【初試乗】ポルトフィーノで感じた、新世代フェラーリの姿。
MotorFan / 2018年3月3日 20時20分
フェラーリの最新作「ポルトフィーノ」に早くも試乗する機会を得た。 カリフォルニアに続くモデルとしてリリースされているものの、その走りは正常進化しているのか? イタリア南部のバーリよりレポートする。 REPORT◎大谷達也(Tatsuya OTANI)
80kgの軽量化と、35%の剛性アップ!
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誰がなんといおうと、これは完全なフルモデルチェンジだ。新型ポルトフィーノの技術プレゼンテーションを聞いて、そう確信した。
そのボディ構造に関する説明のなかで、軽量化と高剛性化を実現したひとつの事例として溶接の長さが前作カリフォルニアTに比べて30%短くなったことが紹介された。近年、ボディ剛性を向上させた証として溶接をより念入りに行ったとか、構造用接着剤を取り入れたというエピソードはよく耳にするが、溶接長を短くしたという話は寡聞にして聞かない。
しかし、よくよく考えてみれば、溶接長を短くできたのは部品点数を減らしたからに他ならず、さらにいえば部品点数の減少は軽量化と高剛性化の両方に役立つ。念のため、この点をフェラーリのエンジニアに確認したところ、「そのとおり」との回答が得られた。
部品点数を減らすことができたのは、何よりボディ構造が根本から見直されたからだ。たとえばAピラー部分の部品点数はカリフォルニアTの21点から2点へと劇的に減少。そのほかボディのフレーム構造も全体的に太く、シンプルな形状に改められ、新素材が多用された。この結果、車両重量が80kgも軽くなったほか、静的ねじれ剛性は35%、サスペンションの取り付け部は50%も剛性が向上したという。そうした改良が乗り心地やハンドリングに影響しないわけがない。
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ポルトフィーノの国際試乗会はアドリア海に面したイタリア南部のバーリ周辺で開催されたが、この地域の荒れた路面を強行突破してもボディはビクともしない。それも、ただボディが“コチコチ”に硬いというのとは違って、十分な強度とともにサスペンションから伝わる不快な振動を瞬時に減衰させるダンピング性能も備えているので、スプリングやダンパーの硬さを直接的に感じさせない優れた快適性も備えている。このボディの感触は、先ごろデビューした812スーパーファストにも共通するものだ。
新たに電動パワーステアリングを採用したステアリング系は、カリフォルニアTよりも、むしろインフォメーションが豊富になるいっぽう、キックバックは見事に遮断されて、こちらも快適そのもの。ステアリング特性はカリフォルニアTに由来するゲインの高さとターンインで水平に横っ飛びするような感触が残っていたものの、その傾向は前作よりもマイルドで、最新フェラーリを初めて操るドライバーも戸惑わずに済むだろう。
ブロックこそ流用ながら、ピストン、コンロッド、吸排気系などが一新された3.9ℓ V8ターボエンジンは、7500rpmの最高回転数を保ったまま最高出力は40ps上乗せして600psを発揮。0-200km/h加速はコンマ4秒速くなって10.8秒で駆け抜け、最高速度は従来の316km/hから320km/h以上へと向上した。
ターボエンジンとしては異例の反応!
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それにしてもこのエンジンはターボとは思えないほどレスポンスが鋭い。フェラーリがよく用いるレスポンスタイムという評価項目は、3速2000rpmの巡航状態からフルスロットルにした後、加速Gがピーク時の90%に到達するまでどれだけの時間がかかるかを示すものだが、これはカリフォルニアTと同じ1.0秒を保っている。ポルトフィーノは最高出力が上がって加速性能が向上しているので、ピーク時の90%に達する時間が長引いても不思議ではないが、これが同じということは実質的に加速の立ち上がりが大幅に改善されていることを意味する。
それとともに印象的なのが、巡航からフル加速に移行する際の、エンジンのフレキシブルでスムーズな反応である。スロットルペダルを軽く踏んでいるかどうかの状態からフルスロットルにすれば、当然、エンジンの燃焼モードは大きく変わる。こういう操作をすると、一般的には一度エンジンがむずがえってからおもむろに加速態勢に移ることが多いのに、ポルトフィーノはそんな素振りを一切見せることなく直ちにダッシュし始める。この柔軟さと反応の素早さは、ターボエンジンとしては異例だ。
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そしてもちろん、エンジン回転数が高まっていく過程では例の美しいフェラーリ・ミュージックを堪能できる。2000rpmから3000rpmではよく響くバリトンを、3000rpmから5000rpmでは軽快なテノールを、そして5000rpmオーバーでは突き抜けるようなソプラノの音色を聞かせてくれるのは、一体成型の等長エキゾーストマニフォールドや丁寧なチューニングが施された排気系の賜物。ターボ化された最新のフェラーリ・ユニットのなかでもとりわけ美しい歌声の持ち主と評価できる。
さらにいえば、ポルトフィーノは車速が40km/h以下であれば開閉できるメタルハードトップと、プラス2のサイズとはいえリヤシートまで備えている。ボディ形状やウィンドディフレクターを見直すことで、130km/h近辺の高速走行でもキャビンにほとんど風を巻き込まなくなったことも特筆すべきだろう。フロントエンジンの美しさを最大限に引き出したスタイリングもダイナミックで魅力的。スポーツドライビングだけでなく、デイリーユースにもロングツーリングにも使いたくなる新世代フェラーリの登場といえる。
![前作のカリフォルニアと比較するとスタイリッシュになったダッシュボード周り。インフォテイメントシステムも改められ、10.25インチのタッチスクリーン式ディスプレイを採用する。](https://motor-fan.jp/images/articles/10003244/big_244077_201803031954210000001.jpg)
![他のフェラーリ同様、レブカウンターは中央に配置。左右のディスプレイには、様々な情報を表示できるよう切り替え式となっている。](https://motor-fan.jp/images/articles/10003244/big_244078_201803031959080000001.jpg)
![走行モードを変更する”マネッティーノ”。ラグジュアリーモデルのポルトフィーノの場合はスポーツモデルとは異なり、コンフォート、スポーツ、ESCオフの3モードとなる。](https://motor-fan.jp/images/articles/10003244/big_244078_201803031959080000002.jpg)
![フロントシートは、新たにマグネシウム構造を採用し、シートバックも極薄。軽量化に貢献している。](https://motor-fan.jp/images/articles/10003244/big_244079_201803031956040000001.jpg)
![カリフォルニアよりも拡大されたリヤ側の足元。とはいえ、+2となる後部座席は、子供限定もしくは荷物を置くのためのスペースと考えたほうが無難だろう。](https://motor-fan.jp/images/articles/10003244/big_244079_201803031956040000002.jpg)
![全回転域で燃費効率とパワーフィールを見直したV8ツインターボエンジン。600ps&760Nmを発揮し、最高速度は320km/hにも達する。](https://motor-fan.jp/images/articles/10003244/big_244080_201803031957080000001.jpg)
![カーボンセラミックブレーキを採用。タイヤサイズも20インチと大型化されている。](https://motor-fan.jp/images/articles/10003244/big_244080_201803031957080000002.jpg)
【SPECIFICATIONS】
フェラーリ ポルトフィーノ
■エンジン
タイプ: 90度V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量 :3855cc
最高出力: 441 kW(600 ps)/7,500 rpm
最大トルク:760 Nm /3000 - 5250 rpm
■トランスミッション
7速デュアル・クラッチ式
■ボディサイズ
全長:4586 mm
全幅:1938 mm
全高:1318 mm
重量配分 46:54(フロント:リヤ)
■ブレーキ
仕様:カーボンセラミックディスク
フロント:390☓34mm
リヤ:360☓32mm
■タイヤサイズ
フロント:245/35ZR20(8J)
リヤ:285/35ZR20(10J)
■パフォーマンス
最高速度 :320 km/h
0-100 km/h加速: 3.5秒
■環境性能(EU)
燃料消費量(複合): 10.5 ℓ/100 km
CO2排出量:245g /km
■車両本体価格:2530万円(税込)
![Ferrari Portofino](https://motor-fan.jp/images/articles/10003244/big_244082_201803032001280000001.jpg)
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