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減速比を連続的に変化させるCVTは、どんな仕組みで変速するの?[メカニズム解説]

MotorFan / 2018年2月25日 14時20分

減速比を連続的に変化させるCVTは、どんな仕組みで変速するの?[メカニズム解説]

日本の小型車の多くが採用するCVT。Continuously Variable Transmissionの名前のとおり、「連続」「可変」のトランスミッションだ。その仕組みを解説しよう。 TEXT◎高橋一平(Ippey TAKAHASHI)

溝の幅を可変式としているプーリーと、そこに巻きつくベルト(チェーン)の位置が理解のポイント

CVTではベルトによって連結されるふたつのプーリー(このセットをバリエーターと呼ぶ)を用いて変速が行われる。もちろん、単なるベルトで連結されたプーリーセットだけでは、減速比は固定でしかない。プーリーを用いたベルトドライブの場合、減速比を決めるのはふたつのプーリー径の比率だ。CVTではこのプーリー径の部分に可変要素を持たせ、連続的にプーリー径を変化させることで変速を行う。

ではどうやってプーリーの直径の直径に可変要素を持たせるのか。実はこの部分が面白いところで、結論から言ってしまうと、直径は変えないし変えることはできない。変わるのはベルトが嵌るプーリーの溝、その幅だ。プーリーと両端で接触するベルトは、溝の幅を広げると溝の底深くに落ち込み、幅を狭めるとプーリーの外周側に掛かる。つまりベルトがプーリーに掛かる位置がプーリーの溝幅に依存するかたちで変わり、プーリーに対し、ベルトが働きかける部分の径、要は事実上の有効径が変化することになる。ちなみに、このベルトが掛かる部分が形成する直径を「巻きつき径」と呼ぶ。

低速側(LOW GEARED)

プーリーセットを上から断面として捉えたもの。左のプーリーがエンジン駆動力の入力されるプライマリー側で、その上にとトルクコンバーターとエンジンが繋がる。プライマリー側プーリーでベルトが巻きつき径が小さく、右のセカンダリー側が大きい最大減速状態。

HIGH GEARED(高速側)

プライマリー側の幅が狭まってベルト巻きつき径が大きくなり、セカンダリー側で幅が広がり巻きつき径が小さくなった、出力に向けて回転増速される状態。プライマリー側は上、セカンダリー側では下のプーリーが可動。それぞれ反対側のプーリーは固定式となっている。

プーリーの幅を変える原理は簡単。シンバルを背中合わせで組み合わせたようなかたちとなる左右分割式のプーリーを軸状でスライドさせるのだ。動かすのはプーリーの片側だけで、可動側をスライドプーリー、動くことのない固定側をフィックスドプーリーと呼び、ふたつのプーリーは両方ともこのセット(スライドプーリーとフィックスドプーリー)を持つ。スライド動作は油圧によって行われる仕組みとなっており、アクチュエーターとしてスライドプーリー裏に油圧室が設けられている。

変速のカギとなるプーリーの幅は油圧駆動によって制御。右図はその主要部分を簡略化しながら抽出したもの。オイルポンプで作り出される油圧は、レシオコントロールバルブ(変速制御弁)を介してプーリー幅可変用の油圧室に導かれている。

この油圧をコントロールするのは、上に示すシステム。これはエンジンからのトルクが入力されるプライマリー側のプーリー(そのスライドプーリー)を駆動する部分を抽出したもので、実際にはもっと複雑なものとなっているのだが、プーリーの溝幅制御に限って言えばこのようなかたちとなっている。見ればわかるように、要はトランスミッションECUからの制御信号によって動く、ステッピングモーターのトルクを増幅するための油圧サーボ機構だ。

スライドプーリーの駆動と、エンジントルクが掛かった際の保持、さらには金属製のベルトを、やはり金属製のプーリーで“掴んで” 滑らないようにするためのトルク(これをクランプトルクと呼ぶ)を確保するためには、それだけ大きな力が必要なのだ。この部分(スライドプーリーの駆動)において、未だ電動化が実現していないという事実からも、要求されるエネルギーの大きさが窺える。近年では油圧をきめ細かく制御することでオイルポンプによる駆動損失の抑制が進むが、それでもなお、大油圧を生み出すためのエネルギーマネージメントはCVTの改善テーマとなっている。

リバースギヤはどうなっているのか?

プーリーとベルトによる変速機構では無段階に変速はできても、リバースギヤ、つまり逆転させることができない。そこでCVTでは同軸上で逆回転が作り出せる遊星ギヤを用いる。ジヤトコのCVT7ではこれをラビニヨ遊星とすることで、副変速機としての機能を追加している。

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