「ハスラー」「アルト」それから「ジムニー」……なぜスズキはヒットに恵まれるのか?
MotorFan / 2018年9月11日 13時55分
毎年、様々なメーカーから数多くの新車が世に送り出される。当然ながら賛否は分かれるのだが、ここ数年を振り返ると、出すクルマが立て続けに好評価を得ているブランドがある。それがスズキだ。そのヒットの裏には何があるのだろう? TEXT●今 総一郎(KON Soichiro)
お盆休みなどの休暇に合わせて、高校や大学時代の友人と集まる機会がある。ただし、そこで話す内容は毎回ほとんど変わらず、去年話したテーマを今年も話すことになる。徐々に“結婚”に関する高度な情報戦が繰り広げられるようになってきたが、やはり大半を占めるのは“仕事”の話だ。
自動車メディアに携わっていることもあって、「どのクルマが面白いのか?」を決まって聞かれるが、ひと通りの新車には触れるためネタには困らない。今年なら「新型シビックタイプRは疑いようもなくトップアスリートだが、見た目が……」とか「新型センチュリーとロールス・ロイス ファントムとメルセデスマイバッハで銀座を連なって走った光景は、総額1億2千万円の聖なる行進だった」といったことを話した。しかし、最後は「買うなら、どのクルマ?」に落ち着く。
アタマの中には様々な車種が思い浮かんだが、意外な答えにたどり着いた。
「スズキが面白い」と。
カーライフの楽しさを予感させる「ハスラー」
知っての通り、スズキは軽自動車を長年手掛けてきた。現在は新型「ジムニー」の大ヒットで盛り上がっているが、少し前の軽自動車を振り返ると……ライバル車よりも0.1km/L上回ることに誰もが執着していて面白みに欠けていた。
そんな状況に一石を投じたのが2013年12月デビューの「ハスラー」だった。SUVらしいアクティブなルックスに加えて、様々なアウトドアレジャーを想定したアクセサリーでもって自分好みの一台をつくれるなど、カーライフの楽しさを予感させた。
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10005642/big_627887_201809111225380000001.jpg)
バリエーションが豊かな「アルト」シリーズ
それ以降、スズキは覚醒した。低価格一筋という印象が強かった「アルト」は新骨格『HERTECT(ハーテクト)』で基礎を鍛えなおしただけでなく、毎日見ても飽きない個性的なデザインを纏っていたし、女性チームが開発をリードした「アルト ラパン」や、走りにステータスを全振りした「アルト ワークス」といった、長所を際立たせたモデルも生み出した。
![アルト](https://motor-fan.jp/images/articles/10005642/big_627890_201809111228090000001.jpg)
![アルト ラパン](https://motor-fan.jp/images/articles/10005642/big_627891_201809111228200000001.jpg)
![アルト ワークス](https://motor-fan.jp/images/articles/10005642/big_627891_201809111228200000002.jpg)
クルマのキャラクターがひと目で伝わるデザイン
直近では大空間がウリの「スペーシア」をスーツケースに見立てて内外装の至る部分にそれっぽく見せる工夫が凝らされている。そして、極めつけはジムニーだ。いずれのクルマもコンセプトが明確な上に、その魅せ方が次第に巧妙になっている。
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10005642/big_627894_201809111230110000001.jpg)
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10005642/big_627894_201809111230110000002.jpg)
低燃費競争が苛烈だった時代は、0.1km/Lでも多く稼げとプレッシャーを掛けられた結果、魔法の力でクラストップの低燃費を叶えてもらうようなクルマさえ登場した。後に見破られたが、あの一件以来、消費者マインドは誤魔化しが効く数値よりも感性を重視する方向へ変わった気がする。
そんな変化を見据えていたかは不明だが、スズキのクルマづくりがピタリと噛み合ったのは間違いない。実際、全国軽自動車協会連合会が発表したランキング(2018年8月 軽四輪車 通称名別 新車販売速報)では、スペーシア(2位)、ワゴンR(7位)、アルト(8位)、ハスラー(9位)、ジムニー(14位)と軒並みランクインしている。
この流れを大切にしてほしい。カーシェアやレンタカーの普及が進めば、仕事で必要でもない限りクルマを所有する意味はなくなっていくだろう。それでもあえて所有するクルマには、これまで以上に強いクセが欲しい。さらに、働き方も変わり始めた。これからは“生涯掛けて熱中できる何か”を見つけた者が最後に笑う。そのとき、“クルマの開発”を志すかは、きっと現在のクルマづくりに懸っているのだから。
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