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【初試乗】全開だからこそ分かった新型ヴァンテージの実力!

MotorFan / 2018年5月7日 8時0分

【初試乗】全開だからこそ分かった新型ヴァンテージの実力!

これまでのアストンマーティンとは一線を画する走行性が話題の新型ヴァンテージ。その真価をジャーナリスト兼レーシングドライバーの佐藤久実がテストした。ポルトガルのサーキットで感じた真実をレポートする。 REPORT/佐藤久実(Kumi SATO)

過敏な動きこそないが、操舵に対してリニアに反応する。

新型ヴァンテージの試乗ステージとなったのは、ポルトガルのアルガルベサーキット。アップダウンに富み、さらに上りながら下りながらの高速コーナリングもあるトリッキーなコースレイアウトが特徴だ。インストラクターが助手席に乗る20分の完熟走行の後は、完全なフリー走行の時間が十分に設けられていた。

スポーツ/スポーツプラス/トラックの各ドライブモードがあり、ここは迷わずサーキットだから「トラック」を選択。まずは、ESPをオンのまま走行を開始した。ギヤもDレンジ固定。ひたすらコースの完熟と新型ヴァンテージの性格を確認することに徹する。

そして、ESPスポーツを経て電子制御を完全にオフにすると、ヴァンテージの本質が見えてきた。ESPをオンの状態で走っても挙動が急激に抑え込まれたり、立ち上がり加速で減速感を感じて邪魔になるようなシーンはなかった。しかし、オフにしてその制御の緻密さに気づいた。そもそもヨーの出方が全然違うのだ。


コーナー進入時は、急な操舵や舵角が大き過ぎるなどの要因でヨーモーメントが大きくなるとスピンモードに入る。そして、立ち上がりでは舵角が残った状態で過剰なトラクションをかけるとリヤがスキッドする。だが、ESPをオンにしていると、そもそもヨーの動きをあまり感じない。つまり、抑え込む以前に安定させた状態を保ち、荷重移動こそあるが、“タイヤの限界内でステアリングの舵角に忠実に曲がる”という印象だ。

ところが。ESPスイッチを長押しし、”完全オフ”にすると、コーナー進入時のステア操作とともにヨーモーメントを如実に感じる。というのもドライバーがヨーセンターに近いところに座るパッケージングとなっているため、この動きが手に取るように感じられるのだ。そしてロールが発生し、ノーズが入って向きが変わる、という一連の動作につながる。適度なステアリングギヤ比により、過敏な動きこそないが、操舵に対してリニアな反応を示し、タイトコーナーでもアンダーステアはほとんど見られない。


リアルスーパースポーツカーであることを確信!

コーナー立ち上がりでは、しっかりとトラクションがかかる。510ps&685Nmという巨大なパワー&トルクをリヤの2輪のみで受け止めるが、適切なアクセルワークであれば、オーバーステアに神経質になることもない。これはアストンマーティンとしては初採用となるEデフのベネフィットだろう。LSD効果のみならずトルクベクタリング効果も発揮するため、舵角が残る旋回加速時でさえ、安定して前に進む。

試しにタイトコーナーの立ち上がりで過剰にアクセルを踏み込むとリヤがスキッドしたが、カウンターステアで瞬時に収束した。ヨーモーメントの小ささと、ボディの軽さのなせる技だ。

比較的低速域から力強い加速を見せるが、その一方で高回転域になると、抜けるような伸びは感じられない。とはいえ、これもあくまで体感的な印象に過ぎない。おそらく、ダウンフォースによりクルマが安定しているため、スピード感がないのだろう。メインストレートでさえ、約250Km/hに達するストレートエンドまでスピードメーターの数値が滞ることはなかったのだから。


一方、高速コーナーでもその安定性の高さを実感できた。空に向かってアクセルを開けていくような上りのブラインドコーナー、あるいはジェットコースターのような、下ってボトムからのコーナリングといったシーンでは、はじめのうちこそアクセルが戻ったが、慣れるとともにフラットアウトで抜けられるようになり、それとともに信頼関係が増すかのように安定性も増した。

日常的なユーザビリティも考慮し、8速ATが搭載され、操作性に優れた大きめのパドルシフトが装備される。シフトタイミングの呼吸を合わせるのに若干の時間を要したが、慣れれば小気味良い操作感を味わえた。


そして、エンジンパワーに匹敵する安心感あるストッピングパワーも有する。ストレート後の下りのハードブレーキング時のみ、やや不安定感があったが、ABSを作動させつつ堪えていると安定性を取り戻す。

何より、20分×3本のハードなドライビングでも音を上げず、制動距離もさほど変わらなかったのに驚かされた。タイヤも同様だ。足元を支える、専用設計されたピレリPゼロは熱ダレも見られず、最後まで頼もしいグリップ力を発揮した。

サーキットを電子制御に頼ることなくフリー走行できたことで、新型ヴァンテージは、リアルスーパースポーツカーであることを確信した。だが、走り慣れないサーキットゆえ、その絶対的な速さは測れない。帰国後、日本のサーキットで是非とも走らせてみたいと思う。


ASTON MARTIN VANTAGE

【SPECIFICATIONS】
アストンマーティン ヴァンテージ
■ボディサイズ:全長4465×全幅1942×全高1273㎜ ホイールベース:2704㎜ ■車両重量:1530㎏(軽量オプション装着車) ■エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ 総排気量:3982cc 最高出力:375kW(510ps)/6000rpm 最大トルク:685Nm/2000〜5000rpm ■トランスミッション:8速AT ■駆動方式:RWD ■ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン(電動式) ■サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク ■ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ:前255/40ZR20 後295/35ZR20 ■環境性能(EU複合) CO2排出量:245g/km 燃料消費料:10.5ℓ/100km ■パフォーマンス 最高速度:314km/h 0→100km/h加速:3.6秒

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