セレナe-POWER EV並みの静粛性を求めるユーザーのために、「美術館並みの静かさ」に挑戦
MotorFan / 2018年3月17日 11時5分
シリーズハイブリッド方式の日産e-POWER。ノートに続いてセレナに加わったe-POWERトレーンだが、セレナではコンパクトカーのノートとは別次元の「静粛性」が求められた。「美術館並みの静かさ」を実現するために、日産開発陣は何をしたのか? TEXT&PHOTO◎世良耕太(Kota SERA)
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日産セレナe-POWERのウリは「加速」と「燃費」と「音」だという。加速が良く、燃費が良くて、静かなクルマだということだ。加速の良さは、100kWの最高出力はもとより、発進時や低車速時などで威力を発揮する320Nmの最大トルクが利いている。
320Nmの最大トルクは、ガソリンエンジンにあてはめれば自然吸気3.0ℓ級だ。しかも、エンジンの場合はある程度回転数を高めないと最大トルクを発生しないが、モーターは理論上回転数ゼロで最大トルクを発生する。だから、アクセルペダルを踏み込むと間髪入れずにスッと加速する。これ、一度味わうとやめられない。
燃費の良さは電動パワートレーンによるものだ。セレナe-POWERはエンジンとモーターの両方を搭載しているが、エンジンは発電専用で、前輪に力を伝えるのはモーターのみである。エンジンをできるだけ効率のいい領域で使うようにし、減速時のエネルギーを電気に変換してバッテリーに蓄えることで、燃費のいいクルマに仕立てている。
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音に関しては神経質なまでにこだわった。先にノートe-POWERを出してわかったことだというが、e-POWERを求めるユーザーは、電気自動車(EV)並みの静粛性を求める傾向が強いのだという。開発する側にとっては酷な話で、「いやいや、エンジンかかるんですけど」と反論したい気分だったろう。
とはいえ、開き直るわけにはいかない。だからまず、エンジンがかかっても音が目立たないよう、セレナe-POWERはノートe-POWERより回転数を低くした。街乗りで周囲の流れに合わせて走っているようなとき、e-POWERはバッテリーに充電する目的などの要求から、唐突にエンジンが始動することがある。その際、エンジンにとって最も効率のいい回転数は2400rpm弱で、ノートe-POWERはその回転数を保って発電を行なう。
一方、セレナe-POWERは2000rpmに抑えた。一段高いギヤで運転するイメージだ。音圧レベルで言えば、およそ1〜2デシベル違うという。
「ノートe-POWERのお客様の反響を見ながら、これくらいだったらいけるだろうという手探りも含めて開発したのが、セレナe-POWERです。違和感なく『普通』に乗っていただけることを目指しました」
と、振動騒音の専門家である手島聡氏(日産自動車株式会社 Nissan第二製品開発本部 Nissan第二製品開発部 音振性能グループ)は説明する。
![遮音・吸音対策のために、コンベのエンジンとe-POWERではフロアカーペットの素材も変えている。](https://motor-fan.jp/images/articles/10003461/big_269972_201803171046490000001.jpg)
遮音・吸音対策は徹底した。フロアカーペットはフロント、センター、リヤの三分割になっている。リヤは基準車(ガソリンエンジン搭載車)と同じだ。運転席の下に位置するセンターは吸音/遮音性を徹底的に高めている。なぜなら、この下にバッテリーを搭載しており、素子などからキーンという高周波の音が出るからだ。この高周波音が室内に侵入しないよう、ゴム系の硬い材料が2層追加されている。
フロントのカーペットはエンジン音の侵入を防ぐ目的で、やはりゴム系の材料が追加されている。フロント、センター、リヤのカーペットを、ドアをノックするように叩いてみると、フロントとセンターは明らかに硬いのがわかる(その上にフロアマットが載っている)。
エンジンルームには、主に吸音材が追加されている。エンジン回転数を低く制御しているとはいえ、エンジンがかかれば音は出る。その音の車室内への侵入を少しでも弱める目的だ。コックピットモジュールを構成する部品にも吸音材を追加した。
エンジンが発する音は、エンジンルームと車室を隔てる隔壁を通じてだけでなくボンネットフードを突き抜けてフロントウィンドウ越しにも侵入してくる。そこで、遮音フイルムを挟み込んで静粛性を高めた。さらに、フロントサイドウィンドウは板厚を3.5mmから4.0mmにアップさせている。
それだけではない。ルーフには制振材を追加した。「柔らかい板はスピーカーのように音を鳴らす」(手島氏)からだ。制振材を追加し、ブルブルとふるえないようにしたわけだ。
ルーフの制振材はエンジンの音に対応したのではなく、タイヤへの対応だ。「燃費」がウリのひとつだと冒頭で説明したが、その燃費を稼ぐためにセレナe-POWERは低燃費タイヤを装着している。低燃費タイヤは転がり抵抗を低くしている。転がり抵抗を低くしようとするとトレッドは硬くなる(変形しにくくなる)ため、「ゴー」とか「ザー」という音が出やすくなる。
これらの音(一般的に120〜400Hz)を含めて広い周波数に対して反響を抑えるため、ルーフに制振材を追加したわけだ。e-POWERではフロアにアスファルトシートを追加したが、これもタイヤ起因の音対策である。
こうして音に対して細かく手当をしていくと、これまで気にならなかった音が気になるようになる。その一例が燃料タンクの中でガソリンが前後に揺れることによって発生するパシャパシャ音だ(そんな音が気になるほど静かなクルマに仕上がっているということだ)。
「開発後期に静粛性に対する目標を一気に上げたのですが、その段階で燃料タンクの音も出てきて、『これは良くないね』ということになりました」(手島氏)
パシャパシャ音を消すため、セレナe-POWERは燃料タンクにバッフルプレートを追加した。 55リッターの燃料タンク容量は基準車と変わっていない。
エンジンはかかるにもかかわらず、EV並みの静けさを実現するためにありとあらゆる音対策をしたのが、セレナe-POWERだ。その効果はあり、とくに街乗りでのエンジン停止走行時は、日産が自信を持って説明するように「美術館並みの静かさ」を体感できる。
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セレナe-POWERハイウェイスター
全長×全幅×全高:4770×1740×1865mm ホイールベース:2860mm 車重:1760kg JC08燃費:26.2km/ℓ 駆動方式:前輪駆動 サスペンション:Fストラット/コイル Rトーションビーム/コイル 発電用エンジン 形式:直列3気筒DOHC エンジン型式:HR12DE 排気量:1198cc ボア×ストローク:78.0×83.6mm 圧縮比:12.0 最高出力:62kW/6000rpm 最大トルク:103Nm/3200-5200rpm 使用燃料:レギュラー
駆動用モーター 型式:EM57 種類:交流同期電動機 最高出力:100kW (136ps) 最大トルク:320Nm 電池:リチウムイオン電池
日産セレナe-POWER ハイウェイスターV 2WD:価格340万4160円
メーカーオプション
セーフティパックB:24万3000円
(SRSカーテンエアバグシステム&サイドエアバッグシステム(前席)、踏み間違い衝突防止アシスト、インテリジェントパーキングアシスト、標識認識機能、インテリジェントアラウンドビューモニター(移動物検知機能付き)、インテリジェントDA(ふらつき警報)、フロント&バックソナー、インテリジェントルームミラー、電動パーキングブレーキ、オートブレーキホールド、プロパイロット、インテリジェントLI(車線逸脱防止支援システム)、ヒーター付きドアミラー、ステアリングスイッチ
ブリリアントホワイトパール(3P)、ダイヤモンドブラック(P)、2トーン
:7万5600円
オートデュアルエアコン+前席クイックコンフォートヒーター付きシート+ステアリングヒーター+寒冷地仕様:8万3160円
メーカーオプション合計:40万1760円
ディーラーオプション
ナビレコツインモニターパック(MM517D-L)+ETC2.0:42万2259円
フロアカーペット(e-POWER車用)(エクセレント、旧遮音・消臭機能付き、ブラック 超ロングスライド用:6万4584円
ウィンドウ撥水12ヵ月:1万1048円
ディーラーオプション合計:49万7891円
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