モーター駆動が気持ちいいセレナe-POWERは、弱点「静と動のギャップ」をどう克服したか?
MotorFan / 2018年3月3日 13時50分
ノートe-POWERに続いて2モデル目として登場したe-POWER搭載モデルは、ミニバンのセレナ。モーター駆動の気持ち良さとワンペダル操作の愉しさを味わえるセレナe-POWERだ。e-POWER(シリーズハイブリッド)の長所は、電動だが、充電する必要がないこと。弱点は「静と動のギャップ」。つまりエンジンの停止/作動状態でのNVHの違いである。日産技術陣は、そこにどう取り組んだか? TEXT◎世良耕太(Kota SERA)PHOTO◎MotorFan
モーター駆動の走りの気持ち良さを味わってしまうとやめられなくなる。初代リーフを営業車として長年使っているためバッテリーが劣化し、高速道路ではパーキングエリアごとに充電を強いられているヘビーユーザーと出くわしたことがあった。そのユーザーは充電が面倒臭いと辟易している様子だったが、モーターの魔力には取り憑かれているらしく、「次はノートe-POWERにするかもしれない」と話していた。
100%電気自動車のリーフを目当てに販売店にやってきたはいいが、詳細に説明を聞くうちに「充電のことを考えると無理かもしれない」と思い至る客がいるという。ところが、充電が不要で100%モーターで走るノートe-POWERが出てからというもの、「リーフかノートe-POWERか」で選択する客が増えているという。そこに、セレナe-POWERが加わった。
「幅広いお客様にモーターの走り提供するときに、充電に対する懸念をキャンセルしたい」と話した、ノートe-POWERの開発に携わったエンジニアの言葉を思い出す。
ノートe-POWERもセレナe-POWERも、充電する代わりにエンジンで発電して電気をつくる。ガソリンエンジンで発電した電気を溜めておくバッテリーの容量が大きければ大きいほど、蓄えた電気エネルギーのみで走れる機会が多くなる。出力の要求が大きいとき(アクセルペダルを深く踏み込んだとき)や、バッテリー残量があまりないときなどは、エンジンを始動して発電機をまわし、足りない電気を補う必要がある。
エンジンが始動しても、タイヤに力を伝えているのはモーターであることに変わりはない。だから、モーター駆動ならではの気持ち良さに変化はない。だが、ウルサイ。どうしても「静と動のギャップ」が生まれてしまうのが、e-POWER、パワートレーンの分類的に言えば、シリーズハイブリッドの弱点である。
エンジンを始動させずに済む機会を多くしようとした場合、バッテリー容量は大きくする必要がある。だが、バッテリーをたくさん積むとコストが跳ね上がってしまう。だからまず、100%EV走行ができる領域をある程度確保できる、最小限のバッテリー容量を決める。パッケージングの都合からも、バッテリーは小さくしたい。次に、システムを搭載するクルマに要求される出力の特性などから、エンジンの仕様を決める。
バッテリー容量が大きければ発電用エンジンの出力は少し弱められるし、エンジンの出力が大きければ、バッテリーは補助的に使うことができる(が、エンジン始動の機会が増えてウルサイ)。バッテリーとエンジンはそういう関係だ。
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10003238/big_243951_201803031335330000001.jpg)
e-POWER第1弾のノートは、1200kg前後の車重に対し、1.5kWhの容量を持つバッテリーを載せ、最高出力58kWhのエンジン(1.2ℓ・直3自然吸気)を組み合わせた(表参照)。
セレナe-POWERの車重は1700kg台だ。ノートe-POWERよりざっと500kg重い。多人数で乗車する機会を想定したクルマなので、大勢が乗った場合は2tに達する。そのヘビーな重量に対応するため、モーターの出力はノートe-POWER比25%増の100kWとし、エンジンを始動させないEV走行距離を拡大するためにバッテリー容量を20%アップの1.8kWhにした。また、高負荷に対応するため、エンジンの出力も7%アップの62kWとしている(1.2ℓ・直3自然吸気を積むことに変わりはない)。
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10003238/big_243955_201803031337520000001.jpeg)
![ミニサーキットでの限られた環境で試乗。力不足は感じなかった(2名乗車で、だが)。](https://motor-fan.jp/images/articles/10003238/big_243956_201803031338360000001.jpeg)
セレナe-POWERの車重は1700kg台だ。ノートe-POWERよりざっと500kg重い。多人数で乗車する機会を想定したクルマなので、大勢が乗った場合は2tに達する。そのヘビーな重量に対応するため、モーターの出力はノートe-POWER比25%増の100kWとし、エンジンを始動させないEV走行距離を拡大するためにバッテリー容量を20%アップの1.8kWhにした。また、高負荷に対応するため、エンジンの出力も7%アップの62kWとしている(1.2ℓ・直3自然吸気を積むことに変わりはない)。
シリーズハイブリッドの宿命として、静と動のギャップはどうしてもある。「動」に転じたときのギャップを弱めるため、セレナe-POWERはガソリンエンジン(2.0ℓ・直4自然吸気)のみを搭載する仕様に対し遮音性能を高めた。制御にもこだわっている。
「多人数乗ることを想定すると、重量が重い分アクセルの踏み込み量が大きくなると思います。そこでエンジンが始動してしまうと意味がないので、始動するタイミングにはこだわりました。7人乗っていてもe-POWERであることを感じていただけると思います」
制御開発に携わったエンジニア氏はそう説明する。静と動のギャップが生じてしまうのはe-POWERの宿命だ。しかし、モーターによる気持ちいい走りは代えがたいし、ワンペダルで加減速がコントロールできるのも、一度味わったらやめられない、楽で、クルマを操るのが楽しくなる機能だ。
e-POWERに乗り慣れてくると、自然とエンジンを始動させないようなアクセルペダルコントロールをするようになる。そうすると結果的に燃費が良くなる。実はそこも狙っていたりして……。
セレナe-POWERハイウェイスター
全長×全幅×全高:4770×1740×1865mm ホイールベース:2860mm 車重:1760kg JC08燃費:26.2km/ℓ 駆動方式:前輪駆動 サスペンション:Fストラット/コイル Rトーションビーム/コイル 発電用エンジン 形式:直列3気筒DOHC エンジン型式:HR12DE 排気量:1198cc ボア×ストローク:78.0×83.6mm 圧縮比:12.0 最高出力:62kW/6000rpm 最大トルク:103Nm/3200-5200rpm 使用燃料:レギュラー
駆動用モーター 型式:EM57 種類:交流同期電動機 最高出力:100kW (136ps) 最大トルク:320Nm 電池:リチウムイオン電池
コンベのパワートレーンとe-POWERの価格差は?
グレード 価格(コンベのパワートレーン搭載のセレナ)
e-POWER X 296万8920円(X 248万5400円)
e-POWER XV 312万8760円(XVセレクション 267万4080円)
e-POWER ハイウェイスター 317万8440円(ハイウェイスター 267万8400円)
e-POWER ハイウェイスターV 340万4160円(ハイウェイスターVセレクション 296万66760円)
セレナe-POWERは2WDのみの設定
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