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三菱『歴代デリカのすべて 連載第5回』D:5の「D」は「DELICA」の「D」!「5」は五代目の「5」!

MotorFan / 2018年6月16日 8時0分

三菱『歴代デリカのすべて 連載第5回』D:5の「D」は「DELICA」の「D」!「5」は五代目の「5」!

2018年は三菱デリカ50周年のアニバーサリー。 その歴史を振り返るこの連載も、いよいよ現行モデルの五代目に到達。 今回はデリカに新たな歴史を刻んだ「D:5」を振り返る。

東京モーターショーでお披露目された次世代デリカの提案「MITSUBISHI Concept-D:5」

 2005年10月に開催された第39回東京モーターショーの三菱ブースに2台のコンセプトカーが展示された。1台は後にランサーエボリューションXとして登場する「Concept-X」。そしてもう一台が“次世代のデリカ”として提案された「Concept-D:5」だ。「Concept-X」がランサーエボリューションXにかなり近い形であったのに対し、「Concept-D:5」はまだコンセプトモデル感が残る。

 いつでも、どこへでも行ける高機動と高機能を標榜する“新4WDモノボックス”が「Concept-D:5」のコンセプト。ミニバンに求められる上質な居住空間や機能性と、デリカの伝統である本格4WDシステムがもたらす卓越した走破性を兼ね備え、エクステリアでもタフさを表現することで“確かな安心”を具現化させたモデルだった。

 「Concept-D:5」はアウトランダーやギャランフォルティスが採用する三菱GSプラットフォームをベースにしており、コンセプトモデルながら、この時点でエンジンやトランスミッション、4WDシステムをアウトランダーで実績のあるものを搭載することがアナウンスされていたのも、外観以上に市販間近を印象付ける仕様であった。かくて、五代目デリカとなる「D:5」は、リリースされることになるのだが……。

東京モーターショーで公開された次世代デリカのコンセプトモデル「Concept-D:5」。この年の三菱ブースには、他にランサーエボリューションのコンセプトモデル「Concept-X」も展示された。

MITSUBISHI Concept-D:5 主要諸元
全長:4735mm
全幅:1815mm
全高:1875mm
ホイールベース:2850mm
トレッド(F/R):1540 mm/1540mm
エンジン:4B12型 水冷直列4気筒 DOHC MIVEC
乗車定員:6名
最高出力:170ps
最大トルク:23.0kgm
トランスミッション:INVECS-III 6速スポーツモードCVT
タイヤサイズ:255/55R20
ホイールサイズ:20×8J

デリカ「D:5」待望のデビューは2007年!

 東京モーターショーで「Concept-D:5」が発表された2005年の時点で、四代目モデルである「デリカスペースギア」はデビューから10年以上が経過していた。他に類を見ない性能と独自の世界観が魅力であり、デリカ自体が比較的モデルライフの長い車種とはいえ、新型への移行を期待する声は小さくなかった。ただ、コンセプトモデルから市販へは少々時間を要することとなった。

 次に五代目デリカに関するアナウンスがあったのは、東京モーターショーから丁度1年後の2006年10月。「デリカD:5」の車名の発表だった。「D」は「DELICA」を、「5」は「五」代目デリカであることを示しており、ここにデリカは全く新しいサブネームを得ることになったのだ。

 年が明けて2007年1月12日に開催された東京オートサロンにおいて市販モデルが展示され、1月31日に正式に販売開始。当時の月販台数目標は2300台/月とされていた。

デリカD:5(2007)

パジェロからアウトランダーへ……三菱GSプラットフォームを採用し横置きFFレイアウトがベースに

 デリカD:5は“ミニバンの優しさ”と“SUVの力強さ”の融合が開発テーマ。キャブオーバータイプの優れた居住性と多才な積載性を備え、なおかつオフロードからオンロードまでどこまでも行ける機動性と信頼性も兼ね備えるオールラウンダーを目指している。

 これまでデリカといえばパジェロとコンポーネンツを共有していたが、デリカD:5は2005年にデビューしたミドルサイズSUV「アウトランダー」がベースとなった。プラットフォームはアウトランダーから採用が始まった新開発の三菱GSプラットフォームで、アウトランダーのほかにギャランフォルティス/ランサーエボリューションXにも採用されている。ちなみに、このプラットフォーム開発時、三菱はダイムラー・クライスラーと提携しており、三菱GSプラットフォームは両社の共同開発の産物だった。ただし、2005年の提携解消により、その後はそれぞれが改良して使用しており、三菱の最新モデルであるエクリプスクロスもこのプラットフォームの系譜である。

 このプラットフォームにより、全高とステップ高は四代目(デリカスペースギア)から大幅に低くなり、乗降性や取り回し性も向上している。それでいて、最低地上高は20mmも高められている(190mm→210mm ※4WD車)。スクエアなボディは、アプローチアングル23.5度、ディパーチャーアングル22.5度、ランプブレークオーバーアングル18.0度を確保し、ラフロードや凹凸の激しい路面での走破性も担保されている。

デリカD:5 グラウンドクリアランス
最低地上高:210mm
アプローチアングル:23.5度
ディパーチャーアングル:22.5度
ランプブレークオーバーアングル18.0度

環状骨格構造の「リブボーンフレーム」

 新開発となったボディは環状骨格構造を持つ「リブボーンフレーム」で、三菱のルーツである航空機がヒントになっているという。このフレームにより、自動車アセスメントの衝突安全性能試験総合評価では最高評価のシックススター(★★★★★★)を受けている。この新ボディと低くなった車高、トレッドのワイド化、フロントにマクファーソンストラット式、リヤにマルチリンク式を採用したサスペンションにより、操縦安定性と乗り心地に加え、旋回性能もデリカスペースギアから向上した。

マクファーソンストラット式コイルスプリングのフロントサスペンション。
リヤサスペンションはマルチリンク式コイルスプリングを採用。

当初は2.4リッターガソリンエンジン×4WDのみでスタート

 2007年にデビューした際に用意されたドライブトレーンは、2359ccの排気量から170ps/23.0kgmを発揮する4B12型直列4気筒DOHC16バルブMIVEC を搭載した4WD車のみで、トランスミッションはINVECS-III 6速スポーツモード付きCVTのみという仕様だった。

4B12型2.4リッター直列4気筒DOHC16バルブMIVECエンジン

 4WDシステムはアウトランダーで実績のある電子制御4WDを採用。走行状況に応じて前後輪へのトルク配分を適正にコントロールする。さらに燃費が良い「2WD」、前後の駆動力を自動で最適配分する「4WDオート」、トラクション性能を高める「4WDロック」という3つの走行モードを用意。ダイヤル式セレクターで走行中でも容易に切り替えることができるようになった。

 これは三菱が標榜する「AWC」すなわち「All Wheel Control」を体現するための重量なシステムと位置づけられる。この4WDシステムとASC(スタビリティコントロール機能)による最適な4輪駆動配分コントロール。ABS(EBDとブレーキアシスト)とASC(トラクションコントロール機能)による4輪スリップコントロール。そして、クルマの基本性能として与えられた高剛性ボディと大径タイヤ、ワイドトレッド、55対45の前後重量配分(空車時)による4輪接地荷重コントロール。これらが融合し、デリカD:5の「意のままの操縦性」と「卓越した安定性」を実現。類い稀なオールラウンド性能を誇るのである。
 

スポーツモード付き6速CVTのINVECS-IIIを採用し、4WDのドライブドライブモードセレクターはダイヤル式。

基本性能と車両統合制御がオールラウンドで高い走行性能を発揮する「AWC」。

 一方で、機械式のローギアを備えたデリカスターワゴンやデリカスペースギアに比べてオフロード性能で劣るという見方もあるが、それでもデリカD:5以上の走破性をもつミニバンは皆無と言っても過言ではない。その走破性の高さは、三菱が様々なイベントで用意する「4WD体感キット同乗体験」で、デリカD:5がパジェロと同じハードな走行を見せることからも窺い知ることができる。

 何より驚くのがこの走破性がエンジン横置きのFFベースで作られていることだ。これまでデリカの4WDは二代目・三代目(スターワゴン)のキャブオーバーにしろ四代目(スペースギア)のフロントエンジンにしろ、FRベースであった。それが、D:5からはアウトランダーをベースにしてFF化したことはデリカ史上における大きな転換点だと言えるだろう。FF化に加えサスペンション形式の変更も、現代のミニバンに求められる室内空間や快適性を手に入れるためには必要なことだったのだ。それでいて、卓越した走破性をもたせたのは三菱の矜持とデリカの伝統を強く感じるものである。

三菱のイベントではおなじみの「4WD体感キット同乗体験」(スターキャンプ2017朝霧高原)

これまでに比べ乗用車テイストが強くなった室内。ボディサイズ、特に全幅の拡幅以上に室内空間は広くなっている。
助手席用の姿勢保持ハンドルやダッシュボード上の追加メーターがなく、イメージが一新されたコックピット。
スクエアな室内空間は広くルーミーで開放感も高い。回転対座は無くなったが、シートアレンジは充実している。

「デリカ」は今買えるミニバンの中で最も長い歴史を持つ車名

 1990年に登場したトヨタ・エスティマの存在は、日本自動車史上におけるひとつのエポックメインキングとなったというのはよく言われることである。エスティマの登場まで、多人数乗車の乗用車と言えば商用車ベースのキャブオーバーワンボックスワゴンが主流だったが、エスティマ以降は乗用ミニバンとワンボックスは明確に分化されていくことになる。

 商用版からの独立系では、今も人気のトヨタがタウンエース/ライトエースにノアのサブネームを加えたのが1996年。車種が独立したのが2001年で、同時にヴォクシーを設定。日産がバネットにラルゴを設定したのが1982年で、セレナを設定したのが1991年。ラルゴの独立が1993年で、セレナも1999年に独立してラルゴが統合されている。

 乗用車としての新規モデルだと、アルファードが2002年、ヴェルファイア2008年。オデッセイが1994年、ステップワゴンが1996年。となっている。

 こうして見ていくと、現在新車で買える“ミニバン”のなかでは1968年に誕生した「デリカ」の名前が最も古いことになる。それは、デリカ自体が五代目のD:5で商用車と決別したからに他ならない。ちなみに、商用デリカの系譜は日産NV200バネットのOEMながら今も続いている。尤も、二代目デリカも三代目デリカも未だ東南アジア方面で現地生産されていたりはするのだが……。

日産NV200バネットのOEM車であるデリカバン「DX」(2017)
二代目デリカバン
三代目デリカバン

待望のディーゼルエンジン搭載……拡大するデリカバリエーション

 2.4ℓガソリンエンジンと4WDのみでスタートしたデリカD:5のラインアップは、まず2007年5月に2WD車「C2」とエアロモデル「ローデスト」を設定。2010年のマイナーチェンジでは、2WD車のエンジンを2.4ℓから4B11型DOHC16バルブMIVECの2.0ℓに変更するとともに、これまで4WD車と異なっていた2WD車の各種仕様を4WD車と統一している。さらに、2012年には2WD車のエンジンを同排気量ながらより高効率な4J11型SOHC16バルブMIVECに載せ替えている。

2WD車のデリカD:5「C2 G-NAVI PACKAGE」(2007)

 2013年1月(発表は2012年12月)には遂に待望のディーゼルターボが4WD車のみではあるが設定された。これでデリカD:5はミニバン市場で唯一のディーゼルエンジン搭載車となり、ディーゼルターボ+4WDというデリカの伝統を受け継ぐことになったのである。

 搭載されるエンジンは欧州向けアウトランダーでも採用している2268ccの4N14型直列4気筒DOHC16バルブMIVECで、ピエゾ式コモレールDI-Dに VG(可変ノズル)ターボを組み合わせるクリーンディーゼル。148ps/3500rpmの最高出力と36.7kgm/1500-2700rpmの最大トルクを発揮しながら、13.6km/ℓの燃費性能を実現。ディーゼルならではの力強い動力性能(牽引能力750kg)と優れた環境性能を両立した新世代のエンジンである。組み合わせるトランスミッションはINVECS-IIスポーツモード付き6速ATで、CVTを搭載するガソリンエンジン車とは異なっている。

4N14型コモンレール式DI-Dクリーンディーゼルエンジン(2015)

アクティブなデリカは冬も!夏も!砂漠でも!?

二代目デリカから設定される伝統の冬季特別仕様車「シャモニー」がD:5にも登場。デビュー同年中という驚くべき早さでのリリースとなった。
シャモニーの専用エンブレム。これまでのモデルに比べ外観でのアピールは控えめとなっていた。

 デリカシリーズの特別仕様車といえば冬仕様の「シャモニー」が2007年12月に早くも投入されており、この特別仕様車への期待が窺い知れる。「シャモニー」は2011年までと、2014年から2017年まで合計9度も設定されている。2007年に初登場した「シャモニー」では、デリカD:5では初めて2列目キャプテンシートの7名乗車仕様となっており、その後通常グレードにも設定されるようになった。2017年の「シャモニー」には、デリカD:5発売10周年を記念して「10th Anniversary」のデカールとインテリアにロゴを配してる。

2017年にデリカD:5「シャモニー」は登場10周年となり、特別なデカールとインテリアロゴを配した。

 そのほかの特別仕様車では「EXCEED」「EXCEED II」「ROADEST Limited Edition」「ROYAL EXCEED」「M-Limited」などの充実装備系を展開してゆき、2017年にはオレンジのアクセントカラーが印象的な「ACTIVE GEAR」を設定。2017年の販売グレード比率で2割を占めるほどの人気モデルとなり、2018年も引き続き設定された。

2017年に設定された特別仕様車「アクティブギア」(画像は2018年モデル)。オレンジのカラーアクセントが印象的なモデルで、2017年の販売台数では全体の2割を占めるほどの人気を集めた。

 さらに2018年の一部改良に合わせて、春夏のアウトドアレジャーをターゲットにした特別仕様車「ジャスパー」を設定。こちらも「シャモニー」ほどではないにせよデリカでは定番の特別仕様車で、専用のボディカラーとエクステリアデザインに加え、撥水加工シートなどインテリアにも実用的な専用アイテムをおごる。さらに、アウトドアでの使い勝手を高める専用アイテムも用意されている。

デリカD:5の「ジャスパー」は2018年が初登場となった。

 デリカD:5は2007年1月6日から1月22日にかけて開催された「ユーロミルホー・リスボン~ダカール2007」において、三菱チームのサポートカーとして導入。パジェロと共に砂漠を疾駆し、その走破性を遺憾なく発揮した。ラリーアート所属の田口勝彦選手がステアリングを握ったのも大きなトピックであった。

「ユーロミルホー・リスボン~ダカール2007」では「チーム・レプソル三菱ラリーアート」のペテランセル選手が、自身3度目の総合優勝を果たしチームの7連覇と通算12勝目を達成した。

え!? D:5の「5」は何の意味? 兄弟が増えてサブネームを再定義

 デリカD:5の「D」は「DELICA」を、「5」は「五」代目……というのは冒頭に述べた。しかし、この定義が揺らぐことになってしまったのだ。それは……

 2010年12月、三菱はスズキから三代目「ソリオ」のOEM供給を受けることが発表された。2011年2月にこのOEM車の車名を「デリカD:2」と発表し、同年3月から発売を開始した。2015年に供給元のソリオのモデルチェンジと合わせてデリカD:2も二代目となり、これが現行モデルとして販売されている。

二代目デリカD:2(2017)は四代目スズキ・ソリオのOEM車。

 2010年12月はさらに大きな発表があった。三菱と日産の協業の合意である。その一環として、三菱は日産からNV200バネットのOEM供給を受けデリカD:3として販売することになったのだ。デリカD:2に遅れること8ヶ月。10月のデビューとなり、ほぼ同時にデリカバンも登場している。

 さて、ここで冒頭の疑問である。D:5の「5」が「五」代目なら、D:3とD:2は先祖返りになってしまう。そこで車名の再定義が行われた。数字は三菱のミニバンのクラスを表すものとして、D:2は軽自動車を最小として2番目のサイズ(というのであれば、eKスペースはデリカD:1でも良いのではないだろうか?)。D:3はその次の小型5ナンバーサイズ。そして最大サイズがD:5というわけだ。今のところ「D:4」は欠番となっているが、実際のところD:5とD:3の間にもう一車種追加する余地はないと思われる。あるいは、トヨタの直噴エンジンの商標名と被るから避けているのかもしれない(あちらは「D-4」)。

日産NV200バネットのOEM車となるデリカD:3。

フルモデルチェンジはあるのか?ないのか? ……結びに代えて

 デリカD:5は現行モデルなので、今もってなお生産が続けられているが、2017年までの登録台数を見ると合計で17万509台であり、2万5717台を登録した2007年が最大となっている。面白いのは2017年でも1万3303台を登録しており、10年目を迎えてもコンスタントに売れ続けているのだ。

 そして、2018年は登場から11年目。二代目の7年を除けば(バンを含めば15年だが)デリカのモデルサイクルが10年を超えるのはいつものこと(初代=11年、二代目=7年、三代目=13年、四代目=13年)だけに、D:5が特段モデルチェンジが遅いわけではない。とはいえ、昨今のクルマの先進安全装備の充実を考えれば、現状の装備では物足りないのは確かだ。2018年の一部改良では先進安全装備の追加はなかったので、2019年以降に搭載されることになるのか、あるいはフルモデルチェンジが予定されているのか、今のところはまだよくわからない。少なくとも、ユーザーが先進安全装備が充実した“デリカ”を心待ちにしているのは間違いないだろう。

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