床下に搭載して、バイポーラ型ニッケル水素電池を後席の下に設置したため、トランク容量は十分に確保できましたが、後席の床が少し高いです。
全高を1540mmに抑えたこともあり、後席は床と座面の間隔が不足しています。座ると膝が持ち上がり、腰は落ち込みます。小柄な乗員は、大腿部を押された感覚になりやすいです。
新型クラウンクロスオーバーの走行性能、静粛性
走行性能についても触れていきましょう。新型クラウンクロスオーバーの試乗車は、先に述べた通り、直列4気筒2.5Lのハイブリッドを搭載しています。駆動方式は全車が4WDで、後輪を前輪とは別のモーターで駆動するE-Fourです。
ハリアーハイブリッドも、基本的には新型クラウンクロスオーバーGと同様のシステムを使います。動力性能の性格も似ていますが、実用回転域の駆動力と静粛性は、新型クラウンクロスオーバーが少し優れています。
新型クラウンクロスオーバーのボディサイズ
日常的な使い勝手では、新型クラウンクロスオーバーの場合、駐車場などでボディの大きさを意識させます。全長は4930mm、全幅は1840mm、全高は1540mmになるからです。それでも後輪操舵のDRS(ダイナミックリアステアリング)を装着したため、低速域では後輪が前輪とは逆方向に操舵され、最小回転半径は5.4mに収まります。
ハリアーのボディサイズは、全長は4740mmに収まりますが、全幅は1855mmとワイドです。全高は1660mmなので、新型クラウンクロスオーバーと違って立体駐車場の利用性は悪いです。視線の位置が高いため、左側面の死角が大きく、購入時には縦列駐車などを確認したいです。ハリアーには後輪操舵の機能がなく、最小回転半径も5.5〜5.7mと大回りです。
新型クラウンクロスオーバーの走行安定性、タイヤ
新型クラウンクロスオーバーの走行安定性は、低重心のボディで後輪操舵も併用することから、比較的良く曲がります。前後輪を別々のモーターで駆動して、後輪操舵も備わるため、4輪の制御を綿密に行っています。
ただしこの制御のためか、カーブを曲がっている時は、進路が少し曖昧になる印象も受けました。直進時とカーブを曲がる時では、安定性の印象が異なります。
新型クラウンクロスオーバーの安全装備、運転支援機能、価格
安全装備や運転支援機能は、ハリアーも2022年9月に実施されたマイナーチェンジで進化させました。それでも新型クラウンクロスオーバーは、高速道路の渋滞時にステアリングホイールから手を離しても運転支援機能が続けられたり、車外からスマートフォンで車庫入れの操作が行える機能などを採用しています。
試乗した新型クラウンクロスオーバーGアドバンストの価格は510万円です。ハリアーハイブリッドZ・E-Four(4WD)は484万8000円ですから、新型クラウンクロスオーバーは約25万円高いですが、後輪操舵やパノラミックビューモニターなどを標準装着しています。従って装備と価格のバランスは同程度です。
【筆者:渡辺 陽一郎/カメラマン:堤 晋一・島村 栄二・トヨタ自動車】
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