後ろ姿にグッときた。2.5BOXERは優秀なトルクアクチュエーターだ。新型スバル・フォレスター
MotorFan / 2018年8月30日 11時55分
スバルの新型フォレスターは、SGPの新しい技術基盤の上に、2.0ℓ+モーターのe-Boxerと2.5ℓエンジンの2種類のパワーユニットを選べる。まず公道で試乗できたのは、2.5ℓ版だ。 TEXT & PHOTO●世良耕太(SERA Kota)
私は発見してしまった。フォレスターの後ろ姿が気品にあふれているのを。新型のフロントマスクを写真や画像で見たときは、先代と代わり映えしないし、必要以上に力強さを強調しているようで、好感が持てなかった。だから、新しいフォレスターと対面しても、マスク(顔)をじっくり見ようという気は起こらなかった。
気品に気づいたのはまったくの偶然である。伴走車に乗ってフォレスターを追いかける状況になったからだ。後続車から新型フォレスターを視界に捉えてみると、先代フォレスターに比べて2ランクか3ランク高級なクルマに見える。あんなにいかつい顔が前で待ち構えていようとは、到底想像ができない。
後ろ姿の気品を発見してからというもの、フォレスターのリヤばかり見つめている自分に気づく。「前向き駐車でお願いします」と言われなくても、積極的に前向き駐車したくなるクルマだ。用件を済ませてフォレスターに乗り込む際は、後ろ姿を眺めながら近づくことになるので……。
駐車場の隅っこに座り込んでフォレスターの後ろ姿を飽くことなく眺めていたら、第2の発見があった。リヤゲートを開けると真相がつまびらかになる。
ボディ側に残ったテールランプが極端に薄いのだ。これだけならカミソリテールランプである。先代フォレスターのテールランプはボディ側のユニットだけで成立していた。成立していたくらいだから相応の幅があった。新型はボディ側とテールゲート側のユニットを組み合わせて最新スバルの各モデルに共通する「C」の字をかたどっている(ま、コの字でもいいが)。
新型も旧型のようにボディ側のユニットだけでテールランプを成立させていたとしたら、極薄のランプになっていたはずだ。それでは困るからテールゲート側にもユニットを追加してCの字にした──という順番では当然ないだろうが、ボディ側のランプユニットが薄いということは、ラゲッジスペースの間口が広いことを意味する。
テールゲートを開いてラゲッジスペースをまじまじと眺めてみると、望外の広さに驚く。ホテルで案内された部屋が想像以上に広かったときに感じる、あの感動に似ている。「なにこれ、広っ!」て感じだ。この広いラゲッジスペースを見た瞬間に、フォレスターは理詰めの集合体であることに気づかされる。ユーザーの利便性を考えた設計だ。だけど気品あるリヤから伝わるように、四角四面な仕事ですべてをまとめたわけではない。
「うちはもともと飛行機メーカーなので、視界にはウルサイのです」という言葉を何度聞いただろうか。技術者が発したそのコメントを思い出さずにはいられないほど、運転席に座ったときに見晴らしは素晴らしい。といって、手すりしか頼る物がない展望台に出たときのような、落ち着かない感じとは無縁である。運転席側ドアのパネルが高い位置まであってそれが視界に入り、心理に対してプラスに働くのだろうと推察する。
ともかく、視界が良くて安心感がある。運転席に座った途端、「あ、このクルマは大丈夫」と自信が湧く。まだ動かしてもいない段階で、クルマとの信頼関係は成立していた。だから、動かしてからの印象もことごとく良かった。
2.5ℓ水平対向4気筒直噴自然吸気エンジンと、チェーン式CVTの組み合わせがもたらす走りにも興味はあった。走らせてみると、官能的ではないかわりにクセもなく、とにかくトルクアクチュエーターとして優秀だ。このあたりの仕事ぶりは四角四面だが、それがいい具合に着地している。「なんだよ、いまここで力出してくれよ」とか、「うるさいなぁ」とか、「ここでガクガクとパワートレーン系を揺らすわけ?」といった小言を繰り出す必要は一切なくて、いつどんな状況でも思いどおり、かつスムーズだ。
乗り味はしなやか。サスペンションのストロークは長く(あるいは長く感じさせる)、そのストロークを目一杯使って乗員の移動体験を快適にしようと努力している様子を、動きの端々から感じることができる。変位が大きいからといって不安感や不安定感をあおるようなことはない。動きのひとつひとつが丁寧にしつけられているせいか、頼もしさを感じる。
話は戻るが、後ろ姿がいいなぁ(しつこい?)。
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