フォルクスワーゲンの電気自動車「新型ID.4」は500万円を切った! 扱いやすいコンパクトSUVでありながら大容量バッテリーで航続距離も最大561km【2022年】
MōTA / 2022年11月22日 12時0分
2022年11月22日(火)、フォルクスワーゲン(VW)の電気自動車(BEV)シリーズ「ID.ファミリー」のコンパクトSUVである新型ID.4の日本導入が発表されました。 コンパクトSUVは特に日本で人気のカテゴリーであり、新型ID.4は最先端の機能やデザインを採用しながら500万円を切るお手頃な価格で販売されます。 今回はそんな注目のBEV、新型ID.4を国際派モータージャーナリストの竹花 寿実さんが解説します。
新型ID.4のボディサイズ
ドイツでは2020年9月に発表され、翌2021年春にデリバリー開始となっていたフォルクスワーゲン(VW)新型ID.4は、約1年半遅れで日本上陸を果たしました。新型ID.4は、ヨーロッパ市場では2019年に登場したコンパクトハッチバックのID.3に次ぐ第二弾ですが、日本ではID.ファミリーの第一弾となります。
新型ID.4は、1月に発表されたアウディ Q4と同じく、VWグループのBEV専用プラットフォーム「MEB(モジュラー・エレクトロニック・アーキテクチャー)」を採用しています。そのため新型ID.4のボディサイズは全長4585mm、全幅1850mm、全高1640mmと、同じVWから販売されているSUVのティグアンより65mm長く、10mm幅広く、35mm背が低いサイズです。2770mmのホイールベースはティグアンより95mmも長く、全長に対してホイールベースが長い、ショートオーバハングのプロポーションを持っていることが分かります。新型ID.4の長い前後アクスル(車軸)の間には、リチウムイオンバッテリーが敷き詰められています。新型ID.4のグレード、バッテリー、航続距離、パワー
新型ID.4は今回発売された2タイプの導入記念モデルであるプロ・ローンチ・エディションとライト・ローンチ・エディションが用意されます。それぞれ77.0kWhと52.0kWhのバッテリー容量を確保し、WLTCモードで561kmと388kmの航続距離を実現しました。
ヨーロッパ仕様には4WDモデルも存在しますが、日本仕様の2タイプは、どちらもリアに電気モーターを搭載した後輪駆動モデルとなります。最高出力はプログレードが204馬力、ライトグレードは170馬力で、最大トルクはどちらも310Nmです。
新型ID.4のエクステリア(外観)、ボディカラー、タイヤ
新型ID.4のエクステリア(外観)は、VWが「風によって形作られたデザイン」というだけあり、流麗な中に力強さを感じさせる造形を実現しています。Cd値(空気抵抗係数)は0.28と低く、空気抵抗を感じにくいデザインです。
ヘッドランプは全車LEDで、プロはLEDマトリックスヘッドライト“IQ.ライト”を装備しています。フロントカメラで対向車や先行車を検知してライトの光が当たることを避けつつ、片側22個のLEDを個別で自在に点灯消灯の制御をし、最適な配光を可能にした革新的なヘッドライトシステムです。ハイビーム、ロービームの切り替えを自動で行うため、夜間でも非常に明るく、安全に走行できます。 リアコンビランプはLEDエレメントを9枚並べた個性的なデザインが特徴的です。プログレードには流れるように点灯するダイナミックターンインジケーターが備わっています。 新型ID.4のボディカラーは、今回試乗したブルーダスクメタリックのほか、ムーンストーングレーと、ストーンウォッシュドブルーメタリック、グレイシアホワイトメタリックの計4色を設定。 プログレードは全車ブラックルーフとなりますが、ライトグレードのルーフはボディ同色です。ホイールサイズはプロが20インチ、ライトは18インチが標準で、タイヤサイズはプログレードがフロント235/50R20、リア255/45R20と前後で異なります。ライトグレードは前後とも235/60R18となっています。新型ID.4のインテリア、シート、ラゲッジ(荷室)
新型ID.4のインテリアは、シンプルですが、クリーンで上質感を感じさせるデザインです。インパネ周りには物理スイッチはほとんどなく、エアコン操作パネルもゴルフなどでおなじみのタッチセンサー式となっています。
さらに特徴的なのはメーターディスプレイで、ステアリングコラム上に固定されているため、常にステアリングと連動した位置になります。そのため、ステアリングの位置を調整したことでメーターが隠れてしまうといったことがなくなります。シフトセレクターはセンターコンソール上ではなく、このメーターパネルの右側にダイヤル式のものを装備。「P」レンジのみボタンとなっています。 ダッシュボード前方の、フロントウインドーのすぐ下には、「ID.ライト」と呼ばれるLEDストライプが備わっています。これは、バッテリーの充電状態や、接続されたスマホへの着信などを、光のサインで乗員に知らせるコミュニケーションツール。ID.4の先進性を感じさせる装備のひとつと言えるでしょう。スタート/ストップボタンは、ステアリングコラムの右側に備わっていますが、キーを持って運転席に座ると、自動的にスタンバイ状態となり、Pボタンを押してクルマから降りるとオフとなるので、ほとんど触る必要はありません。これもBEVだからこそ可能なシステムだといえます。
新型ID.4のシートはマイクロフリース素材とレザレット(合皮)のコンビで、クッションは特に厚くはないですが、適度なホールド性を感じさせます。プログレードは前席パワーシートとパワーランバーサポート、運転席メモリー機能が標準装備です。 リアシートも比較的カチッとした座り心地ですが、前後の余裕がたっぷりあるので、ゆったりくつろぐことができます。前方視界は良好で、大開口のパノラマガラスルーフ(プロに標準)と相まって、開放感のある室内空間です。 新型ID.4のラゲッジは、通常時で543L、40:60の分割可倒式リアシートを倒せば、最大で1575Lに拡大可能です。ラゲッジフロア下には小物を収納できるスペースがあるので、充電ケーブルなどを入れておくことができます。開口部形状も良いので、実用性は十二分に高いと言えるでしょう。新型ID.4の試乗インプレッション
さて実際に新型ID.4に試乗してみると、走りはとても軽快で、2140kgもある車両重量を感じさせない力強い加速と、低重心な後輪駆動モデルらしい雑味のないハンドリングを楽しむことができました。
プログレードのバッテリーは重量が493kgと、車両重量の約4割を占めますが、それがフロア下にあることで、ロール(車体が左右に傾く挙動)やピッチング(車体が前後に傾く挙動)の少ないフラットな乗り心地とコーナリング中の安定感に寄与しています。風切り音やロードノイズも最小限で、静粛性も申し分ありません。また、素晴らしく小回りが効きます。新型ID.4の最小回転半径は5.4mと、先ほど比較したティグアンと同じですが、ウォールtoウォール(左右に壁があるとした際、その間でUターンが可能な壁と壁の間の距離)の“有効回転直径”はわずか10.2mと、同じVWのコンパクトカーであるポロ(10.6m)より小さいです。試乗してみれば誰もが駐車場やUターンをする場面などで、取り回し性の良さに感心することでしょう。このクラスのBEVとしては十分に及第点以上の仕上がりと言って良いと思います。
興味深いのは、減速時に回生ブレーキが少ししか作動しないことです。BEVは通常、減速時に運動エネルギーを回生することで、航続距離を伸ばす制御を行いますが、新型ID.4ではそれよりもコースティングで距離を伸ばす考え方を採用しています。これは、ストップ&ゴーが多い日本とは異なり、平均速度が高く、ストップ&ゴーが少ないドイツをはじめとしたヨーロッパ各国の交通環境から生まれた考え方です。こんなところにお国柄が感じられるのは、輸入BEVならではといえます。しかし、この制御のために運転しにくいということはなく、むしろICE車(Internal Combustion Engine:ガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車のこと)から乗り換えても違和感は少ないでしょう。
ただ、なかなか良くできたBEVという印象を受けつつも、カーナビがオプションにも未設定である点(スマホ連携には対応)や、OTA(Over The Air:無線通信でデータを送受信すること)によるソフトウェアアップデートに非対応である点、VWが何年も前から取り組んでいるコネクティビティを活用した次世代モビリティサービスが特に用意されていない点などは、少々残念な部分です。今後これらが用意される可能性が無いわけではないですが、CO2削減と同時にデジタル化を強力に推進するVWだけに、もう少し頑張ってほしかった、というのが正直な感想です。
とはいえ、とりあえずカーナビはスマホで十分、という人には、新型ID.4はかなり魅力的な一台であることは間違いありません。新型ID.4の価格
今回試乗したプログレードは636万5000円、ライトグレードなら499万9000円と、500万円を切る価格設定です。現在のトレンドど真ん中のコンパクトSUVのBEVが、いよいよ現実的な選択肢になってきたと言えるでしょう。
グレード | バッテリー容量 | 最大出力/最大トルク | 航続距離 | 価格 |
プロ・ローンチ・エディション | 77.0kWh | 204馬力/310Nm | 561km | 636万5000円 |
ライト・ローンチ・エディション | 52.0kWh | 170馬力/310Nm | 388km | 499万9000円 |
【筆者:竹花 寿実 カメラマン:堤 晋一/フォルクスワーゲングループジャパン】
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