旭化成、「グリーン水素」実証プロジェクトを始動
MotorFan / 2018年5月9日 11時55分
旭化成のヨーロッパ統括会社である旭化成ヨーロッパは、ドイツ連邦共和国NRW州ヘルテン市にある水素関連技術開発拠点「h2herten(NRW州ヘルテン市に設立された水素シティ)」にて、風力模擬電源を使ってアルカリ水から水素を生成する「グリーン水素」の実証プロジェクトを開始した。
近年、水素はエネルギー貯蔵の分野だけでなく、自動車の代替燃料としても関心が高まっている。そうした状況でヨーロッパ、特にドイツ連邦共和国では2022年までに原子力エネルギーを廃絶するとして、変動する再生可能エネルギー源からの電力供給の高シェア化やCO2削減に対する意欲的な目標を掲げており、必然的に信頼性の高い蓄電技術が強く求められている。
旭化成は、世界26カ国、126カ所の生産拠点で使用されている食塩電解システムのメインサプライヤーであり、この技術をベースとして再生可能エネルギーなどの変動電源に適したアルカリ水電解システムを開発。本システムはエネルギー転換効率に優れ、10MWまでの大型化が可能であるため、単一装置で大量の水素を生産できる。既に第一弾として、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)による技術開発支援のもと、神奈川県横浜市において10MW級の大型アルカリ水電解システムを想定した長時間の水素製造実証プロジェクトに成功している。
本プロジェクトは、ヨーロッパにおいて再生可能エネルギー源から供給される電力を使用して「グリーン水素」を製造する、水素製造プロジェクトの第二弾。NRW.INVEST(NRW州経済振興公社)の協力のもと、水素関連技術開発拠点「h2herten」と共同で、大規模な「グリーン水素」製造のためのアルカリ水電解システムの開発に着手する。
また、旭化成ヨーロッパは、2017年11月14日に「ALIGN-CCUSプロジェクト※」に参加することを発表しているが、このアルカリ水電解システムはCO2を再利用する手法のひとつで、同時にCO2排出量を削減できる技術だ。同社は「ALIGN-CCUSプロジェクト」において産業界での一貫したCO2回収・転換プロジェクトの設計、建設、運用に重点を置くワーキングパッケージ4のメンバーであり、ヨーロッパのパートナー企業・機関と協力してCO2の再利用、排出量の削減に貢献していく。
ヘルテン市長 Fred Toplak 氏のコメント
「水素関連技術の開発拠点『h2herten』は、アルカリ水電解システムを構築し統合するための理想的な環境です。旭化成ヨーロッパとの協業は、未来のエネルギー問題解決に取り組む企業との素晴らしい事例であり、今後の『h2herten』のさらなる発展に繋がるものと考えています。」
旭化成ヨーロッパ 堤 秀樹社長のコメント
「新しい蓄電技術とクリーンエネルギーの生産システムに対する需要の高まりにともない、ヨーロッパのエネルギー業界は劇的に変化しています。当社グループのアルカリ水電解システムは、そのニーズに対応可能な技術です。私たちは強力な現地パートナーである『h2herten』と協力して、この課題解決に貢献できることを誇りに思います。」
※「ALIGN-CCUSプロジェクト」
ヨーロッパにおける国際的な31の研究機関と企業とのパートナーシップで行なう、CO2回収、利用および貯蔵(CCUS:Carbon Capture, Utilisation and Storage)に関するプロジェクトであり、EUと参加国(ノルウェー、イギリス、ルーマニア、ドイツ、オランダ)からの補助金を活用する。2017年から2020年までの3年間で、6つのワーキングパッケージに分かれ、CO2回収技術の最適化・コスト削減、大規模CO2輸送、オフショアでの安全なCO2地下貯蔵、CO2活用技術の開発、CCUSの社会的啓蒙のサポートを検討している。
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