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ニュルブルクリンク24時間レース2018に参戦したスバルのディーラーメカニック。その厳しい世界で感じたこととは?

MotorFan / 2018年5月17日 11時35分

ニュルブルクリンク24時間レース2018に参戦したスバルのディーラーメカニック。その厳しい世界で感じたこととは?

 2018年5月13日、第46回ADACチューリッヒ24時間レース(ニュルブルクリンク24時間レース)がドイツ・ニュルブルクリンクで開催された。日本から参戦したスバル/STIのWRX STIはカルロ・バンダム/ティム・シュリック/山内英輝/井口卓人の4人で挑み、総合62位・SP3Tクラス優勝という結果になった。その走りを支えたメカニックの中にはディーラーメカニックも含まれており、そのディーラーメカニックがレースの世界で感じたことに迫る。


 今回のニュルブルクリンク24時間レースでは予選時にパワステ関連のトラブルが発生しパーツを交換、また決勝ではスタートしてすぐにまたもやパワステ関連のトラブルが発生してしまった。予選の時に起きたトラブルとは別のトラブルだったが、同じような箇所から続けてトラブルが発生してしまった。
 またラスト1時間というタイミングでエンジンが動かなくなるトラブルも発生。これは日付けが変わる頃から降り始めた雨の影響で、20時間が過ぎようというタイミングで濃霧が発生し、コースが全く見えない危険な状況になってしまった。そこでレースは一旦中断する訳だが、その時に雨にさらされたマシンに水が溜まり、電気系のトラブルを引き起こしてしまった。思いもよらない部分でのトラブルだった。なんとか修復し残り15分でコース復帰し、かろうじてチェッカーを受けてクラス優勝を果たす事になった。メカニックが何度もイレギュラーなトラブルを解決して優勝を手に入れた。


 そんなスバル/STIは2008年からWRX STIでニュルブルクリンク24時間レースに参戦している。メカニックやエンジニアはSTIの社員で、普段はレースマシンの開発やデータ解析、市販車に装着するSTIパーツの開発などを担当している。SUPER GTにもSTIのメカニックやエンジニアは参戦しているが、レース専門のメンテナンスガレージとは違い、通常業務と並行しながらレース用のエンジンやシャシー、空力などを開発している。


 レースとは常に変化が起き、1分1秒が大きくレースに左右する。そのような特殊な環境に身をおくことにより、レース現場で得た知見を普段の整備に役立て人材育成を行うために、全国のディーラーメカニックを派遣する取り組みを1990年からスバルは行っている。今回のニュルブルクリンク24時間レースにも、SUBARU一級サービスマンの資格を持つ、北陸スバル自動車の中山宏幸、福島スバル自動車の圓谷(つむらや)謙太、名古屋スバル自動車の田邉裕章、宮城スバル自動車の大久保良平、青森スバル自動車の川口清孝、東京スバルの磯部圭人の6人が厳しいレースに挑んだ。


 その中で宮城スバル自動車の大久保良平は今年26歳の一番の若手だ。慣れない環境の中にあっても仲間とともにチームに加わり率先して自分の役割と仲間のサポートに回っていたのが印象的だ。


ーー車との関わりはいつから?

 物心ついた時から車が好きでした。小さいころにはラリーを見ていて、純粋に車のかっこよさなどに憧れていました。18歳になってすぐに免許を取りラリードライバーのなりたいと思っていました。それでラリーをするには自分で車を手足のように操れないといけない。ということでドリフトを練習しました。そうしたら自分である程度の整備ができないといけない、ということに気付き整備の勉強を始め、ラリードライバーは無理かもしれないと分かったので整備の方に進みました。


ーー今回参戦した理由は?

 ドリフトやレースも参加するなど競技が好きなんです。メカニックですけど、世界で戦うレースに行くことができる。本物のレースの世界を知ることができる。こういう機会があるならばチャレンジしてみようと思ったのがきっかけです。


ーー予選から決勝前までの準備期間はいかがでしたか?

全国もディーラーから集まったメンバーなので、最初は遠慮するところや譲り合いなどもありましたが、とにかく練習時間が限られており、譲り合っていたら時間がどんどん無くなっていってしまう。そこでチームに迷惑をかける訳にはいかない。ディーラーメカ同士で話し合って次にステップに行けるようにしました。


ーー実際にレースに関わってみていかがでしょうか?

実際のプロドライバーはカッコイイですし、走っている姿も楽しそうで良いですね。メカニックも世界から注目を浴びていると感じられ、とても嬉しかったです。という反面、普段の前準備をしっかりしていないとルーティーンのピットワークもちゃんとこなせない。ましてやイレギュラーなできごとに素早く対応できないので、いかに普段の準備が大事なのかが分かりました。


ーー時間レースではどのようなことを担当しますか?

 主にタイヤの温度のマネージメントやブレーキパッドの交換を担当しました。タイヤウォーマーを使ってのタイヤ温度の管理をSTIの方に教わって、適切な温度でタイヤを供給できるようにしていました。他に手が空けば仲間のサポートに回るのが今回の担当です。


ーー24時間レースを終えてみていかがでしょうか?

 24時間緊張しながらいるのは体力的にツライ部分はありました。マシンに対しては今回イレギュラーなトラブルが多く出てしまい、前もって準備が大事と分かっていたにも関わらず、十分な対応ができない部分もありました。その点は反省すべきところだと思います。


ーー今回の参戦で今後役立つことは?

自分のモチベーションが上がるのはもちろんです。整備の部分はレース車両もお客様の車を扱うのも共通しています。整備の質やスピードを上げて、必要な整備を時間管理がなされた中で仕上げる。そういう時間管理の部分や、普段のメンテナンスでもダブルチェックを行いますが、そういった部分でのコミュニケーションなどにもこういう体験は活きてくると思います。


ーーところで今は何に乗っていますか?

 サンバーに乗っているのですが、自分が入社して手に入れるころには今のサンバーになっていて、純粋なスバルサンバーでは無いんですね、、、しかし丸目インプレッサが好きなので、手に入れたいとは思っています。やっぱりその辺はラリーが好きだったことが影響しているんですかね?(笑)



彼のような若手が参戦しレースの世界の厳しく激しい整備を知ることで、その事を地元に帰って仲間に話す。そして次の人材へ繋がっていく。これがスバル目指している人材育成なのかもしれない。と感じられたニュルブルクリンク24時間レースだった。
(文・写真/雪岡直樹 Naoki Yukioka)

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