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ブリヂストン:低燃費性と高破壊強度を両立したゴム複合体を開発

MotorFan / 2018年6月26日 19時55分

ブリヂストン:低燃費性と高破壊強度を両立したゴム複合体を開発

ブリヂストンは、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)のひとつである「超薄膜化・強靭化『しなやかなタフポリマー』の実現」において、タイヤの燃費特性に寄与する材料物性を維持したまま、従来二律背反の関係にある強度を約4倍向上するゴム材料を開発したことを発表した。

研究の背景と経緯

 環境に対する関心の高まりを受け、自動車においてもますます省資源化や低燃費性能の向上が求められている。タイヤ業界では、タイヤの低燃費性能を向上するために、ゴム材料の転がり抵抗の低減に関する研究開発が精力的に行われている。一方、タイヤのさらなる省資源化および低燃費性能の向上のために、タイヤの構成部材をより薄くするための取り組みも行っている。

 タイヤの構成部材をより薄くすることができれば、省資源化や低燃費性能の向上だけでなく、生産時の消費エネルギーの低減、さらには廃棄時の廃棄物量の削減にもつながり、タイヤライフサイクル全般に渡ってメリットがある。しかし、一般的にゴムを薄くすると耐久性が低下するというデメリットがあり、耐久性を維持したままタイヤの各部位をより薄くするためには、既存技術の枠を超えた強靭なゴム材料の開発が必要だ。

 そこで、本プログラムでは、省資源化や低燃費性能の向上を通して、持続可能な社会の実現に貢献するために、これまでにない高強度ゴム材料の開発に挑戦している。


研究の内容

 ゴムには、破断・摩耗・引裂きなど多岐にわたる強度特性があるが、き裂の発生とその成長(き裂進展)を抑制することで、これらの強度特性を向上させることができると考えられている。本プログラムにおいては、ブリヂストンが培ってきたゴム材料に関する技術や知見を基盤に、多くのアカデミアによるき裂進展現象についてのミクロ・マクロスケールでの実験的解析、理論シミュレーション、新材料の具現化に関する先進的な研究との連携を通じて、ゴム材料の高強度化のメカニズムを明らかにするとともに、その具現化を進めてきた。

 その中で、今回の成果は、ダブルネットワークと呼ばれる構造を用いたことにより達成されたもの。ダブルネットワーク構造は、本プログラムに参加の北海道大学 龔剣萍教授がタフポリマー化の手法として提唱してきた原理であり、ゲル材料などにおいて、劇的な強靱化の効果が実証されていたが、これまでゴム材料に適用された例はなかった。本プログラムにおいて、このダブルネットワーク構造をゴム材料に取り入れることで、従来技術では二律背反の関係にあるとされていた、タイヤの燃費特性に寄与する材料物性と耐き裂進展性を高次で両立することに成功した。その結果、従来の低燃費性を意識したゴム(基準ゴム)に対して、タイヤの燃費性能に寄与する材料物性を15%向上するとともに、き裂進展に対する強度を約5倍に向上した、革新的なゴム複合体を実現した。

 2016年に発表したゴム複合体と比較して、更に強度を向上させるとともにタイヤの燃費特性に寄与する材料物性も向上し、強度を3.5倍以上に向上すると同時にタイヤの燃費特性に寄与する材料物性を10%向上させるという本プログラムの開発目標を達成した。


図1: ゴムの強度測定方法の概念図(1) 長方形のゴムシートを長手方向に掴み、高さ方向に所定の歪まで伸長し、歪を固定する(所定の引裂きエネルギーを与える)。そこで試験片の片側面に初期き裂を導入し、き裂の進展速度を高速度ビデオカメラなどを用いて解析する。

図2: ゴムの強度測定方法の概念図(2) 図1の試験で与えた引裂きエネルギーでのき裂進展速度をプロットすると、ある(転移エネルギー)でき裂進展速度が増大する。本プログラムでは、この転移エネルギーをゴムの強度としている。

 図3: ダブルネットワーク構造を取り入れたゴム複合体の概念図および製造プロセス

 図4: 原子間力顕微鏡位相像(左:制御でネットワークあり、右:制御せずネットワークなし)

図5: 本プログラムで開発したゴムの強度・燃費特性の位置づけ

今後の展開

 現在、上記の新規ゴム材料を用いたタイヤの試作・評価を行っており、タイヤの省資源化や低燃費性能の向上を通して、持続可能な社会の実現に貢献すべく、2020年代前半の実用化を目指している。

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