【新型クロスカブ】ホンダの開発陣がこっそり教える! 新型の誕生秘話
MotorFan / 2018年3月12日 11時10分
往年のハンターカブを思わせる衣装となり、業界をザワつかせている新型クロスカブ。この大胆な刷新の影には苦労も多いはず……気になるぅ〜、というわけで、開発陣を突撃訪問。内緒話を色々教えてもらいました! (この記事はモトチャンプ4月号より抜粋・再編集したものです) PHOTO:鳥頭尾拓磨 REPORT:横田和彦
亀水二己範さん(写真左)
[本田技術研究所 二輪R&Dセンター 第1商品開発室 第2ブロック 主任研究員]
6年前からカブシリーズのLPL(ラージ・プロジェクト・リーダー=開発責任者)を担当。ホンダ歴31年のベテランで、過去にはフォルツァなども手がけている。
兼村祐気さん(写真中央)
[本田技術研究所 二輪R&Dセンター HGA-K 1BL]
ホンダ歴4年の若手デザイナー。各モデルの部品デザインなどを経験してきたが、スタイリングデザインを担当したのは今回が初。
藤嶽かなえさん(写真右)
[本田技術研究所 二輪R&Dセンター デザイン開発室 第2ブロック]
主に海外モデルのデザインP(L プロジェクト・リーダー)として、良いものを安く作ることを勉強し、CRF250Lのスタイリングデザインなども経験。ホンダ歴は7年。
秀逸なデザイン案により開発はトントン拍子!
モトチャンプ(以下モ):まずはみなさんが担当したところを教えてください。
亀水(以下、亀):私はカブシリーズ全体のLPL(開発責任者)です。
兼村(以下、兼):クロスカブのスタイリングデザインを担当しました。
藤嶽(以下、藤):用品デザインの担当で、今回は新型クロスカブの世界を広げる用品を提案しています。
モ:兼村さんは、過去にどんな車種を手がけられましたか?
兼:これまでは部分的なデザインを担当することが多く、全体のスタイリングデザインを通しで手がけたのは新型クロスカブが初めてです。
亀:当初は、先代クロスカブのようにオーストラリア郵政カブのカラー変更をベースに検討しました。が、良いデザインが提案されたのでやってみようとなったんです。LPLとしてはコストがかからない構想も捨てがたかったんですけどね(笑)。
モ:デザインスケッチはもろにハンターカブのイメージですね!
兼:レッグシールドを外してアップマフラーにするというのが最初のイメージでした。じつはデザイン案の数はあまり出さなかったんですが、意外とすんなりと決まったんです。上司に途中経過を見せてもあまり口出しされませんでしたし。普段はそんなことないんですけど(笑)。トントン拍子に進んだのですが、設計のことは詳しく知らなかったので、色々と教わりました。
モ:カブのアイデンティティでもあるレッグシールドを外すというアイデアについて、LPL的にはどうお考えだったんでしょうか?
亀:実際に外した車両でオフロードや雪道を走ってみると、足を出しやすいのでより自由度が増しました。それに、開放感が増した点はぜひ試して欲しいところです。それにあわせて、私くらいの体格でもオフロードを走りやすいようにハンドルの高さをバー1本半ほど下げつつ手前にしています。デザイン的にもハンドルまわりの凝縮感が増して良くなったし、スタンディングした時も車体を足でホールドしやすくなるなど機能的なメリットも多いんです。
モ:かなり細かいところまで専用設計になっているんですね。
亀:シートのウレタンの材質も見直して厚みを10㎜増し、長時間乗っても疲れないようにしています。変えなくてもいいかと思ったんですが、やはり乗り比べると効果アリです。
モ:デザインで苦労したところやこだわったところはどこですか?
兼:直線的なラインでタフ感を出したかったのですが、曲線的なスーパーカブの後部を活かす前提だったので、そこのつながる面の造形は何度もトライしました。こだわったという点では、マフラーカバーにスリットを入れることでハンターカブイメージも取り入れました。また足周りをブラックアウトすることでタフ感を高めたところですね。
モ:メーターなど細かい部分にもこだわっていますよね。
兼:遊び心を反映させ、メーターの文字盤に迷彩を取り入れました。いつも目に入る所なので、ライダーの気持ちを盛り上げたかったんです。
亀:LPLとしては変更部分が多いとコスト管理が気になりますが、設計陣を含めみんなが"大丈夫です、範囲内に収めます"とやる気満点で(笑)。
モ:若者が中心となり、一致団結して開発を進めていった感じですね。
兼:デザイナーや設計者の中に「これ欲しい、買うぞ」という声が多かったのも力になりました。
用品からもクロスカブの世界観が広がる
モ:オプションのこのリヤバッグも今回デザインされたものだとか。
藤:新型クロスカブのイメージを広く伝えるには、実用性とともに、ワクワク感の表現として用品もうまく使うべきだという話になり、今回の取り組みにつながりました。
モ:たしかに車体の魅力をより引き立てるアクセントにもなりますよね。
藤:なので、自分たちが本当に欲しいものを考え、さらにデザイン室のカブオーナーたちにどんなものが欲しいか聞きました。「こんなの付けたらカッコいいんじゃない?」みたいなラフな会話からイメージボードを作り社内の共有を図りました。このバッグはほぼ新規で作ったんです。生地からバックルの形状、純正キャリアへの取り付けやすさなども考慮しています。底にはHマークも入っているんですよ。
モ:あ、ホントだ!
藤:スーパーカブでよく使用されるのはハードタイプのトップケースですよね。私もボックスを付けたカブに乗っているんですが、会社帰りにスーパーに寄ったりした際に、もっと柔軟で使いやすく、大容量なものが欲しいと思い考えました。これは2泊くらいまでのツーリングを想定したサイズで、パソコンなども入れやすいんですよ。
モ:出先でそのままバッグとして持ち運べるのも良いですよね。
藤:新型クロスカブは兼村の提案もあってかなりファンデザインに振れているので、こういったオシャレな用品が似合うと思います。
兼:大きく変わったクロスカブの世界が、こういった用品と一緒に盛り上がっていくとうれしいですね。
モ:本当に楽しみです!
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