東芝:環境振動を利用した発電量を2倍にする鉄道車両監視向け振動発電モジュールを開発
MotorFan / 2018年9月10日 14時25分
東芝は、環境振動(注1)を利用して発電する振動発電において、発電量を従来の2倍(注2)に高めた鉄道車両監視向け電磁誘導型振動発電モジュールを開発した。
環境振動を利用して発電する振動発電は、各種監視システムなどのIoTセンサーネットワークの自立電源として期待されている。鉄道車両の脱線などの重大事故を防ぐために、鉄道車両台車向けの状態監視システムの開発が進んでいるが、台車の状態を監視するための台車周辺に設置する各種センサーのために電源ケーブルを車両から後付で台車に敷設するのは困難を伴う場合が多くあった。一方で、監視システムの高度化により、信号処理や無線データ伝送等に要する全ての電力を振動発電などで賄うことは、現状の技術では不十分な場合が多くあった。このため、監視システムの省電力化と並行して、振動発電の大電力化に関する技術開発が望まれていた。
環境振動を利用した発電量を最大化するためには、振動発電機の発電密度(体積発電電力密度)を高める技術と、振動発電機から効率良く電力を取り出す技術が必要。東芝は、これまでに磁石配置を工夫して発電密度を高めた独自構造の電磁誘導型振動発電機を開発してきた。この振動発電機を用いた実振動環境下における発電性能評価として、公益財団法人鉄道総合技術研究所の鉄道車両試験線での実車走行フィールド試験において有効に発電できることを立証している。
今回、新たに整流変圧回路を備えた振動発電モジュールを開発し、発電電力を従来の4.0mWから2倍の8.9mWに高めることを可能にした。開発した振動発電モジュールは、振動発電機の発電密度を高めた当社独自構造の振動発電機と、振動発電機に対する回路の等価抵抗を任意に調整可能な整流変圧回路を備えている。これにより、振動発電機から効率的に電力を取り出すことができる最大電力動作点での発電条件に調整が可能となった。鉄道車両走行時台車振動の実測データに基づく走行模擬振動試験を行い、振動発電モジュールの発電電力を2倍にできることを実環境振動下において確認している。
今後、設計の適正化や環境耐久性などの改善を図り、鉄道車両台車向けへの適用を視野に入れて、さらに研究開発を進めていく。なお、振動発電モジュールの試験の一部は、公益財団法人鉄道総合技術研究所との共同研究により実施したもの。
注1:人間の生活振動、工場配管などの産業機器の振動、鉄道や電車などの交通機器の振動など
注2:車両走行時実台車振動の実測データに基づく走行模擬振動試験にて、発電部体積265ccで発電電力8.9mW、同社従来比2倍を確認した
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