未加工面なし。一切の妥協がないフラッグシップのクランク [人とくるまのテクノロジー展2018横浜]
MotorFan / 2018年5月23日 21時30分
GPマシンを公道で走れるようにするというコンセプトと、21,900,000円という圧倒的なプライスでも話題を集めた「RC213V-S」のクランクシャフトが、クランクシャフト加工のスペシャリストとして知られるユアサ工機のブースに展示されていた。 ●TEXT&PHOTO:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)
2013年・2014年のFIMロードレース世界選手権(以降 MotoGP)のMotoGPクラスにおいて2連覇を達成した競技専用マシン「RC213V」の一部仕様を変更し、一般公道での走行を可能とした「RC213V‐S」。そのクランクシャフトが、クランクシャフト加工のスペシャリストとして知られるユアサ工機のブースに展示されていた。同ブースで展示されているクランクシャフトは、どれも特別な製品であったが、「RC213V-S用クランクシャフト」は、一目で分かるほど異彩を放っていた。
![ホンダRC213V-S(PHOTO:HONDA)](https://motor-fan.jp/images/articles/10004269/big_368132_201805232128060000001.jpg)
その理由は、特に手の込んだ製法にあった。一般的にクランクシャフトは鍛造パーツをベースとして、必要な部分に機械加工を施すことで生み出される。ところが、この「RC213V-S用クランクシャフト」表面は、その全てに機械加工がされている。いわゆる鍛造肌と呼ばれる鍛造されたままの表面が全くない、ピカピカの状態に仕上げられているのだ。比較として、鍛造肌が残るクランクシャフトの写真を示しておこう。
鍛造肌が残る一般的なクランクシャフトは+-1~2mmの公差が出るため、バランスを修正する穴あけ加工が必要とされる。ところが「RC213V-S用クランクシャフト」は、言われなければ気付かない程に小さな穴が一つあるだけだった。ほぼ設計値通り、という精度が実現している。
クランクウェブ側面には、比重の重いタングステン製ウェイトが打ち込まれている。これもまた一般的にはレーシングエンジンでしか行われない加工であり、市販車への加工としては極めてレアケースである。
最新テクノロジーだけでなく、職人芸とも言える技術に出会えるのも、本イベントの魅力の一つと言えよう。
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