今年で50周年を迎える名車、ベスパ・プリマベーラ。その歴史を振り返る
MotorFan / 2018年5月8日 17時50分
ベスパの主力モデルであるプリマベーラが今年でデビューから50周年を迎えている。50ccと125ccの2バージョンあったり、途中にブランク期間を挟んでいたりと紆余曲折はあるものの、世界的に人気を誇ったモデルであることは紛れも無い事実である。 TEXT●大家伝(OYA Den)
50年という長寿のプリマベーラ
現在新車で購入できるプリマベーラがどんなモデルなのか、まずはそこからおさらいしてみよう。実は先代モデル(125ET3プリマベーラ)が生産を終えてからしばしのブランクを挟み、2013年に小ぶりなサイズが特徴のスモールシリーズ50周年の目玉として復刻したモデル。それまでのハンドチェンジ方式から現代的なオートマチックスクーターとして生まれ変わったことも話題であった。
とくに近年のフラッグシップモデルである946のデザインエッセンスを随所に取り入れ、ベスパのアイデンティティを感じさせながら新時代ベスパのルックスを実現している点は見逃せない。またメットインやフロントトランクといったユーティリティの充実も、国産モデルに対抗できるパッケージとしてユーザーから好評価を受けている。
そんなプリマベーラの大元となるのが1967年にミラノショーで発表され、翌1968年から市場に出回った初代125プリマベーラだ。この初代プリマベーラ登場の背景には、当時の新規制に合わせてピアッジオ(ベスパの製造メーカー)が新規投入したベスパ50まで遡る必要がある。
ベスパ50のデビューは1963年。当時の規制では50ccなら免許の必要がなく(年齢制限あり)、50cc超の2輪車にはナンバープレートを義務化するというものだった。そこで若者をターゲットとするエントリーモデルとして、ピアッジオはベスパ50を投入。免許なしで乗れるということで若者たちはこぞってベスパ50を求めたが、同時にステップアップモデルのニーズも高まった。そこで125ヌオーバという125ccモデルが1965年に登場。その後継機種として、1967年にはさらに強力なパワーユニットが与えられた125プリマベーラが発表された。
この初代125プリマベーラはマイナーチェンジを繰り返しながら1983年まで生産が続けられたが、1976年になると格段に動力性能を高められた125ET3プリマベーラも登場する。なので1976年から1983年までの期間は世界的に2つのプリマベーラが併売されていたことになる。
ただし日本においてはもう少し複雑だったりする。1963年登場のベスパ50を起点とするスモールシリーズの人気が高かったため、当時の輸入元だった成川商会がピアッジオに対して日本仕様の再生産を交渉。その結果、異例中の異例として125ET3プリマベーラの再生産モデルが1987年から2000年の間だけ日本限定でデリバリーされていた。
そうした理由で日本だけはプリマベーラの流通期間が長めではあるのだが、どちらにしろ2013年まではプリマベーラ不在という空白期間であった。
さて、そんな125プリマベーラの系譜が復活したことを世界中のベスパフリークが歓迎したのは言うまでもない。先に触れているように現行プリマベーラはオートマチックスクーターに生まれ変わっているが、125ccと50ccをラインナップすることで現代版スモールとして、かつてのスモールシリーズが担った「ベスパ入門」的なポジションであることに変わりはないのである。
当時の広告2種に書かれたキャッチコピーは「プリマベーラならできる」というもの。つまり「ベスパ50からプリマベーラにステップアップすると、あれもこれもできるよ」というニュアンスだ。実際にタンデムが禁止だった50ccとは異なり、タンデムできて、その際もパワーに余裕があるなど、若い世代を中心に「プリマベーラに乗りたい」と思わせるに十分な魅力を秘めていたといえる。
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