ついに、勝った! トヨタのル・マン24時間初制覇。勝利の立役者は、フェルナンド・アロンソ? 中嶋一貴? それとも?
MotorFan / 2018年7月6日 18時35分
世界三大レースのひとつ、ル・マン24時間レース。通算20回も挑戦し続けて、ついにトヨタが優勝したのが、今年2018年6月17日。ポルシェワークスが撤退したことでライバル不在とも言われたが、ル・マンが世界一過酷で勝つのが難しいレースであることに変わりはない。「楽勝でしょ?」と思った人も多いかもしれない。2006年のレクサスGSハイブリッドによる十勝24時間レース挑戦からずっとトヨタのル・マン24時間挑戦を取材してきた、ジャーナリストの世良耕太氏に、トヨタ、ル・マン制覇の舞台裏を聞いた。 INTERVIEW◎MotorFan.jp PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)/TOYOTA GAZOO RACING
200psパワフルなプライベーター相手に圧勝する実力
ー勝てそうで勝てなかったル・マン24時間レースで、ついに、トヨタが優勝しました。しかも、ワン・ツーという完璧なカタチで。トヨタ以外にワークスがいない状態なんだから、楽勝でしょ? という人もいますけど。
世良耕太氏(以下世良) 結果から見たら、楽勝に見えたかもしれないけど、そこはなにが起こるかわからないル・マンですから、トヨタも楽勝と思って臨んではいませんでしたよ。
ー優勝の瞬間、ピットの様子、プレスルームの様子はどうでしたか?
世良 現地は、ポルシェがいるとかいないとか、関係なしでやっぱり勝者を称えるムードでしたよ。僕らも、トヨタが悔しい想いをしてきてるのをずっと見てきていますから、本当に素直に「ル・マン優勝、おめでとう! やりましたね!」という気持ちになったよ。ドライバーの中嶋一貴も「ずいぶん長くかかりましたが、ようやく勝ててホッとした」って言ってましたしね。今年、トヨタが勝てなかったらどうしよう、と僕も思っていましたし……。
ーワークスのトヨタとプライベーターでは、マシンの性能差が圧倒的に見えました。
世良 これも、結果から見たらそうなるんだけど、レギュレーション上は、ものすごくプライベーターが優遇されていたんです。たとえば空力もそうですし。エンジンに至っては、プライベーターの方が使える燃料が多くなっていたので、200psもパワフルになる計算でした。トヨタのTS050はハイブリッド・レーシングカーだから、エンジンだけで勝負するわけではないんだけど、200psのエンジン出力差は、最高速でプライベーターが有利になる計算だったんです。
ーそれでも、トヨタは圧勝した。
世良 そう。そのくらい今年のトヨタは強かったし、いまのトヨタのハイブリッド・レーシングカーの性能は高いということだったです。
速いマシンを作っただけでは、勝てないのがル・マン アロンソはどうだった?
ー速いマシンを作っただけでは勝てないのがル・マンなんですよね?
世良 トヨタもこれまで何度も苦杯を嘗めさせられてきましたからね。残り5分で「ノーパワー!」になって九分九厘手にしていた優勝を逃すとか。そういった意味では、ライバルのポルシェワークスやアウディワークスがいなくても、どんなトラブルが襲ってくるかわからない状況でした。
ーそれこそ、今年勝てなかったら、というより今年優勝をプライベーターに攫われたら、とんでもないことになる!というプレッシャーも相当だったんでしょうね。
世良 だから、トヨタは事前に入念な準備をしました。「起こりうるトラブルの可能性」をそれこそ、ありとあらゆるシチュエーションを想定していましたよ。タイヤが1輪外れて、3輪になってどうやってピットまで戻ってくるか。給油のタイミングを忘れてピットを過ぎたときに、残った燃料と電力量でどう走らせるか、とか、およそ、「そんなことは起きないでしょ?」ということまで考えて予行練習を重ねていました。実際に、小林可夢偉は、レース終盤、給油のピットインのタイミングを見逃して1周走行する事態になりましたもんね。
ーなるほど。今年のトヨタは、ドライバーも豪華でした。フェルナンド・アロンソという現役F1ドライバーのなかでも、最上級、もちろん世界チャンピオン経験者がトヨタに乗りました。アロンソ、トヨタでどうでしたか?
世良 アロンソは、トリプルクラウンを獲るために、勝てるトヨタでル・マンを戦いたかったんです。モナコGPはもちろん勝ってますし、今回ル・マンを勝ったから、残りはインディ500だけ、となりましたね。トヨタのチームとアロンソの関係はとにかく良好でした。トヨタはチームワークを大切にします。アロンソだけ特別扱いするつもりはなかったし、アロンソも耐久レースモードに気持ちを切り替えていたようでした。チームをなごませるためにカードマジックを披露したりして。
ーマツダのル・マン優勝が1991年ですから、再び日本の自動車メーカーがル・マンを制覇するのに27年もかかってしまったことになります。日本人としては、本当に素直にトヨタの優勝を喜びたい、と思います。
世良 そうですね。2006年にトヨタが「ハイブリッド・レーシング」で十勝24時間に出場したときから、僕は間近で取材を続けてきましたから、本当にうれしい。
ートヨタのル・マン初制覇の立役者をひとり挙げてほしい、と言ったら、誰を推しますか? ドライバーの中嶋一貴?アロンソ?
世良 もちろん、ドライバーも大事です。レースをサポートするエンジニアやメカニックも。でも、ひとり挙げるとしたら……いや、ふたりでもいいですか? ひとりは、今年のTGR(トヨタ・ガズーレーシング)のチーム代表でもある村田久武さん。もうひとりは、プロジェクトを始めた当初にモータースポーツ部の部長だった木下美明さんです。村田さんも木下さんも、ル・マンとの関わりが深くて長い。ハイブリッドを使ったレース活動をスタートしてずっと推進してきたのが、このおふたりです。とくに村田さんは2006年からずっとリーダーとしてプロジェクトを率いてきました。負けず嫌いな村田さんのリーダーシップがあったからこそ、初制覇までたどりついたのだと思います。
ー世良さんは、『トヨタ ル・マン24時間レース制覇までの4551日』という本を上梓しましたね。4551日とは、いつからですか?
世良 2006年の1月1日からです。この年にトヨタは、ハイブリッドによるレース活動をスタートしたので。
ーどんな内容ですか?
世良 2006年から今年まで、トヨタのル・マン挑戦の舞台裏を描いています。トヨタは、言い換えると初制覇するまで、負け続けたわけです。そのとき、チームのリーダーは何を思い、どう動いたか。スタッフになにを伝え、どう動かしたのか? そのあたりもストーリーの軸に置いています。そのリーダーが、村田さんというわけです。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【F1】アロンソの豪GP降着処分巡り審査委員ハーバート氏に殺害予告「脅迫は今も続いている」
東スポWEB / 2024年4月24日 13時16分
-
4月末からいよいよ開催!「モナコF1・グランプリ」など、注目のモナコ3大モーターレース
IGNITE / 2024年4月19日 20時30分
-
【F1】アロンソとアストンマーティンの複数年契約に「秘密条項」か ホンダ体制発足前に退団も
東スポWEB / 2024年4月18日 12時53分
-
KENWOODがSUPER GT 2024シリーズGT500クラスに参戦する中嶋悟氏率いる「Modulo Nakajima Racing」に協賛
IGNITE / 2024年4月17日 16時0分
-
「これがベストチーム」「美しいチーム」見事な無敗優勝を成し遂げたシャビ・アロンソ監督、ベストチームとSNSに投稿した写真が話題に「みんな良い笑顔だ」
超ワールドサッカー / 2024年4月16日 19時15分
ランキング
-
1【ロッテ】佐々木朗希、自己最多123球も6回途中5失点で今季2敗目「思うように投げられなかった」…自己ワースト5四球
スポーツ報知 / 2024年5月10日 22時26分
-
2【ロッテ】連勝は4でストップ エスコン初先発の佐々木朗希が自己最多123球も6回途中5失点で今季2敗目
日テレNEWS NNN / 2024年5月10日 21時13分
-
3宮城大弥 左大胸筋損傷で登録抹消 オリファン衝撃「終わったな…」「由伸、福也戻ってきて」と落胆の声
iza(イザ!) / 2024年5月10日 16時28分
-
4村上佳菜子「大事な弟」宇野昌磨の引退発表にエール…「お疲れ様だよ!」「命かけてお互い練習してきた」
スポーツ報知 / 2024年5月10日 10時42分
-
51500万円で大谷翔平の「DNAが手に入る」 米驚愕…大金積んで獲得した“クローン”
Full-Count / 2024年5月10日 20時46分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください