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意外? これが最新Sクラスの本当の燃費だ!【1300km長距離テスト:メルセデス・ベンツS560】

MotorFan / 2018年7月25日 18時30分

意外? これが最新Sクラスの本当の燃費だ!【1300km長距離テスト:メルセデス・ベンツS560】

プレミアムサルーンの頂点に君臨するメルセデス・ベンツSクラス。 オーナーが実際にどこまで燃費を気にしているかはともかく、 ちょっと興味があるというクルマ好きは少なくないはずだ。 そんなわけで東京を出発し、京都府の日本海側───丹後半島を目指した。 わざとらしい省燃費走行は一切なし!  REPORT◎小泉建治(KOIZUMI Kenji) PHOTO◎平野 陽(HIRANO Akio)

テストしたのは最高出力469psと最大トルク700Nmという凄まじいアウトプットを誇る4.0LのV8を搭載するS560で、さらに4マティック&ロングボディというゴージャスな仕様。でもAMGとかマイバッハとか、上には上がいる……。
目指したのは京都府の日本海側の丹後半島で、美山の北集落(写真)、天橋立、そして伊根の舟屋を見て回るプランである。日本の原風景を巡る、なかなか風情のある旅だ。高速道路が全行程の約8割を占める。

カタログ燃費は9.0km/Lだが……

 好き嫌いは別にしても、メルセデス・ベンツSクラスが高級車の代名詞であることに今さら異論をはさむ人はいないだろう。世にはロールスロイスとかベントレーといった「超」ハイエンドサルーンもあるけれど、フツーの人───たとえば近所のおばあちゃんや女子高生も含めれば、「ベンツ」の知名度に勝るものはない。

 で、そんな高級車の横綱の燃費を計ってみようと思ったのである。実際にSクラスのオーナーになれるような富裕層のみなさんが燃費など気にしているのかどうかはよくわからないが、給油するのが面倒くさいからなるべく長い距離を走ってほしい、くらいには思っているだろう。一方、我々のように縁のない人間にとっては興味本位ながらおおいに知りたいところであったりする。少なくとも筆者はそうだ。

 今回のテストに供されたのは、S560の4マティック・ロングである。最も燃費の良さそうなV6を搭載するS400ではなく、ラインナップの中心となるV8を搭載し、さらには駆動方式はAWDでボディはロング仕様という、けっして燃費に有利ではないグレードだ。カタログに載っているJC08モード燃費は9.0km/L。さてどこまでカタログ燃費が本当なのか、じっくり検証してやろうじゃないか。

 東京を出発し、東名高速と新東名を経てひたすら西を目指す。高速道路でのSクラスは、今さら言うのもなんだがとにかく乗り心地がいい。数日前にパッケージオプションのAMGライン装着車、すなわち19インチ仕様に試乗しており、その圧倒的に高いボディ剛性とタップリと採られたサスペンションストロークがもたらすフラットなライドフィールに感心させられたのだが、今回の18インチ仕様にはそこに加えてフランス車的なまろやかさまで加わっている! S560はエアサスペンションが標準装備されるのだが、タイヤと車体の間に空気の層があるというより、そもそもタイヤが地面から浮いていて、不快な突き上げをシャットアウトしているような感覚である。そして18インチ仕様のほうがその傾向が強い。かといって接地感が希薄だとか、フワフワした乗り心地というわけではなく、ルーフの上から巨人の手かなんかでググッと下に押しつけられ、タイヤと路面の間の空気の層がギュッと圧縮されているようなイメージだ。だから路面の状況は雑味が濾過された状態でドライバーに伝わってくる。Sクラスだからといって崇め奉りたくはないが、こういう乗り味を見せつけられると、さすがメルセデスとひれ伏しそうになってしまう……。

 そんなこんなでクルマに慣れてきたところで、アクティブディスタンスアシスト・ディストロニックを起動させる。メルセデス・ベンツのディストロニックの制御に非の打ちどころがないのは今に始まったことではないが、ディストロニックと連動して起動するアクティブステアリングアシストの秀逸な制御には誰もが舌を巻くだろう。

 これは車線、ガードレール、前走車などを車両が認識し、カーブに合わせてステアリング操作をアシストしてくれるもので、ウインカーを出せば車線変更もアシストするアクティブレーンチェンジアシストを付随する。そのアシストっぷりが実に滑らかで、他ブランドの同様のシステムのほとんどが白線でバウンドするピンボールのようにカクッカクッとアシストするところを、Sクラスのそれは白線に沿って綺麗な曲線を描くようにアシストをしてくれる。手はステアリングに軽く添えていればいい。

 個人的に、このアクティブステアリングアシストが最も効果を発揮すると感じられた場面は、中央分離帯がなく、センターラインにポールが立てられているだけの二車線区間(片側一車線)である。大型トラックとすれ違うときや暗いトンネルの中など、圧迫感や不安感が最小限に抑えられ、緊張がほぐれることで疲労の抑制にもつながる。ロングドライブにはとても有用なシステムだ。

こういった中央車線がポールで区切られただけの二車線区間(片側一車線)では、アクティブステアリングアシストがとっても有用だ。大型トラックとすれ違う場面などにおける不安や緊張が大きく軽減され、結果的に長距離ドライブの疲れを抑制してくれる。

高速道路ではサラッとJC08モード越え

 豊田東ジャンクションからは伊勢湾岸道に入り、新名神、名神を経て京都縦貫道に入る。そして最初のチェックポイントである園部インターチェンジで降りて、燃費を記録する。ここまで高速道路を488km走り、平均速度は107km/hで、平均燃費は12.6km/Lと出た。いきなりのJC08モード越えである。まぁ、高速道路だし、とくに欧州車はカタログ燃費と実燃費の乖離が少ないと言われているから、とくに騒ぐ必要もないのかも知れない。だが全長が5mを超え、全幅も1.9mに達し、車重が2.2tという超ヘビー級サルーンであることを考えれば、やはりリッター当たり12kmを越えるというのは優秀と言うほかない。

 ちなみに乗員の体重は筆者が75kg、カメラマンが73kgで、カメラ機材と荷物を合わせた重さが約40kgである。エアコンは全行程を通じて24℃に設定していた。

 ここからは一般道で250kmほど走ることになる。茅葺き屋根の古民家で知られる美山の北集落まで、そしてそこから日本海に面した宮津まではワインディングロードが続き、Sクラスの予想外の俊敏性を堪能することができた。四つのタイヤの位置が掴みやすく、センターラインのない狭隘路でのすれ違いにもストレスはなく、スポーツカーのような身のこなしについついペースを上げてしまう。19インチよりも限界は低いのかも知れないが、むしろ18インチのほうがタイヤのたわみからグリップ「感」を得やすく、少なくとも公道で許される速度域においてはこちらのほうが気分良く運転を楽しめると個人的には感じた。

東名、新東名、伊勢湾岸道、新名神、名神を経て、京都縦貫道の園部インターチェンジからは一般道へ。美山から宿泊地である宮津までは高速道路を使わず、ワインディングロードを堪能した。

福井県との府県境近くにある美山の北集落。茅葺き屋根の古民家が建ち並び、まさに日本の原風景が色濃く残され、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。白川郷や五箇山と違ってアクセスはそれほど良好ではなく、それだけに素朴な雰囲気を残していた……のだが、今回ひさびさに訪れてビックリ! 京都縦貫道が開通したおかげか観光客が一気に増え、駐まっていた観光バスは実に8台! 写真は、人が捌けた瞬間を捉えた貴重なショット。

一般道でも10km/L近い燃費をマーク

 天橋立の近くにある宮津に投宿し、翌日は国道178号線を北上して舟屋で有名な伊根に向かう。舟屋とは海に面した住居の一階に舟の格納庫を備えた伝統的な民家で、言わば舟のビルトインガレージである。昭和の庶民的な風情を色濃く残し、こちらも美山と同様に国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。

 ここからは再び国道178号線を南下し、綾部宮津道路から東京を目指して帰路につく。与謝天橋立インターチェンジで二度目の燃費チェックを行う。前日の園部インターチェンジから248kmを走り、平均速度は37km/hで、燃費はなんと9.8km/Lを記録した! これほどのハイエンドサルーンともなれば、カタログ燃費がどうであれ、「結局は10km/Lになんて届く気配すらない」というのが通説であり、筆者の経験からも言えることである。今回も正確には10km/Lには僅かに届かなかったものの、正直に言ってここまで伸びるとは思わなかった。

 今回のテストは、現在発売中の「新型メルセデス・ベンツSクラス徹底解剖(三栄書房刊)」の取材を兼ねていたのだが、誌面用の撮影というものは、燃費にとても厳しい。何度か置き場所の微調整を繰り返すため、動かしては停め、動かしては停めの連続となるし、走行シーンの撮影時には低めのギヤに固定することも多い。確かに都市部の大渋滞のようなシーンはなかったが、みるみる燃費計の数値が悪化していくサマは渋滞時以上の激しさとも言える。

日本三景のひとつに数えられる天橋立。写真は南側の文珠山の山頂からの眺めで、股の下から逆さに覗くと龍が天に昇っているように見えることから「飛龍観」と呼ばれている。ここまではケーブルカーかリフトで登る。

伊根の舟屋群の壮観な眺め。「男はつらいよ」のロケ地となったことでも有名だ。

総合燃費は12.0km/L! カタログ達成率133%!

 与謝天橋立インターチェンジからは綾部宮津道路、京都縦貫道を経て、そこから事故渋滞を避けるために京滋バイパスを経由して、新名神からは往路の完全な折り返しで東京を目指した。

 全行程のうち、高速道路が占める割合は8割ほどで、その高速道路区間の5割ほどはディストロニックを使用し、残りの5割ほどの区間と一般道ではとくに燃費を意識した運転はせず、流れをリードするペースで走り続けた。そしてワインディングロードで前走車両がいない場面では、比較的ハイペースでSクラスのアジリティを堪能もした。そして前述の通り、撮影時には燃費に厳しい走り方、使い方を繰り返した。ツーリングとはいえ、必ずしも燃費に優しい状況ではなかったわけだ。

 ではいよいよ結果である。まず、与謝天橋立インターチェンジから東京インターチェンジまでの559kmの高速区間では、平均速度が92km/hで、12.8km/Lというここまでで最高の燃費を叩き出した。そして総合結果は、走行距離1295kmで平均速度74km/h、燃費は12.0km/Lとなった。JC08モード燃費は9.0km/Lだから、達成率は実に133%(!)で、大人2名乗車&荷物満載ということを考えれば称賛に値する結果と言えるだろう。
 
 参考までに100km/h巡航時のエンジン回転数は8速で1400rpmで、トップギヤの9速にはなかなかシフトアップされないためにマニュアル操作したところ1200rpmとなった。また、S560の燃料タンクは80Lだから、単純計算で航続距離は960km、燃費に優しい運転をすれば1000km以上はカタい。

「結局は10km/Lになんて届く気配すらない」はずのハイエンドサルーンが10km/Lを大きく上回ったのも驚きだが、これだけ贅沢三昧しながら1000kmも給油しなくてイイなんて、いったいなにがどうなっているのやら。

「Sクラスなんてガソリン垂れ流しの贅沢品」と糾弾したかった人、残念! 「欲しいけれど、やっぱり環境に負担が……」と購入に後ろめたさを抱いていた人、おめでとう!

こうした昔ながらの古い街並みというものは、たいてい道幅が狭い。当然ながらフルサイズサルーンのSクラスでは縦横無尽に駆けずり回るわけにはいかないが、視界に優れ、各種センサーがフォローしてくれるため、意外なほど不安は覚えない。もちろん車体そのものの大きさには気を遣う必要がある。




Specifications
メルセデス・ベンツ S560 4マティック・ロング
全長×全幅×全高:5255×1900×1495mm 車両重量:2220kg エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ 排気量:3982cc 最高出力:345kW(469ps)/5250-5500rpm 最大トルク:700Nm(71.4kgm)/2000-4000rpm トランスミッション:9速AT 駆動方式:F・AWD 価格:1681万円

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