ホンダ 新型シビックタイプRに「実効空力」のノウハウを取り入れたリアスポ装着で走りが更に進化|新型シビックタイプR試乗【2022年】
MōTA / 2022年11月7日 10時0分
ホンダアクセスが提唱する「実効空力」。この考えを取り入れたエアロパーツを装着することでより安定感が生まれ、誰がどんな道で乗っても安心して気持ちよくクルマを操れるようになるといいます。果たして「実効空力」とは一体!? 今回は、そんな実効空力のノウハウを取り入れたテールゲートスポイラーを装着した新型シビックタイプRを、モータージャーナリストの岡本幸一郎さんが試乗した解説をお届けします。
ホンダ 新型シビックタイプRに「実効空力」を取り入れたテールゲートスポイラーが登場
ホンダ車の純正用品を手がけるホンダアクセスが、かねてから提唱しているのが、前後リフトバランスを最適化することで、タイヤの接地荷重が最適化され、外乱(強風がもたらす空気力や走行路面の不規則さ等の外部から受ける干渉力)に強くなり、ヨー(ヨーイング:車体の上下を軸とした回転運動)の発生を最小化できるという「実効空力」です。この考え方を取り入れたエアロパーツを装着することで、路面に吸いつくような安定感が生まれ、誰がどんな道で乗っても安心して気持ちよく操れるようになるといいます。今回は、登場してまもないホンダ 新型シビックタイプRにそんな実効空力の考えを取り入れたテールゲートスポイラーを装着することで走りがどう変わるのかを、群馬サイクルスポーツセンターで試すことができました。
まずは「実効空力」の効果の程をN-BOXで体感
まず新型シビックタイプRの前に、実効空力の効果のほどをよりわかりやすく体感できるようにした、ホンダアクセス開発統括の福田正剛氏お手製の鋸歯形状の実効空力デバイスを装着したN-BOXで簡単な試乗を行いました。マグネット製で簡単に着脱できるもので、デバイスの有無で走りがどう変わるか、ジャーナリストだけでなく編集者やカメラマンも乗り比べてわかるかどうかを確かめたところ、MOTA組は全員が無事に違いを体感できました。 筆者も効くだろうなとは思っていましたが、わずか20km/h程度の低速でもステアリングを切ったときの反応が違うことには驚きました。応答遅れがなくなり、小さな舵角で曲がって、ロールも減り、オツリ(カウンターステア[旋回方向と逆の方向にハンドルを切る操作]の戻し遅れが原因で、ドライバーの意図しない方向に向かっていくこと)もなく収まりがよくて、運転しやすくなったように感じられました。 「空力」というと、もっと車速が高い領域の話というイメージがあり、そもそも効果そのものがイメージしにくいところですが、たったこれだけでも、しっかりとノウハウに基づいて作られたものなので、ちゃんと効果を発揮するわけです。公道でも交差点ひとつ曲がればわかることでしょう。ホンダアクセスが手がける新型シビックタイプR用アフターパーツ
今回のメインイベントとなる新型シビックタイプRの試乗の前に、ホンダアクセスが新型シビックタイプR用にラインアップしているパーツを紹介します。 外観では、今回の主役であるドライカーボン製のテールゲートスポイラーを用意しています。こちらは新型シビックタイプRにあわせてレッドのポリエステル繊維が編み込まれており、形状もノーマルとはかなり異なります。他にはタイプR伝統の赤でコーディネートしたフレームレッドのドアミラーカバーも用意されています。 内装も新型シビックタイプRならではのアイテムがズラリ。センターコンソールとドアパネルにはテールゲートスポイラーと同様にレッドポリエステルを編み込んだドライカーボンのインテリアパネルを用意。 さらに乗り込むたびに新型シビックタイプRのロゴが光るサイドステップガーニッシュや、ドアを開けるとタイプRロゴが浮かび上がるパターンプロジェクター、ブラックアルマイト製でレッドの本革巻きとなるシフトノブなどが用意されているほか、既出の記事でも紹介したプレミアムタイプのフロアカーペットなど、所有する喜びを高めてくれそうなアイテムを揃えています。まずはノーマルの新型シビックタイプRを試乗
いよいよ新型シビックタイプ Rの試乗です。まずノーマルの状態(実効空力エアロパーツ非装着の状態)で走行感覚を確認。その後、その場で同じクルマのテールゲートスポイラーをホンダアクセスのものに交換して、同じコースを同じように走って違いを体感しました。試乗車は、エンジン補機系や足まわりはノーマルのままなので、走りに関する変化は純粋にテールゲートスポイラーのみの効果となります。走行モードは4種類あり、サーキット向けのプラスRモードもありますが、今回はより効果がわかりやすいという推奨のコンフォートモードを主体に、たまにスポーツモードにして走行してみました。
筆者は新型シビックタイプRをドライブするのは初めて。群馬サイクルスポーツセンターはエスケープゾーンがなくタイトコーナーが連なるスリリングなコースなのですが、ノーマルの実力もかなりのもので、ガンガン攻めて走れて楽しむことができました。これ以上、どうなるのかと思ったぐらいです。
圧倒的な軽量化やシェブロン形状が施されたホンダアクセス製テールゲートスポイラー
最初にノーマル状態の新型シビックタイプRでコースを2周試乗してピットインし、テールゲートスポイラーを交換。試しに純正とホンダアクセス製の両テールゲートスポイラーを手で持ってみると重量がかなり違い、ホンダアクセス製のほうが圧倒的に軽いことが印象的でした。並べてみると形状の違いも明らか。メインエレメント部の断面形状はNACA4412(NACA=アメリカ航空諮問委員会/空気抵抗とダウンフォースのバランスを重視する航空機の主翼形状)がベースで、ガーニーフラップ形状とされた中央翼後端が直進性とダウンフォースに寄与するとともに、両サイドを抑えることで旋回性との両立を図っています。
また、翼端板(サイドプレート)が設けられているのも大きな特徴ですが、これをAピラーの角度とピッタリ合わせることでサイドの乱流を遠ざけ、直進安定性と走りの一体感を向上することができています。裏側は鋸歯形状(シェブロン)とされています。これが直進時にダウンフォースを発生しつつ旋回時には追従する空力効果をもたらし、誰が乗っても扱いやすいなめらかな空力特性を実現するといいます。
なお、テールゲートの交換は、今回はテストのため特別にその場で交換していますが、安全上の観点から、一般のお客様は必ずホンダの販売店で装着するようお願いします。
「実効空力」を取り入れたテールゲートスポイラーでは、より安心感があり気持ちよく操れ、さらに楽しく運転ができる
交換作業が完了し、再びコースイン。その効果は、最初のコーナーを曲がったときからすでに、思ったよりもはっきりと体感できて驚きました。ノーマルだと微妙にステアリングを切ってノーズが向きを変えるまでにわずかにタイムラグが見受けられ、リアがそれに追従していたところ、交換後はタイムラグがなくなり、リアもすぐについてきて、より一体となって曲がるようになっています。コーナリング中も、地に足がついて4輪がしっかり路面を捉える感覚がノーマルよりも高まっていて、コントロールしやすく、より不安を感じることなく攻めていけました。群馬サイクルスポーツセンターの路面は荒れている箇所が多いのでなおのこと効果がわかりやすいです。心なしか舵角も小さくなっていて、コーナリング中にステアリングを切り増したときの反応も異なります。まさしくオン・ザ・レール。コーナリングの限界速度もいくぶん高まっているようです。
立ち上がりではノーマルでもFFとは思えないほど十分だったトラクションがさらに高まり、横に逃げることなく舵を切った方向にグイグイと進んでいく感覚が増しています。おかげでアクセルを踏めるタイミングも少し早まっています。繰り返しますが、ノーマルだって本当によくできています。その上で、実効空力デバイスを駆使することで、より安心感があり、意のままに気持ちよく操ることができて、さらに楽しく運転できるようになるのです。おそらく高速道路でロングツーリングするにも、このフィーリングの延長上で、より快適に疲れ知らずでドライブできることでしょう。
あらためて空気の力の大きさを思い知るとともに、味方にするとこんなにも走りが変わるほど有益なものであることを実感できました。そしてホンダアクセスは、それを巧くやってのけるノウハウを持っているということが再確認できました。[筆者:岡本 幸一郎 撮影:小林 岳夫]
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