お値段”300万円超”のバイクはナニがスゴい? MotoGPマシンに最も近い「パニガーレV4」でいざ箱根へ。
MotorFan / 2018年7月19日 16時0分
MotoGPマシンに最も近い市販車と言えるパニガーレV4。ドゥカティの独自技術を集結させたフラッグシップモデルだ。頂点に君臨すべく、そこに込められた最先端テクノロジー満載の内容には、時代を一歩も二歩も躍進させた点に驚きを隠せなかったのが正直のところ。ただ、試乗インプレはさらに強烈なものであった。 REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
ドゥカティ・パニガーレV4 S……3,280,000円
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灼熱の箱根路をパニガーレがゆく
パニガーレV4ともなるといつもの都心のロケでは不十分、今回は多彩な峠道のある箱根へと向かった。真夏日の炎天下の中、ヘルメットを始めライディングギヤにはすべてレース用をチョイス。レザーのレーシングスーツ着用で出発した。サーキット走行ではないので、それは必須要件ではないのだが、例え暑くてもパニガーレの走りを愉しむにはそれが“一番相応しい”という気持ちになったからだ。簡単に断言すると「ソノ気にさせる」オーラがこのバイクにはある。生半可な気持ちで乗る使い方は、バイクに対して失礼でさえあると思えた。
余談になるが、試乗車を自宅に持ち帰った時、普段バイクにはまるで興味を示さない妻が「高そうなバイクね、赤い塗装がとても綺麗」と反応をみせた。パニガーレV4S はバイクに無関心な人でも目を惹きつける魅力があるのだろう。クルマで言えばフェラーリのような存在に近いのだろう。ガレージに置いて愛でるだけでも価値のある楽しいひと時が過ごせる逸材であることは間違いない。
時にジャジャ馬、時に従順。パニガーレV4Sは様々な顔を見せる
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さて、1103㏄Lフォア(90度V型4気筒)エンジンについての詳細はあえて割愛するが、それはそれはもの凄い強烈なハイパワーは、まさに未体験ゾーンだった。数あるスーパースポーツの中でも俊敏でトップレベルの動力性能があることは間違いない。しかし一番不思議に感じられたのは、その強烈な高性能の中のどこかにライダーに対する優しさが伴っていることだ。70度位相クランク?ツインパルス?賢い制御技術? その要因を見極めるのは難しいが、一言で言うと心底強烈だが乱暴者ではないのである。
214ps/13000rpm以上と言われる最高出力はまさに爆発的。乾燥重量はわずか175㎏なのだからポテンシャルの高さは押して知るべし。現実の話、一般公道で唯一それが発揮できるのは高速道路進入時の加速のみ。それもローギヤ限定に過ぎないが、筆者がこれまで使ったことのない表現を駆使するとまさに弾丸の様なダッシュ力。本音で言うと各社のホットモデルをテストコースに持ち込んで厳密に比較テストをしてみたいものだが、一方でそれは無用なことの様な気もしてしまう。
ともかく、周囲を走る陸上の乗り物の中で誰よりも速い性能を発揮できることだけは間違いなく、ブレーキも含めて速度が自由自在にコントロールできる。自分がそれを扱っている優越感と危険回避性能に優れる安心感に、とても大きな魅力を覚えた。
ちなみにローギヤ5000rpm時のスピードはメーター読みで50㎞/h。回転計のレッドゾーンは14500rpmからだ。トップ6速100㎞/hクルージング時のエンジン回転は4500rpm。市街地レベルの速度域から最高速までトップホールドでカバーできる柔軟性も十分なものだった。トップスピードなんて試しようがないが、おそらくは難なく320㎞/hオーバーの世界が簡単に体験できるポテンシャルはあるだろう。
”意のままに操る”という言葉が最も合う、パーフェクトな車体。
走行モードの切り替えも実に多彩。サスペンションも含めると組み合わせは無数に膨れ上がるが、サーキット等に合わせたセッティングが簡単にチョイスできる魅力は大きい。ただし、正しく扱うにはオーナーズマニュアルの熟読が欠かせない。
高速のランプや、峠道での操縦性もまたとても気持ちがいい。試走した芦ノ湖スカイラインは久しぶりだったが、まるで昨日も走っていたかの様な感覚。そう思わせるほどパニガーレV4S はすぐに身体に馴染んでくれるのだ。前後サスペンションはシッカリと硬めなセッティングでも初期のほんの数ミリの所での作動特性も素晴らしく、路面の細かな衝撃吸収に優れている。前後輪の接地感が把握しやすく、この先を予見して路面のインフォメーションを伝えてくれるような感じになり、とにかく安心感がある。S時の切り返しや旋回バンク中等、車体挙動は常に落ち着きがあるので、素直に、快適に、まさに思いのままに走れるのだ。
クランクの逆回転が効いているのか、はたまた制御が優れているのかコーナリング中のアクセル開閉操作でも車体の安定が乱れることは少なく、トラクションコントロールやコーナリングABS の装備でいざという時の操作ミスに対しても気分的なユトリは大きい。
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“熱”のこもりが唯一の弱点か
久しぶりに感心感激ばかりの試乗だったが、唯一の欠点はシート下に抱えるマフラーの熱気がライダーを襲うこと。法定速度内での走行ではなかなか冷えづらいようだ。実測燃費率は、往路の市街地、高速、峠道で13.3㎞/ℓ。復路の高速&市街地で19.8㎞/ℓだった。
ローが高めなギヤレシオもあって、渋滞する市街地を走らせるのは可哀相な気分にもなった。本来は高速サーキットに搬送して思い切りスポーツ走行を愉しむのが相応しい姿であることは、言うまでもないだろう。
ディテール解説
![高価なプライスを高いとは感じさせないだけの完成度。外観デザインの美しさも秀逸のものがある。マフラーの存在を隠しアンダーカウルと一体化した手法も斬新だ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10004901/big_483243_201807181616360000001.jpg)
![クリアのスクリーンはとても小さなデザインだが、スポーツ走行をする伏せ姿勢を取ると人車一体感が増すようなエアロダイナミクスを披露する。](https://motor-fan.jp/images/articles/10004901/big_483244_201807181458420000001.jpg)
![排気管(口)の見えないスッキリとシェイプされた足元のデザイン。まるでレーシングマシンその物を思わせるバンク角の深さは一目瞭然だ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10004901/big_483244_201807181458420000002.jpg)
![シャープなノーズデザイン。奥目のLEDヘッドライトで精悍なイメージ。エアダクトをかねた機能性も併せ持っている。ドゥカティらしい赤いペイントも見るからにプレミアムな雰囲気を放っている。](https://motor-fan.jp/images/articles/10004901/big_483245_201807181500270000001.jpg)
![後傾42度で搭載されたV4エンジン。車体中心部にギュウッと凝縮された塊感はマスの集中化が徹底されていることがわかる。エンジンもフレームの剛性メンバーに加える手法が採用されている。シート下にも及ぶ軽量アルミ製ガソリンタンク容量は16ℓ。なお、エアクリーナー容量は12.8ℓもある。](https://motor-fan.jp/images/articles/10004901/big_483246_201807181500290000001.jpg)
![V4はザックス製フルアジャスタブルリアショックを採用しているが、写真のV4Sはオーリンズ製TTX36リアショック・アブソーバーを採用。オーリンズ製Smart EC 2.0による電子制御で減衰力がコントロールされる。](https://motor-fan.jp/images/articles/10004901/big_483247_201807181500300000001.jpg)
![径の大きな中空シャフトで片支持固定されるリヤホイールはマルケジーニ製3本スポーク鍛造アルミニウム合金製を採用。ちなみにV4は5本スポークの鋳造アルミ製だ。ブレーキは専用開発されたブレンボ製Stylemaモノブロック・キャリパーを装備。対向2ピストンキャリパーとφ245mmのシングルディスクの組み合わせだ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10004901/big_483248_201807181501250000001.jpg)
![前方に睨みを利かせる精悍なマスクのLEDライトは、通常右(写真左側)のみが点灯。ハイビームの時に両眼点灯となる。黒いフロントフェンダーはカーボンファイバー製だ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10004901/big_483249_201807181500280000001.jpg)
![十分に肉抜きされたトップブリッジ。その部品ひとつに注目しても造形と加工技術の美しさが漂ってくる。平行して前方に沿わせてあるのがオーリンズ製電子制御式ステアリングダンパーだ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10004901/big_483250_201807181503050000001.jpg)
![スッキリと四角いデザインの液晶ディスプレーは白黒のコントラストがハッキリしていて見やすい。夜間は白黒が逆転する仕組み。様々な走行モードや状態表示が成される。](https://motor-fan.jp/images/articles/10004901/big_483251_201807181506530000001.jpg)
![ディスプレイの機能選択を担うモードスイッチとセレクトスイッチ。各種機能が多彩過ぎて使い方を完全マスターするには、オーナーズマニュアルの熟読が必要。むしろ自分のニーズを見極めた上で、それに必要な操作をマスターする方が良いだろう。](https://motor-fan.jp/images/articles/10004901/big_483252_201807181503430000001.jpg)
![右側アクセルグリップには、もちろんスロットルケーブルは存在しない。フライバイワイヤー方式が採用されている。キルスイッチを切るとスターターボタンがカバーされる仕組みになっている。](https://motor-fan.jp/images/articles/10004901/big_483253_201807181503440000001.jpg)
![抜けのあるリヤカウル&テールランプデザイン。ウインカーはオーソドックスな手法だが、LEDのテール&ストップランプデザインはやはり斬新だ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10004901/big_483254_201807181501260000001.jpg)
![シート後方中央に書類入れ程度の小さな収納ボックスがある。シングルシートの表皮はアルカンターラ製、シットリと尻に馴染む感じで納まりが良かった。](https://motor-fan.jp/images/articles/10004901/big_483255_201807181502410000001.jpg)
![収納ボックスはキーロック式。立て付けに大きな遊びがあったが、キー解錠で前方に引き出すように取り外せる。中にはベルトとヘキサゴンレンチが納められていた。](https://motor-fan.jp/images/articles/10004901/big_483256_201807181502420000001.jpg)
足つきチェック
![シート高は830mm。ご覧の通り両足の踵は浮いた状態になるが、車重が軽くバイクを支えるのは楽、足つき性に不安は感じられなかった。](https://motor-fan.jp/images/articles/10004901/big_483258_201807181616370000001.jpg)
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主要諸元
排気量 1,103 cc
最高出力 214 ps (157.5 kW) @ 13,000 rpm i
最大トルク 12.6 kgm (124.0 Nm) @ 10,000 rpm i
乾燥重量 174 kg
シート高 830 mm
安全装備 ライディング・モード、パワー・モード、ボッシュ製コーナリングABS EVO ドゥカティ・トラクション・コントロールEVO、ドゥカティ・ウイリー・コントロールEVO ドゥカティ・スライド・コントロール、エンジンブレーキ・コントロール EVO
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