熱エネルギーを少しも無駄にしないターボ [人とくるまのテクノロジー展2018横浜]
MotorFan / 2018年5月26日 10時20分
排気のエネルギーを余さずターボに伝えたい。そのあとに控える後処理装置の活性化のためにも低温化は極力抑えたい。そこでカルソニックカンセイが作り出したのが、二重構造を鈑金で成立させたタービンハウジングだった。
排気のエネルギーをタービンホイールに当てて回転させ、同軸のコンプレッサホイールを駆動させて圧縮空気を生成するのがターボチャージャの仕組み。排気の流速エネルギーは温度が高いほど得られることから、近年は排気マニフォールド直後にセットするエンジンが主流。また、排ガス浄化の触媒の早期活性化をねらうためにも、ターボ通過後の排ガス温度の低温化は極力避けたい。近年のエンジンは燃焼効率が高まっていることからそもそも排ガス温度が相対的に低いこととも相まって、熱をいかに無駄なく使うかに知恵が絞られている。
熱マネジメントに長けるカルソニックカンセイからは、ターボチャージャ本体の試みが提案されている。CK-SMiTHと称する本製品は、Sheet Metal innovative Turbine Housingの略称。その名のとおり、タービンハウジングを鋳造に換え鈑金構造としているのが最大の特長だ。この構造にすることでハウジングに空気層を介在させることができ、温度低下を最小限に抑えられる。赤い層が排ガスの流路、青い層は鈑金構造によって得られた空気層だ。魔法瓶のイメージといえばわかりやすいだろう。
VGベーン(可変容量ベーン)を含むカートリッジを収める部分は鋳造、それを巻くように内壁が備わり、それらをまとめて外壁が溶接されている。使用する板厚は1.5mm、熱歪みを極小に抑えながら溶接技術を駆使して漏れなく製造している。従来構造に比べて7℃ほどの向上が見込めるとともにタービンへのエネルギー付与も数%が向上、あわせて30%の軽量化を果たした。薄さからくる熱疲労や振動対策には解析を繰り返し、最適化を図っている。ハネウェルの製品に採用済みだ。
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