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Z900RSはツーリングに向いているのか、500km日帰りツーリングに使ってみた。

MotorFan / 2018年3月14日 20時55分

Z900RSはツーリングに向いているのか、500km日帰りツーリングに使ってみた。

Z900RSを一生の友とするならば、購入前にそのキャラクターをしっかりと把握しておきたいところである。事前に気になる項目の一つが、長距離走行に向いているか否か。今回行った500kmツーリングでは、Z900 RSの意外な一面が見えてきた。(REPORT:近田茂 PHOTO:山田俊輔)

カワサキ・Z900RS……1,296,000円〜




「少し遠くまで走ってみませんか」と編集担当者に提案されて、それは願ってもない申し出と思いつつも時間がない。では日帰りで軽く500 ㎞程度を目指してツーリングしますと応えて早朝家を出た。降雪を避けると房総か静岡方面が安全。と考えていた所でふと思いついて制限速度110 ㎞/hの試行区間がある新東名を目指してみることに。

嬉しい事にZ900RSはETC2.0が標準装備されている。いまだにバイクの多くはオプション対応だし装着性が考慮されていないモデルも多い中、ようやく標準搭載モデルが登場してきた事は大歓迎。後付けよりも安心できるし、インジケーターも予めメーター内にデザインされているのでスッキリとスマートである。

400kmでお尻が痛くはなるものの……

さて片道250 ㎞で引き返せばとりあえず目標達成と思いながらスタートしたが、ついつい距離は伸び、試乗車を返却する時のトリップメーターは600 ㎞を超えていた。特に意識せず予定より2割り増しとなった走行距離は、Z900RSが高速ロングツーリングを難なく快適に走れた証といえるだろう。ちなみに100km/hクルージング時のエンジン回転数は3800rpm。110km/hだと4200rpmだった。

エンジンやダイヤモンドフレームは斬新なネイキッドスポーツのZ900と基本を共用していることはご存知だろう。少しアップライトな姿勢で乗れ、モロにZ1を彷彿とさせる懐かしいタンクデザインもニーグリップの感触が良好。下半身のホールド性が良く、シートへの荷重負担が減るのか、シートクッションが硬めの割に楽に走れた。流石にスタート後400㎞あたりで尻が少し痛くなったが、ロングラン性能は快適な方である。
完全ネイキッドスタイルながら、不思議なほど風の乱流(バタつき)が少ないのも好印象。ヘッドランプやメーター周辺のデザインにもエアロダイナミクスが考慮されているのだろうか。ヘルメットの空力特性進化も寄与しているが、高速クルージング中の乗り味が静かで気分良く走れたのだ。
Z900と比較してドリブンスプロケットが44~42T に変更されて総減速比が高めに設定されたこともあって、エンジンの回転フィールも平然とした感じで騒がしくない。もちろん実用燃費面でも有利。実際今回のツーリングでは市街地と高速が18.2㎞/L。新東名下り(速い流れ)が20.7㎞/L。東名上り(普通の流れ) では24.5㎞/L。高速と市街地は18.9㎞/Lでトータルの実用燃費率は20.9㎞/Lを記録した。

「重すぎない」=付き合いやすい

ビッグネイキッドを所有したら、どのような使い方をするのか想像すると、今回のZ900RSは実に程良い実用性と申し分のないパフォーマンスを楽しめる一台である。車体は大きすぎず、重すぎず、車庫からの出し入れにも苦労しない。エンジンパワーはZ900より控えめだが、トルクやその発生回転域はむしろ実用域で頼り甲斐のある出力特性を発揮しておりジェントルでかつ頼もしいからだ。
適度な直進安定性と素直に旋回を始める扱いやすい操縦性とのバランスや、ブレーキ性能も良い。今回試してはみなかったが、タンデムライディングや、荷物の積載性(バンジーフックの使い勝手)も良さそう。往年のZ1を知らぬ人にとっても、オーソドックスなビッグバイクしての魅力は高いのである。
余談ながらエンジンを始動した瞬間、Z1を知る人ならきっと驚くと思う。ややデシベルの高いその排気音は見事なまでにZ1の"音"が再現されていたからだ。ローギヤにシフトした時のカシャコン! という衝撃音や低速走行時に何処からか聴こえてくるヒューンという音まで、思わず懐かしさを覚えた。   
2017年東京モーターショーでのデビュー以来市場でも注目度の高い存在として知られているが、Z1というヘリテージを活用したカワサキならではの商品力の高さは侮れない。

「私はZ900RSのココに惚れました」/ライター阿部哲也

「これは現代的なバイクである……。エンジンに火を入れると、重低音が強調された4気筒の音があたりに響く。ギヤを入れ、アクセルオン。しかし、エンジンは「回せ回せ」と言わず、60km/hの低速域ゆっくり回しながら街中を流すことも可能。アイドリングでは少々うるさいと感じた音も、この速度域では心地よく身体と耳に響いてくる。ただ、アクセルを回せば、パワフルなエンジンのおかげであっという間に異次元の速度域に。ゆっくり走っても飛ばしてもOK、そんな懐の深さを感じた。Z900RSのメインターゲットは40代。外観もクラシカルで、乗り味も昔のバイクのような味付けがなされていると、東京モーターショーで開発者に聞いた。しかし実際に乗って感じたのが、冒頭の言葉。基本的にはよく走り、よく曲がり、よく止まる。その中に、低速域でも快適に流せるといった優しさが含まれているように感じた」(阿部哲也)

黒いセパレートメーターも丸形ヘッドランプもオーソドックスなデザイン手法だが、中身は最新のLED ランプが採用されている。
φ41mmの倒立式フロントフォークには、φ300mm のデュアルディスクローターをマッチ。ラジアルマウントされたキャリパーは対向4ピストンタイプ。
ブラッックアウトされた4気筒DOHCエンジンは水冷ながらシリンダーヘッドには冷却フィンをあしらったデザインが採用された。
マフラーは右側1本出しの4into1方式。車体下方にも大きなチャンバー容積を持っている。リヤブレーキはニッシン製シングルピストンのピンスライド式キャリパーとφ250mm のシングルディスクローターを備える。
フレームはトレリスと呼ばれるダイヤモンド式。リヤサスペンションは水平近く前傾させたモノショックタイプ。ボトム側にリンク機構を持つホリゾンタルバックリンクサスペンションだ。
なかなか上質な仕上げを直感するステッチを入れたダブルシート。クッションは全体に固めでシッカリ感のある座り心地。フィット感も良い。
オーソドックスなパイプアップハンドル。市街地から高速まで、ごく自然体で乗れる違和感のないライディングポジションは開放的かつ親しみやすい。
中央に液晶インフォメーションを挟んで左右にアナログ表示の速度計と回転計。機能的には新しいが雰囲気はレトロ感の演出も。
左側のハンドルスイッチ。ホーンボタンの右側はハザードスイッチ。上に位置するグレーのスイッチはモード切り替え用。KTRC(カワサキトラクションコントロールが装備されており、制御具合を加速優先と滑りやすい路面をスムーズに走れる2段切り替え式。システムOFF も選べる。
右手側のスイッチボックスはセルスタートとキルスイッチのオンオフのみというシンプルな構成。
カワサキ車らしい配慮は積載荷物固定用のバンジーフックにも見られる。ゴムバンドを引っかけやすく、テンションもシッカリとかけられる。その左側にはヘルメットホルダーも設けられている。
後方左右2箇所にあるフック。引き出し式ではない固定式ながら、バンド部分でもフック部分でもその位置と形状が引っかけ(扱い)やすくデザインされている。
シート高はちょうど800mm 。シートと車体は意外とスマートにデザインされており、ご覧の通り足付き性に難はない。

■Z900RS 諸元■
・全長×全幅×全高:2,100mm×865mm×1,150mm
・軸間距離:1,470mm
・最低地上高:130mm
・シート高:800mm
・キャスター/トレール:25.0°/98mm
・エンジン:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ
・総排気量:948cc
・内径×行程/圧縮比:73.4mm×56.0mm/10.8:1
・最高出力:82kW(111PS)/8,500rpm
・最大トルク:98N・m(10.0kgf・m)/6,500rpm
・始動方式:セルフスターター
・点火方式:トランジスタ点火
・エンジンオイル容量:4.2L
・燃料供給方式:フューエルインジェクション
・トランスミッション形式:常噛6段リターン
・クラッチ形式:湿式多板
・フレーム形式:ダイヤモンド
・懸架方式:前テレスコピック(インナーチューブ径 41mm)/後スイングアーム
・タイヤサイズ:前120/70-17/後180/55-17
・ホイールサイズ:前17M/C×MT3.50/後17M/C×MT5.50
・ブレーキ形式:前デュアルディスク300mm(外径)/後シングルディスク250mm(外径)
・ステアリングアングル (左/右):35°/ 35°
・ 車両重量:215kg
・使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
・燃料タンク容量:17L
・乗車定員:2名
・ 燃料消費率(km/L):28.5km/L(国土交通省届出値:60km/h・定地燃費値、2名乗車時)/20.0㎞/L(WMTCモード値 クラス3-2、1名乗車時)
・最小回転半径:2.9m
・メーカー希望小売価格:(キャンディトーンブラウン×キャンディトーンオレンジ)1,328,400円/(メタリックスパークブラック)1,296,000円

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