原チャリにターボ搭載、、、意外とアリでした。【DAXターボ】
MotorFan / 2018年3月13日 18時30分
バイクをターボ化、しかも原チャリのダックス(エンジンはスーパーカブ110)をベースに実行したと聞くと俄然興味が湧く。タービンは不足なく回るのか、パワー特性はどうなのか? インプレッションとともにここで詳しく解説していこう。(REPORT:佐藤恭央 PHOTO:山田俊輔)
BASE MACHINE:HONDA・DAX /BASE ENGINE:HONDA・SUPER CUB110(FI)
BUILDER:TAKU8
車では当たり前となっている過給機。中でもターボチャージャーはメジャーどころだ。そんなターボユニットをチューニングパーツのひとつとしてバイクに搭載する猛者が全国には数多く存在する。
まず、ターボ化には当然タービンが必要となる。排気ガスを利用して圧力を加えてパワーを底上げする役目を担うが、元々の排気量が少ないバイクではその特性上、制御するのが難しく、採用されるケースはほとんどない。バイク業界が活性化しはじめた1980年代前半にはCX500/650ターボ(ホンダ)、XJ650ターボ(ヤマハ)、XN85(スズキ)、750ターボ(カワサキ)といった、ターボチャージャーを搭載したモデルが各メーカーからこぞって発売されたが、高価なこともあって不振に終わった……。それ以降は長らく開発されることもなく、これらの車両は一部の熱狂的マニアから支持されるのみとなっている。ちなみに数年前に発売されて話題となったカワサキのH2/Rは同じ過給機でもスーパーチャージャー仕様である。
排気量はそのままで飛躍的なパワーアップを可能にし、メカ好きならその響きだけでご飯3杯は軽くいけるターボチャージャーは夢のようなパワーユニット。前置きが長くなったがバイクにおいてはターボを搭載した車両はそれだけレアな存在なのだ。しかも、今回紹介するターボマシンはなんと原チャリ! ベースはホンダのレジャーバイク、ダックスだ。エンジンマウント部を増設し3点留めに増やすなどして剛性メンバーを保ちつつフレームを大幅に加工。これによってロータリーミッションのスーパーカブ110(JA07型)のエンジンを換装。これに軽自動車用のIHI製タービンを自前で用意し、+αを追加してモアパワーを獲得している……というのがざっくりとした構成の解説である。
タービンはブリッツの調整式のブローオフバルブで加給圧が0.6kで逃げる設定とし、排気量が少ないということもあり、アクチュエータ(制御ユニット)は除去。ターボラグを極力なくすため、インタークーラーとサージタンクの容量は排気量(109㏄)に合わせて適正化し、レスポンスとスムースな回転を維持している。
また、FI仕様になるため、燃料ポンプはアウトタンク式のエイプ50FI純正を採用し、燃料タンクにラインを増設して搭載。燃調についてはフルコンではなく、キタコ製のサブコン(iMap)とPLX社の空燃比計を用い、実走を繰り返して完成を遂げている。ターボユニットを載せるだけでも苦労するのに、その機能を少排気量で活かすノウハウには驚きを隠せない! 他にも、フレームネックをチョップして全長を詰め、モンキー用スイングアームを流用してホイールを10インチから8インチに小径化することで全体のフォルムをコンパクトに凝縮している車体も見どころ。
次に気になるのは実際の"乗り味"だ。数多くのバイクを試乗し、ミニバイクレースの経験も豊富なモトチャンプ編集部員によると「ドッカン、と来る加速感に身構えていたれどすんなり発進! あまりにも自然な出足に良い意味で期待を裏切られた。だが、2速に上げてアクセルをあおるとそのキャラクターは豹変! シュイーンというターボ独特の音が聞こえたかと思うと、スムースにトルクが立ち上がり、1秒もかからずにレブリミット(約9000rpm)に到達。滑らかにかつモリモリと加速していくのは非常に愉快!! 遠心クラッチでも乗りやすいし、シフトアップ時のこの力強さは排気量アップでは味わえないね。車体はモンキーよりもコンパクトだけど安定感があって怖さはない。ただ、前後の足周りが硬めにセットされているようでほぼリジッド状態。路面状況はわかりやすいけどこれが長距離となると……。原付本来の短距離での使用用途と割り切ればこれほど面白いバイクはない」と大絶賛!
この車両のオーナーにして製作者であるTAKU8氏は「ターボ仕様のスクーターは過去に何台か作っていて、メタルワークもそれなりに経験があるのでターボ化及び加工などはそれほど苦労しませんでした。それよりも小さな車体やフレーム内に配線やECU、レギュレーターなどを隠すのが大変でしたね」と言う。見た目にもこだわってこその機能美、TAKU8氏はこのダックス×ターボを通じて、さらにミニバイクのカスタム&チューンの奥深さに触れたようだった。
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