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ドアもウインドウもなし! スパルタン過ぎるLotus 3-Eleven で公道を徘徊する【ロータス 3-イレブン試乗記】

MotorFan / 2018年3月3日 19時35分

ドアもウインドウもなし! スパルタン過ぎるLotus 3-Eleven で公道を徘徊する【ロータス 3-イレブン試乗記】

フロントウインドウもなければドアもない。 その佇まいはもはやオープンカーではなく、 フォーミュラマシンかプロトタイプレーシングカーである。 1tを切るボディに400psを超えるV6ユニットをブチ込み、 組み合わされるトランスミッションは6速MT。 これで公道を走れるなんて、なにかの冗談としか思えない! TEXT&PHOTO●小泉建治(KOIZUMI Kenji)

パワーウエイトレシオは実に2.2kg/ps!

 世界で最も血中レーシングカー濃度の高いスポーツカーブランドとして名を馳せるロータスだが、そのラインナップのなかでも極めつけの存在と言えるのが3-Elevenである。

 まぁとにかく写真をご覧いただきたい。フロントウインドウもなければドアもなく、とにかく低い全高と最低地上高、巨大なフロントスポイラーやリヤウイングなど、何から何までまるっきりレーシングマシンで、ナンバープレートが付いているサマには「違和感」のひとことしか思い浮かばない。

 当然ながら主戦場はサーキットで、クローズドコース専用の「RACE」というグレードもあるのだが、販売台数では圧倒的に公道仕様の「ROAD」が上回るらしい。やはりサーキットに自走で通える利点は大きい、ということだろう。

 ロータスの魅力として真っ先に挙げられるのは軽量ボディがもたらす快活な走りで、3-Elevenの車両重量は「ROAD」で925kg、「RACE」で890kgと、いずれも現代においては比類なき軽さを誇る。

 そして搭載されるエンジンは3.5LのV型6気筒DOHC+スーパーチャージャーで、「ROAD」で416ps、「RACE」で466psものアウトプットを発生する。組み合わされるトランスミッションは前者が6速MT、後者がX-TRAC製6速シーケンシャルだ。

 このスペックを見ただけで、このクルマのポテンシャルを味わうにはサーキット以外にあり得ないことは小学生でもわかる。というわけで、3月26日発売のGENROQ5月号ではレーシングドライバーの田中哲也さんによるサーキットでのテストレポートが掲載される予定だ。
 
 一方の本記事は、運び屋として都内とサーキットを往復し、公道を走ってみたらどうだったのかをユルく綴るプチ試乗記である。


街中ドライブでも刺激に満ち溢れている

 まず乗り込むときに戸惑うのが、ドアがないということだ。恐る恐る足を踏み入れようにも、どこに足をつければいいのかわからない。「シートを踏んづけちゃっていいっすよ」とエルシーアイ(ロータス正規輸入元)のKマネージャーは言うけれど、なんとなくそれも憚られたので、座面の直前にあるアルミのフロアに足を伸ばし、不自然に後傾した状態で腹筋、背筋、そして背骨まわりのインナーマッスルに意識を集中してシートに腰を下ろした。

 座ってみれば、当然ながらフロントウインドウのない景色に戸惑いを覚えるものの、ステアリング、シフトレバー、サイドシル、ペダル配置など、すべてが乗り慣れたエリーゼやエキシージと同じなので、こうした従来のロータス各モデルを運転した経験のある人なら、スッと馴染むことができるだろう。

 そして走り始めると、まさに「いつもの」ロータスの世界が広がる。アクセルを踏んでも、ステアリングを切っても、操作に対して即座に車体が反応し、すべての動作にタメがない。フロアに遮音材の類はほとんど使われていないため、ロードノイズもダイレクトに伝わってくる。交差点を曲がるだけで、赤信号に向けてシフトダウンするだけで、その醍醐味を十分に味わうことができる。

 サーキットやワインディングロードでこそ本領を発揮できるのは確かだが、それでいて街中ドライブでも刺激に満ち溢れているのがロータスなのだ。


ステアリング中央のパッドがブ厚いのがレーシングマシンっぽい。ホーンボタンは左右のスポーク部にある。ダッシュボード中央にはスターターボタンやキルスイッチや灯火類スイッチなど、必要最低限のものしか見当たらない。
レーシングカーや2輪のスーパースポーツモデルのような小型フル液晶メーター。中央に表示される大きな数字はギヤポジションだ。6000rpm以上の表示が大きいタコメーターが泣かせる。速度は右上に小さく表示されるに過ぎない。


ガゼールに飛び乗る石原裕次郎のイメージ

 フロントウインドウがないので、もちろん風圧は強烈だ。借り出し直後は、とりあえずどんなものか体感するためにヘルメットなしで走ってみたが、幸か不幸か終始渋滞していたためにとくに問題には感じなかった。ときおり前が空いて速度を上げたときの印象からすると、目がショボショボしたり、涙が溢れたりせずに安全に視界を確保できるのは40〜50km/hくらいまでだろうか? 飛び石や虫との激突の危険性もあるため、ヘルメットの装着は必須だろう。

 1855mmの全幅は、いまどきすごく幅広というわけでもないが、アルミバスタブそのものの横方向のサイズはエリーゼと変わらないため、運転席と助手席がかなり中央に寄せてレイアウトされている。運転席の反対側、つまり右ハンドルであればボディ左サイドの末端の位置が把握しづらいというのはよくある話だが、3-Elevenは右サイド末端も着座位置から大きく張り出しているために注意する必要がある。これはちょっと新鮮な感覚だ。もちろんちょっと走ればすぐに慣れる。

 途中、信号待ちでとなりに並んだトラックの運転手が窓を開け、満面の笑みで「オニイサン、カッコイイネ」と声を掛けてきた。ネパールあたりからの移民と思しき青年だったが、「兄さんもカッコいいじゃん」と返したら、満面の笑みが爆笑に変わった。

 これは序章に過ぎず、ここから返却するまでの二日間で、いったい何度声を掛けられたことか。こういうコミュニケーションが生まれるのも、こうしたウルトラスーパースポーツの面白いところだ。

 その後、悪ノリして都内某所の商店街に行ってみたのだが、もう注目の的なんてもんじゃない。前ページのメインカットもそこで撮影したのだが、実はここ、クルマが通れる道と交差している箇所で、なにも商店街に3-Elevenで侵入した無法者というわけではないので念のため……。

 とはいえやはり周りには気を遣う。軽トラや台車が横切る場面も多々あり、みなさんイヤ顔ひとつせずに脇を通り抜けてくれるのだが、気になるので「スイマセン、動かしま〜す」と言いながら3-Elevenに飛び乗る。ドアがないので本当に飛び乗るのだが、だんだんと慣れてスムーズに、かつシートを踏んづけることなく飛び乗れるようになる。

 それはまさに、西部警察のオープニングでガゼールのコンバーティブルに飛び乗る石原裕次郎のイメージであった。

 

ロード仕様のトランスミッションは6速MT。あえてリンケージを丸見えにしてスポーツムードを高めており、これぞデザインの妙技と唸らされる。

高速巡航は苦行……というほどではなかった

 二日目は、田中哲也さんに乗っていただくために富士スピードウェイに向かう。極寒の2月にヒーターもなくフロントウインドウすら持たない3-Elevenで高速道路を淡々と走り続けるなんて拷問に近いと身構えていたが、意外やコクピットに潜り込んでしまえば肩より下に風は当たらず、頭部はヘルメットをかぶっているのでそもそも寒くない。少なくともバイクよりはマシである。大変なのは冬よりも夏かも知れない。

 超絶ハンドリングマシンのロータスだけに高速巡航は退屈になりがちだが、3-Elevenの場合は風圧や風切り音や排気音やロードノイズなどと対峙し続けなければならないため、退屈に感じているヒマはない。これで居眠り運転できるようになったら相当なものだ(いや、寝たらいけませんよ)。

 余談だが、デモカーにETCが装着されていたのには笑った。どうぞ高速道路で快適な長距離ドライブをお楽しみください、というわけだ。本音は、無理して発券機に近づきすぎてホイールをブツけられたらたまったもんじゃない、といったところかもしれないが、よくよく考えてみれば3.5LものV6ユニットにスーパーチャージャーを組み合わせているのだから、高速巡航も得意なはずである。追い越しも6速に入れっぱなしでたいていはこと足りる。ナビゲーションもオーディオもないけれど、想像するほどつらくはなかった。雨が降ったら話は別だろうけれど。

虚飾を排したスパルタンな車体構成だが、こんな遊び心も。サイドマーカーのなかをよく見ると、ユニオンジャックが描かれている。
フロント左右の開口部にはオイルクーラーが鎮座している。どことなくフォーミュラマシンのサイドポンツーンの内部を想起させる。
フロントセクションの中央部にはラジエーターをマウントする。エンジン以外の重量物をフロントに配置することでバランスを取っているようだ。

富士スピードウェイで行われたレーシングドライバーの田中哲也さんによるサーキットテスト。

レーシングドライバーも太鼓判!

 そんなこんなで無事に富士スピードウェイに到着し、あとは田中哲也さんにバトンタッチ。サーキットテストの模様はGENROQ5月号に詳しいが、哲也さん曰く「点数をつけるとすれば100点満点」とのこと。

「ほかにライバルが見当たりませんから、ロータスとして愛好家をどれだけ満足させられるか、という視点で分析するしかないんですね。そう考えたら満点ですよ。2-Elevenよりも確実に進化していますし」

「もちろん、誰にでも勧められるクルマではありません。ちゃんとドライビングを理解し、経験を積み、技術を磨いた人でなければ楽しめないと思います。これだけ軽いボディにハイパワーで、運転補助デバイスも最小限ですから、運転にごまかしが効きません。攻めていけばリスクもあります。でもね、本来スポーツドライブってリスクを伴うものなんですよ。クルマは安全なものだ、なんて過信してはいけないんです。3-Elevenはコクピットがムキ出しで、ある面においてリスクは高まりますが、じゃあ2輪なんてどうなるんですか? でもそのぶん、4輪では得られない面白さや快感があるわけですよね。3-Elevenも、つまりはそういうことです」

「できればエリーゼ、エキシージとステップアップしてから乗っていただきたいですね。そうすれば自然と乗りこなせるようになるでしょう。そもそもロータスって、そうやって学ぶことを楽しめる人に好まれているわけですよね。だから3-Elevenは100点満点なんです」

 サーキットでプロが走らせても大満足で、シロウトが公道で走っても超絶に楽しい。だからといって簡単に買えるものではないけれど、快適すぎる最新のスーパースポーツに食傷気味の好事家には、ぜひ選択肢のひとつに加えていただきたい一台だ。まぁとにかく、こんな尋常ならざるクルマを公道に解き放ったロータスには、感心するやら呆れるやら、なのである。

知性派ドライバーとして知られ、弊社でも多くの媒体にレポートを寄稿してもらっている田中哲也さん。
フロントタイヤの後方には大きなエア抜け用のスリット……というよりもホールが設けられている。
ブレーキキャリパーはAPレーシング製4ポットで、ディスクサイズはフロント、リヤともに332mmだ。
ミッドに横置きされるエンジンは3.5LのV型6気筒DOHCで、スーパーチャージャーの過給を得て最高出力416ps、最大トルク410Nmを捻り出す。
センター出しのエキゾーストエンドが放つ快音はレーシングマシンそのもの。大ぶりなディフューザーが強烈なダウンフォースを生み出す。

●ロータス 3-イレブン ROAD
全長×全幅×全高:4120×1855×1201mm ホイールベース:2370mm 車両重量:925kg エンジン:V型6気筒DOHCスーパーチャージャー 排気量:3456cc 最高出力:416ps/7000rpm 最大トルク:410Nm/3000rpm トランスミッション:6速MT 駆動方式:MR フロントサスペンション:ダブルウィッシュボーン リヤサスペンション:ダブルウィッシュボーン フロントタイヤサイズ:225/40ZR18 リヤタイヤサイズ:275/35ZR19 0-100km/h加速:3.4秒 最高速度:280km/h 価格:1495万8000円

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