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レクサスLS500 モーターの走りもいいが、「やっぱりエンジンはいい」と感じさせてくれる3.5ℓV6ターボ

MotorFan / 2018年3月6日 13時0分

レクサスLS500 モーターの走りもいいが、「やっぱりエンジンはいい」と感じさせてくれる3.5ℓV6ターボ

2017年10月に新型に移行して5代目になったレクサスLSに乗った。LSには3.5ℓ・V6自然吸気(NA)エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドモデルのLS500hと、3.5ℓ・V6ターボエンジンを搭載するLS500がある。今回試乗したのはLS500だ。

両シリーズとも3.5ℓ・V6を搭載することに変わりはないが、まったくの別物だ。LS500hが積む8GR-FXSは、21世紀に入って登場したGR系の集大成に位置づけられるユニット。ボア×ストロークは94.0×83.0mmである。

一方、LS500のV35A-FTSはレクサスLSで初出しとなる新開発のエンジンだ。ボア×ストロークは85.5×100.0mmで、最新のエンジンらしくロングストロークとなっている(ボア/ストローク比=1.17)。燃焼室容積の表面積(S)と容積(V)の比率であるS/V比を小さくしたわけだ。S/V比を小さくすると冷却損失が小さくなるため、熱効率は向上させやすい。

最近の新設計エンジンはおしなべてロングストロークで、V35A-FTSもその流れに乗ったものだ。LS500はこれに、やはり新開発の10速ATを組み合わせる。



エンジン形式:V型6気筒DOHCターボ
エンジン型式:V35A-FTS
排気量:3444cc
ボア×ストローク:85.5×100.0mm
圧縮比:10.4
最高出力:310kW(422ps)/6000rpm
最大トルク:600Nm/1600-4800rpm
過給:ターボ×2
燃料:プレミアム
トランスミッション
Direct Shift-10AT(電子制御10速AT)
最終減速比:2.764

右がエンジンの始動ボタン。

エンジンはプッシュスタート式だ。「START STOP ENGINE」と書いてある凹面形状のボタンが、心臓の鼓動のように明滅してドライバーの指先を待っている。

環境を意識した最新のエンジンらしく、V35A-FTSは暖機性の向上を意識した設計となっている。熱効率を向上させると無駄に捨てる熱が少なくなるので、暖気に時間がかかる。早期に暖機させることは燃費にも効くのだが、寒い冬の朝(試乗時の朝は外気温4℃)にクルマに乗り込んだ身にとってみれば、気になるのは暖房だ。

V35A-FTSの場合、冷間始動後はエンジンの熱をヒーターに集中させることで暖房性能を向上させている。始動後すぐに暖かい風が吹き出してくるわけではないが、配慮した機能が搭載されていると知って乗り込んでみると、「なかなか早いな」という感じはする。それまでは、ステアリングヒーターの温もりが心地良い。

先代LSのノンハイブリッド仕様が搭載していたエンジンは、4.6ℓ・V8NAだった。新開発のV35A-FTSは、3.5ℓの排気量で4.6ℓ・V8NAを上回る出力性能と、主にヨーロッパの競合に負けない加速性能、燃費、環境性能を達成することを目標に開発された。レクサス(トヨタ)流に言えば、ダウンサイジングではなくスマートサイジングである。小さな排気量で大きな出力/トルクを達成するため、2基のターボチャージャーで過給している。

最高出力は310kW、最大トルクは600Nmに目標が設定された。最大トルクの発生回転数は、低速からスムーズに気持ち良く立ち上がる加速感を提供するため、1600rpmという低い回転数にこだわった。




開発にあたっては、レクサスNXが搭載する8AR-FTS型2.0ℓ・直4ターボの知見が参考にされた。8AR-FTSで採用したターボをV35A-FTSに適用すると、600Nmの最大トルクを発生する回転数は1850rpmになることがわかった。そこで、NXの8AR-FTSよりも小型のターボとすることにし、低い回転数から600Nm最大トルクを発生できるようにしたという。

「排気量は大きくて、出力もトルクも大きいのにターボは小さくする?」と疑問に思うかもしれないが(ま、疑問に思ったのはワタクシなんですけどね)、考えてみればV35A-FTSは片バンクに1基のターボをあてがうわけで、1.75ℓ・3気筒エンジンと考えてみれば、2.0ℓ・4気筒より排気量は12.5%も小さい。低い回転数で大きなトルクを発生させるには、排気量に合わせた小型のターボを目一杯働かせる必要があるのは道理だ。

ターボチャージャーのコンプレッサーで圧縮し、高温になった空気を冷やすインタークーラーは、エンジン直上配置の水冷式とした。加速のレスポンスを重視するためと、冷却した空気がエンジンの熱を受けて暖まってしまうのを防ぐ狙いである。

水冷式の場合、エンジン冷却水を用いる方式もあるが、エンジン冷却水は温度が高いので大きな冷却効果は望めない。そこで、水冷インタークーラーの冷却水を冷やす専用のラジエーターをフロントバンパー裏の最前列に置いた。空気のもっとも良くあたる一等地にラジエーターを置き、放熱能力を確保する考えだ。

インタークーラーの冷却効率は90%以上だというから、外気温が20℃で過給した空気が120℃だとしたら、30℃まで冷やす能力があるということだ。この結果、広い過給域において耐ノック性が向上し、出力向上に寄与しているという。

というようなことが書いてある資料を先に読んでしまったものだから、乗る前からLS500にイチコロである。試乗車は車重2240kgのバージョンLだったが、数字どおりの重さを感じるシーンは一度もなかったし、数字どおりの大きさ(全長5235mm×全幅1900mm)を感じるシーンも皆無だった。

インタークーラーの冷却水を冷やす専用の熱交換器。インタークーラー(チャージエアクーラー)自体は、エンジンの上部にある。

カバーを外すと、インタークーラーが見えてくる。

一般道を周囲の流れに合わせて移動するシーンでは、遮音性の高さもあってエンジンの主張は控え目だ。交通の流れに乗っている限り、高速道路であっても印象は変わらない。エンジンの主張はあくまで控え目である。なにしろ、レシオカバレッジ8.23を誇る10速ATのおかげで、100km/h走行時のエンジン回転数は1250rpmにすぎないのだから(8ATに対して約300rpm減)。

「うわぁ、これは気持ちいい」と感じるのは、アクセルを強めに踏み込んだときである。ドライバーの意思を感じ取ったLS500は、即座に変速段数をいくつか落としてエンジン回転を高め、それと並行してV6 ならではの粒のそろった快音を発しつつ、強く背中を押してくる。

Normalモードでもエンジンの実力を存分に味わうことはできるが、メータークラスター左側のドライブモードセレクトスイッチをSport Sにすると、エンジンの主張はもっと強まる。意図的に車室内に侵入させた吸気音が波のように押し寄せてきて、窓外を流れる風景と一緒に後方に抜けていくようだ。

病みつきになること請け合いで、これをもってしてレクサスLSは完全なるドライバーズカーだと断言できる。クルージング時の「静」と鞭をくれたときの「動」のコントラストが、LS500の魅力となっているのは間違いない。モーターの走りもいいが、「やっぱりエンジンはいい」と感じさせてくれるクルマだ。



レクサスLS500 バージョンL
全長×全幅×全高:5235×1900×1450mm ホイールベース:3125mm 車両重量:2240kg 駆動方式;FR サスペンション:Fダブルウィッシュボーン/エアスプリング Rマルチリンク/エアスプリング 
JC08燃費:10.2km/ℓ
価格:1320万円

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