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普通免許で排気量16リッター(!)の”スカニア”を運転してみた

MotorFan / 2018年4月19日 18時10分

普通免許で排気量16リッター(!)の”スカニア”を運転してみた

スウェーデン発祥で、トラック、バス、産業用エンジンなどを生産する”SCANIA(スカニア)”。日本では知る人ぞ知る高級トラックメーカーだが、そのスカニアの新シリーズ「ネクスト・ジェネレーション・スカニア」の各ラインアップがついに日本導入を開始。4月某日にJARIのテストコースで試乗会を開催した。普通免許しかもたないレポーターが大型トラックをインプレッションしてみる。

 物流の要、トラック業界は人手不足が顕著となり、運送会社はあの手この手でドライバーの確保に努めているという。そんな現状において、運送会社がドライバー募集時の面接で使う口説き文句に「ウチならスカニアに乗れるよ?」というのがあるらしい。寡聞にして恥ずかしながら初めて聞くブランド名”スカニア”。その語感から北欧を連想したが、果たせるかな120年以上の歴史をもつスウェーディッシュカンパニーだった。そして見覚えのあるグリフィンのエンブレムは、今は亡き自動車メーカー“サーブ”と合併していたときの名残りだとか。そのスカニアを日本国内で展開するスカニアジャパンが、新たなラインアップである「ネクスト・ジェネレーション・スカニア」の日本導入を始め、メディア試乗会を開催したので訪ねてみた。

 普段トラックをしげしげと見つめる機会などなく、正直言ってどこのトラックも同じに見えると思っていたが、まるで鎧のような凝った造形で押し出し感を高めたフロントグリルはスカニアだけの個性的なプロフィールとなり、一発で見分けがつく。この際立ち感は、メルセデス・ベンツのスリーポインテッドスターや、ロールス・ロイスのパンテオングリルにも通じる強烈なアイデンティティだろう。なるほど、このスタイリングなら、スカニア乗りたさに職場を決める人が出てもおかしくない。クルマ好きなら共感できる部分だ。しかし、スカニアのアピールポイントをエクステリアのみに求めるのは早計である。もっとも大きなリクルートポイントは、その乗り心地にあった。

SCANIAを飾るエンブレムは王冠をかぶったグリフィン

 レポーターはいわゆる普通自動車免許しか所持しておらず、本来ならスカニアがリリースする各大型モデルを運転する資格はない。しかしここはクローズドの試乗会場。大型免許の有無は関係なく運転可能な環境だ。生まれて初めての大型トラック運転経験である。因みに、キャブ(ドライバーが乗りエンジンが搭載されている車体前部)と荷台がわかれているタイプは「トラクター」と呼ばれ、試乗車はSシリーズとRシリーズのトラクター。Sシリーズはスカニアのフラッグシップであり、試乗したS650はさらにオプションのハイルーフを採用して車内はもっとも広い。コクピットによじ登って車内を眺めると、ドライバーオリエンテッドに設計されたインテリアの豪華さに目を見張る。直線と曲線が合理的かつエレガントに組み合わされたデザインはどこかボルボをも連想させ、温もりを感じ飽きのこないスカンジナビアデザインの妙に溢れている。細かくドラポジを調整できるシートは絶妙なクッション感覚で、さすが大陸を股にかけて走る長距離輸送車、少し座っただけでも長時間移動時の快適性は万全だろうと予想できた。

こちらはオプションの木目調パーツを用いたR450 ハイラインのインテリア。多彩な仕様が用意され好みの組み合わせを選択できる

 例えクローズドコースで隣にインストラクターが控えているとはいえ、初めての大型車の運転に緊張度はMAXだった。なんせ最高出力650HP/最大トルク3300Nmを発生する16.35リッターV8ディーゼルを搭載したスカニアS650の試乗は、荷台に重機を載せて総重量70トン以上の移動となる。下手にアクセルを踏んだり、ハンドルさばきを間違えたら大惨事に陥るのではと、正直、試乗を辞退しようかという思いすらよぎった。それほどに目の前にしたトラクターの巨体は、いざ自分が運転する対象としてみると手に負えない感がバリバリだったのだ。

 覚悟を決めてエンジンをかける。3ペダルながらクラッチオンデマンドを採用する12速+2速のトランスミッション“オプティクルーズ”はスタート時にクラッチ操作が不要だからアクセルを恐る恐る踏む。全然進まない。あれ? 「もっと思い切り踏んでいいですよ、クルマが重いですから」とインストラクターに声をかけられ、強く踏み込む。スカニアS650はゆっくりと動き出す。最高出力は1900rpm、最大トルクは950〜1350rpmで発生するため、トランスミッションは小刻みにシフトアップしていくが、変速ショックは少なくストレスはまったく感じない。30km/hくらいでゆっくり走ったとはいえ、総重量70トン以上を引っ張る影響か、多少ステアリングがセンシティブに感じることもあったが(乗り比べたスカニアR500は総重量40トン強を引っ張ったがステアリングはド安定)、こと走らせるだけなら終始安定した重厚な走行フィールで、乗用車の運転と大きく変わることはなかった。もちろん、取り回しをせよと言われたら全力でお断りするが。

 一般的な乗用車と異なるのは補助ブレーキ「リターダー」の存在だ。スカニアは5段階に効き具合を調節可能な流体式リターダーをもち、オート状態でもアクセルオフ時や下り勾配で自然に効いてスムーズな挙動と制動に貢献する。スカニアオーナーから絶大な支持を得ているというのも納得できる効果を実感した。

 2台の試乗を終えて強く思ったのは「トラックってこんなに乗り心地が良くてストレスなく運転できるのか?」ということ。乗用車のドライバーから見て、トラックの運転は特別な技術が必要で大変な仕事だと思うし、それは今でも間違っていないと思う。しかし、その「特別な技術」や「大変」さは、多少なりとも技術でカバーできたり軽減できるものではないか。スカニア以外にトラックを運転した経験は皆無だから「こんなのトラックなら常識レベルだぜ!」と言われれば返す言葉はないけど、少なくとも自分で経験したスカニアの乗り心地は、いわゆる各国乗用車メーカーのハイアッパークラスに劣らぬものだった。また、スカニアを導入したユーザーの感想もスカニアジャパンのwebを経由して見られるが、トラックを知り尽くしたプロの評価は総じて高い。選ばれる理由には良好な燃費など、ランニングコストの低さもあるという。

 初めて覗いた大型トラックの世界は、シンプルだが奥が深いテクノロジーの宝庫でもあった。今後もスカニアをはじめとした大型車両には注目していきたいが、まずは今回のスカニア試乗会の詳細を、5月15日発売の『モーターファン・イラストレーテッド Vol.140』にてご確認いただきたい。

排気量1万2742cc、直列6気筒ディーゼルエンジンを搭載し、最高出力450HP/最大トルク2350Nmを発揮するスカニア R450。排気量と最大トルクの数値はまさに乗用車と桁違い

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