三菱『歴代デリカのすべて 連載第1回』初代デリカ誕生の物語
MotorFan / 2018年5月2日 18時35分
2018年はデリカ誕生50周年のアニバーサリーイヤーである。4月25日には三菱自動車東京本社にて、デリカD:5の改良と合わせてアニバーサリーに関する発表会が行われた。そんな三菱デリカの五世代──50年に渡る歴史を振り返ってみたい。第1回はもちろん初代デリカを取り上げる。
「デリバリーカー」……始まりはトラックから
1968年7月1日。これが初代デリカの記念すべき誕生日だ。車名の「デリカ」は「デリバリー・カー(DELIvery CAr)」に由来し、「様々な道路状況において、確実に乗員や荷物を目的地まで運ぶクルマ」という理念は、誕生以来50年間貫かれている。
今でこそレジャーイメージの強いデリカだが、最初に登場したのは600kg積みのトラックだった。
というのも、1960年代の日本は高度経済成長の真っ只中にあり、東京オリンピック(64年)、東海道新幹線開業(64年)、東名高速道路建設(62年〜69年)を代表とする巨大事業次々と進行。65年から70年には「いざなぎ景気」と呼ばれる好景気もあり、1968年の国民総生産(GNP)は西ドイツ(当時)を抜いて世界第2位に躍り出ている。それだけに商用車需要は大きく、66年のマツダ・ボンゴ、67年のトヨタ・ハイエース、68年の三菱デリカ、69年の日産(ダットサン)サニーキャブ/チェリーキャブと、キャブオーバータイプの小型トラックが次々とデビューしていくことになる。
その中にあって、デリカは同クラス初の3名乗車のキャビンとカーブドガラスを用いたソフトなスタイルが特長となっていた。エンジンにはコルト1100に搭載されていた1.1L 直列4気筒OHVガソリンエンジンのKE44型(58ps)を採用している。
![デリカトラック(1968)](https://motor-fan.jp/images/articles/10004059/big_337993_201805021742280000001.jpg)
「コーチ」の登場……キャブオーバーワゴンへの道
当時のキャブオーバートラックはワンボックスボディのバン需要も大きく、トラックからスタートしたデリカもデビュー翌年の1969年にはワンボックスボディで500kg積みの「ライトバン」「ルートバン」と、サードシートを備え9名乗車とした「コーチ」をラインナップに加える。このコーチの登場が、「スターワゴン」「スペースギア」「D:5」と続くキャブオーバーワゴンのルーツとなっていくことになる。
このワンボックスボディのデリカは、当時クラス最大の室内空間を実現したほか、丸みを帯びたスタイルにアイボリーのモノトーンと、グリーンのスカートを配したツートーンの2種類のボディカラーを用意。室内は黒基調で誂え、ラジオ、ヒーター、レザーシートも装備していた。
![デリカバン(1969)](https://motor-fan.jp/images/articles/10004059/big_337995_201805021744000000001.jpg)
![トヨタ・ハイエース(初代)](https://motor-fan.jp/images/articles/10004059/big_337996_201805021745420000001.jpg)
![マツダ・ボンゴ(初代)](https://motor-fan.jp/images/articles/10004059/big_337996_201805021745420000002.jpg)
![ダットサン・サニーキャブ](https://motor-fan.jp/images/articles/10004059/big_337997_201805021747040000001.jpg)
![日産チェリーキャブ](https://motor-fan.jp/images/articles/10004059/big_337997_201805021747040000002.jpg)
新エンジンの搭載とマイナーチェンジ
1971年11月に、新開発の1.4L直列4気筒OHVのネプチューンエンジンの4G41型(86ps)を搭載し、性能を大幅に向上。積載量は750kgとなり、車名も積載量にちなみ「デリカ75」となった。
74年にはマイナーチェンジを実施し、4灯式ヘッドランプの採用、三角窓の廃止などフロントまわりを中心にデザインが大幅に変更されイメージを一新している。それとともに、車名も「デリカ1400」シリーズとなっている。
一方で、75年にコーチの廃止。76年にロングホイールベース仕様の1t積みトラックの追加。77年の大幅改良(カラーリング、リヤバンパーまわり)を経て、79年6月にフルモデルチェンジされ二代目へとバトンタッチされる。
初代デリカは68年〜79年の11年間に及ぶモデルライフで、トラック、バン、コーチを合わせて20万8524台が登録され(フルモデルチェンジ後に登録された台数を含む)、年間最大登録台数は75年の年間2万5880台であった。
![デリカ75コーチ(1971)](https://motor-fan.jp/images/articles/10004059/big_337999_201805021748310000001.jpg)
![デリカ75コーチ(1971)](https://motor-fan.jp/images/articles/10004059/big_338000_201805021748520000001.jpg)
![デリカ75コーチ(1971)](https://motor-fan.jp/images/articles/10004059/big_338000_201805021748520000002.jpg)
![デリカ 1400コーチ(1974)](https://motor-fan.jp/images/articles/10004059/big_338001_201805021749210000001.jpg)
レジャービークルの萌芽……「キャンピングバン」
1960年代の高度経済成長により所得の向上が続き、自動車は新三種の神器(または3C)であるカラーテレビ(Color terevision)、クーラー(Cooler)、カー(Car)のひとつとして普及が進む。さらに、62年から建設が始まった東名高速道路が69年に全線開通するなど、モータリゼーションは着実に進行していた。
生活に余裕が生まれたことで「余暇」に対する意識が高まり、レジャーブームが到来。スキーや海水浴、旅行などが人気を集めるとともに、レジャーランドやゴルフ場が相次いで建設されたのも60年代の出来事だ。
そんなレジャーブームと軌を一にするモータリゼーションの流れにより、三菱自動車は72年にデリカ75バンをベースに、ポップアップ式ルーフを備えた「デリカキャンピングバン」を発表。オートキャンプ時代の幕開けに伴い、普段は業務用に、休日はキャンピングセットを取り付けてることで1台で仕事と余暇をこなせるクルマとしてアピールしている。キャンピング用にルーフアッセンブリー、上段ベッド、ハンモック、カーテンを標準装備。オプションとして下段ベッド、キッチン台セット、ガスレンジも用意しており、オートキャンプを十二分に楽しめるだけの装備が特長となっている。
ポップアップルーフはキャンピングカーの一形態として現在も人気のスタイルであり多くの架装車が世に出ているが、デリカキャンピングバンはその先駆けとも言えるのではないだろうか?
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10004059/big_338003_201805021750070000001.jpg)
![デリカキャンピングバン(1972)](https://motor-fan.jp/images/articles/10004059/big_338004_201805021751010000001.jpg)
![デリカキャンピングバン(1972)](https://motor-fan.jp/images/articles/10004059/big_338004_201805021751010000002.jpg)
デリカ・コーチ デラックス(1969)
全長×全幅×全高:3880mm×1540mm×1795mm
ホイールベース:2120mm
トレッド:(前)1250mm/(後)1230mm
室内長×室内幅×室内高:2765mm×1365mm×1185mm
最低地上高:175mm
車両重量:995kg
乗車定員:9名
最小回転半径:4.4m
エンジン型式:K44型 水冷直列4気筒OHV
ボア×ストローク:73mm×65mm
排気量:1088cc
圧縮比:8.5
最高出力:58ps/6000rpm(グロス)
最大トルク:8.2kgm/3000rpm(グロス)
使用燃料/タンク容量:ガソリン/45L
燃費:—
駆動方式:FR
トランスミッション:4速MT
ステアリング形式:ボールナット
ブレーキ:(前)油圧内部拡張式ツーリーディング/(後)油圧内部拡張式リーディングトレーディング
サスペンション形式:(前)ウィッシュボーン・ボールジョイント式/(後)半浮動式
フレーム形式:梯子型
タイヤサイズ:5.50-13-6PRLT
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