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SKF:ピストンシール用途に特化した特殊等級のEcopur “X-Ecopur PS”を開発

MotorFan / 2018年3月28日 12時40分

SKF:ピストンシール用途に特化した特殊等級のEcopur “X-Ecopur PS”を開発

SKFは、PTFEシールの不利を克服するべく、自社の実績あるECOPURポリウレタン材料をベースに、代替となるシール技術の開発に乗り出した。

ピストンシールは、油圧シリンダーの性能の要である。 ピストン外径の溝に取り付けられているこのシールは、シリンダーに沿って動くピストンの運動を妨げることなく、高圧の作動油を保持しなければならない。また、油圧ピストンの多くは双方向に運動するため、シールはどちらの側からの圧力にも対応しなければならない。

ピストンシールのデザインに当たっては、エンジニアは摩擦とシール性能との絶妙なバランスを維持することが求められる。シリンダーの高圧側から低圧側へ不要な作動油が漏れを起こすシールは、性能が良くない。一方で、シリンダー内壁の摩擦が大きすぎると、摩耗が早まって実用寿命が短くなる。ブローバイと呼ばれるピストンシールの明らかな不具合は、建設機械やマテリアルハンドリング設備が負荷の制御不能に陥る原因になり得るなど、運転上および安全上の重大な意味を持つ場合もある。

また、基本的な運転要件がそれほど厳しくなかったとしても、高温・高圧の作動油はシール材料に対して大きな負担であり、その他のコンポーネントが運転中に膨張したり収縮したりする原因ともなりかねないため、ピストンシールのデザインには材料面でもハイレベルなエンジニアリングが求められる。

このような要求を満たすため、たびたび選ばれる材料が、PTFEだ。 PTFEは帯電性と滑り摩擦特性が極めて低く、耐薬品性に優れているなど、この役割に適した特性を多く備えている。しかし、PTFEには重要な制限もある。この材料はとりわけ弾力性に制限があるため、PTFEシールを傷つけずに取り付けるのが困難。そのため、PTFEシールは取り付け前に特殊なスリーブで伸ばしておき、後で正しい直径に補正する必要がある。これは、設備機器メーカーやメンテナンスチームなどにとって、余計な時間とコストがかかる工程だ。さらに、PTFEの可塑性は、負荷の方向が連続的に逆転する条件下で元の形状に戻りにくい材料であるため、シール性能も制限されることになる。

このようなPTFEシールの不利を克服するべく、SKFのエンジニアチームは自社の実績あるECOPURポリウレタン材料をベースに、代替となるシール技術の開発に乗り出した。

最高のPTFEシールの性能に匹敵するようなポリウレタンシールを構築する難しさは並大抵ではなかった、とSKFの作動油シール戦略的製品ラインの研究開発長Wolfgang Swete氏は振り返る。 「ピストンとシリンダー内壁間のはみだしすき間が大きいため、作動条件全域において形状を保持できるような耐はみだし特性を十分に持つ材料が必要でした」

SKFは自社最高強度等級のEcopurポリウレタンで製造したプロトタイプシールで試験を実施したが、このシールでは要求を満たすことはできなかった。そこで、社内の材料開発・製造能力を活かして、ピストンシール用途に特化した特殊等級のEcopurを作ることにした。この新材料 – X-Ecopur PS – は、現在までにSKFが製造したポリウレタンの中で、最高の等級となっている。


新材料の耐久性を試験するため、SKFは一連の静的耐圧試験を実施した。材料サンプルを治具に取り付けて500バールのオイルで負荷をかけ、0.15 ~ 0.7mmとサイズの異なるはみだし隙間から材料を押し出す試みだ。試験サンプルは60 ~ 100º Cという温度条件下で2週間治具の中に置かれ、試験終了時にサンプルの永久変形が測定された。「X-Ecopur PSは、行った試験の全域において、現在市販されている代替品よりはるかに優れた性能を示しました」とSwete氏は述べている。

優れた材料が出来上がると、SKFチームは適切なシール形状の設計に取りかかった。これは、有限要素法を用いた総合的なコンピューターシミュレーションや、CNC工作機械を用いた迅速なプロトタイプ開発、カスタム仕様の静的および動的試験設備による物理的試験などを取り入れた、製品開発プロセスを十分に確立させている同社のエンジニアにとっては、おなじみの領域だ。

このようなプロセスを繰り返したのち、SKFはついに最終的なデザインにたどり着いた。ポリウレタン製スライドリングの外面形状が平たい「M」字形になっていて、綿密に最適化されたシールリップがふたつ備わったデザインだ。 Swete氏はさらに続ける。「密封ポイントがはっきりしたシール形状によって、平面よりも密封効果が高まります。シール性能は向上していますし、シールによって生まれる摩擦抵抗も削減できました。 また、密封力をひとつではなくふたつのエッジに集中させることで、早期不具合の原因になりかねない使用中のシールの傾きを抑制する効果が期待できます」


さらに、新しいシール群のデザインの完成には、シールエナジャイザーの動きの細かな修正も必要だった。これは柔らかいゴム部品で、ピストン溝内に装着されたポリウレタン製スライドリングのさらに内径側にあり、シリンダーの内壁にグライドリングを押し付ける役割を担う。負荷の軽いシールであればシンプルなOリングがエナジャイザーとなるが、中~重程度の負荷には特殊形状のニトリルゴムのエナジャイザーが使用される。

SKFの新デザインでは、スライドリングの両側面に通気孔を設け、エナジャイザーへの適切な与圧を確保した。これによって、圧力がかかる方向の変化に伴ってシールは速やかに位置を変えることができ、ブローバイおよびシリンダー機能損失の可能性を低減する。また、スライドリングが溝側面に対して密封する際に発生する圧力障害もシリンダーの機能損失を招きかねないので、側面の通気孔によって圧力障害の発生を抑える。

デザインの検証を行うため、プロトタイプのシールにさらに過酷な試験を実施した。400 mmの試験用シリンダーを用い、最大圧力250バール、温度80 ºCという条件下で200 km超に及ぶ上下運動を行った。試験中に摩擦と漏れが測定され、試験後はシールの測定とはみだし量や表面磨耗の精査が行われた。

「この試験によって、SKFの新しいシールが市販の代替品より優れた性能を提供することが明らかになりました」とSwete氏は言う。 実に、比較のためにベンチマークとして用意したシールの中には、試験プロセスが終了する前に不具合を呈したものもあったほどです」

このようにして、SKFは自社開発の革新的なピストンシールデザインを、幅広い油圧アプリケーションに対応できる優れた製品へと発展させた。

Oリングアクチュエータを用いた軽負荷用のLPV製品群は、製造機械など屋内の定置式機械向き。このタイプのシールは、最大圧力250バール、最大速度毎秒0.5m、温度範囲 -20 ~ 100ºCに適する。
中~重負荷用のMPV製品群は、農業用および建築用などの可動機械にあるような、より要求の厳しいアプリケーション向きとなっている。メートル寸法のハウジングに適合するサイズのMPVシールは、最大圧力400バール、最大速度毎秒1m、温度範囲-20 ~ 110ºCに適する。
3番目のタイプのシール群(呼び番号DPV)はMPV製品群と動作仕様は同じだが、インチ系のハウジング用となっている。

Swete氏は最後に次のように述べている。「満足しているのは、その他のポリウレタン製代替品より長持ちするピストンシールを開発したことだけではありません。 優れたPTFEシールと少なくとも同様の性能を持ち、さらに、素早く簡単に取り付けられるという、機器メーカーやメンテナンス担当の皆さまに喜んでいただける利点も付加することができました」

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