CFRPの新成形技術は”真空”がキーワード 東レの新成形技術
MotorFan / 2018年3月30日 17時55分
東レは、炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRP)の成形方法において、寸法精度の向上と省エネの両方を実現可能な新規成形技術を開発。今後、この新技術の実証を進め、省エネかつ生産性向上が求められる航空機用途をはじめ、自動車、一般産業用途向けCFRPへの幅広い展開をはかり、CFRPの需要拡大を推進していく。
通常のCFRPは、オートクレーブと呼ばれる高温圧力釜やオーブンを用い、所定形状の金型上にプリプレグ(シート状中間素材)を配置し、温風で加熱することによりプリプレグの樹脂が硬化、成形される。温風加熱は雰囲気加熱であるため熱伝達が悪く、また熱容量の大きい金型に熱を奪われるため昇温に時間を要し、成形時間が長くなるという課題がある。また、部位によって厚さが異なる大型・複雑形状の部材では内部温度の制御が難しく、残留応力分布が不均一となるため、硬化後の部材が大きく変形するという問題があった。そのため、航空機主翼などの最終製品組立時にはシムと呼ばれる充填材の加工、取り付け等に膨大な労力が必要で、部材成形に要する以上に長い作業時間が必要になっていた。
これに対して今回開発した成形技術は、所定数の面状ヒーターを金型表面に配置し、真空圧下において部材への接触加熱を用いて加熱の効率化による省エネを実現。さらに各ヒーターを個別制御して各部位に最適な温度分布を付与、残留応力の分布を均一化し部材をより設計通りに近い形状/寸法に成形でき、これによって上記の問題が解消して組立時の労力及び作業時間の低減が期待できる。部材の形状や寸法にもよるが、従来のオートクレーブやオーブンでは、航空機向けなどの大型CFRP部材の成形には約9時間を要しており、これに対して今回開発した成形方法は型の占有時間を4時間程度まで短縮する効果を見込む。また、空気などの加圧・加熱媒体が不要になることで、従来の成形方法に対して約50%の省エネ効果、さらに寸法精度の向上も見込まれ、シムを用いる組立時の修正作業時間の削減効果も期待できるという。
この成形技術の加熱システムを有効に制御するため、東レは愛媛大学と東京理科大学との共同研究を通じて部材の変形予測とヒーター温度最適化シミュレーションをそれぞれ確立。両者を融合することによって部材の成形時間と寸法不良を最小化できる加熱条件設計プログラムも合わせて開発した。現在は試作成形装置を導入し、実証試験を進めている。
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