【ホンダCRF450L試乗】レーサー直系の公道モデルは意外とツーリングの相性良好!
MotorFan / 2018年10月10日 14時35分
ホンダCRF450Lに今回試乗したわけだが、400ccクラスのオフロードバイクに乗るのは2005年に登場したXR400モタード以来のことだ。まあXRはオフロードバイクといっても、オンロード走行をメインに前後17インチタイヤを装着したモタードなのでちょっとジャンルはちがうかもしれないけれど、いずれにしても、このクラスのオフスタイルバイクを前にして、年甲斐もなく緊張してしまったのである。 REPORT●栗栖国安(KURISU Kuniyasu)
ホンダ・CRF450L……1,296,000円
CRF450Lは、その名称からもわかるように、CRF250L(リーガル)とCRF1000Lアフリカツインの中間に位置するバイクだ。大型二輪免許を所持していなければ乗れないという難点はあるけれど、モトクロッサーCRF450Rの公道バージョンという特別感は魅力的だ。エンデューロに参戦するライダーだけじゃなく、林道ツーリングファンにも気になる存在じゃないだろうか。 というわけで、富士朝霧高原で行われた試乗会にさっそく参加。450のポテンシャルは一体どんなものなのか、富士五湖周辺のワインディングやダートを走行して、ツーリング性を検証してみた。
スタイルはまんまモトクロスマシンである。スリムなボディは車高が高く、シート高は895mmもある。XR400モタードとの比較になってしまうけれど、XRより40mmも高い。しかし、意を決して跨ってみると、想像していたより足は着く。サスペンションの沈み込みもあるが、シート形状がスリムなことが足着きを助けている。とはいえ高いことに変わりはなく、未舗装林道で轍が深く足場の悪いところでは、パタンと倒してしまう危険性は否定できない。131kgと車重がCRF250Lより軽いので、立ちゴケしたところでたいしたダメージは受けないだろうけど……。 450のシングルながら始動性はいい。セル一発で簡単に目覚めたエンジンは、パンチの効いた迫力あるサウンドを放つ。もちろん不快な音じゃないし公道走行モデルらしく消音もされているので、早朝の出発でも気が引けることは、たぶんない。
レーサー系直系とは思えないほど優しいエンジン
走り出してまず感じるのは、車体の軽さ。車高があるのにフラツキのない直進安定性を見せてくれる一方で、ハンドリングは軽快そのもの。バンク操作に重さがないので、たとえば狭い路地での右左折が気を遣うことなくできる。こうした高い機動性は市街地走行でも大活躍間違いなし。
CRF450Rベースということで、パワフルだけどちょっと扱いづらいんじゃないだろうか?と懸念していたエンジンだけど、穏やかな特性へとうまく抑えている。低中回転域でトルクの太さを実感するけれど、スロットルレスポンスに過激なところはなく、高回転域までスムーズに吹け上がる。3500rpmで最大トルクを発生させるエンジン特性としているので、一般道やダート走行では力強く、そして高速クルージングは快適という二面性をうまく両立させている。今回は高速走行できなかったのだが、100km/hのクルージングは難なくこなすことは理解できる。
印象深かったのは前後サスペンションの秀逸さ。変にフワフワした動きはせず、それでいて衝撃吸収性が高いから、ワインディング走行でも不安がまったくない。ハンドリングは軽快なのに重心が高いから、コーナリング体勢に入ったときに体が大きく振れるので、こうしたオフロードタイプのバイクでは不安を覚えるものだ。だがCRF450Lはサスペンションが優れた減衰特性を見せ、タイヤをガッチリと路面に押さえつけてくれる。オフタイヤを履いているので高いグリップ性は期待できないけれど、けっこうワインディングが楽しめる。タイトな峠道ではおそらく、ロードスポーツよりスピーディに走ることができる。
私自身、普段ダート走行することはほとんどないのだが、今回はオフロードバイクなので、土や砂利の道を走ってみた。結論からいうと、普通に走ることができた。石や轍にタイヤを取られても不安定な状態にはならないのだ。衝撃の大小にかかわらず、サスペンションはつねに適切な吸収性を発揮し、車体の挙動を抑えてくれる。だから不安なく普通に走ることができたのだ。
このように、走行性に関しては高いツーリング性を見せてくれる。ただし、細身のシートは長時間走行にはやはりつらいし、荷物の積載スペースも少ない。もしアドベンチャーツアラー的に使おうとするなら、旅の装備を充実させるカスタマイズが必要だ。車両価格も含めてかなりの出費になってしまうけれど、ツーリングバイクとしての素性は良いと思えたのは事実だ。
ディテール解説
■主要諸元■
・車名・型式 ホンダ・2BL-PD11
・全長×全幅×全高(mm) 2,280×825×1,240
・軸距(mm) 1,500
・最低地上高(mm)★ 299
・シート高(mm)★ 895
・車両重量(kg) 131
・乗車定員(人) 1
・燃料消費率※1(km/L)
国土交通省届出値 定地燃費値※2
31.0(60km/h定地走行テスト値)<1名乗車時>
WMTCモード値★(クラス) 25.7(クラス2)※3<1名乗車時>
・最小回転半径(m) 2.4
・エンジン型式・種類 PD11E・水冷 4ストローク OHC(ユニカム)4バルブ単気筒
・総排気量(㎠) 449
・内径×行程(mm) 96.0×62.1
・圧縮比★ 12.0
・最高出力(kW[PS]/rpm) 18[24]/7,500
・最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 32[3.3]/3,500
・燃料供給装置形式 電子式<電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)>
・燃料種類 無鉛プレミアムガソリン
・始動方式★ セルフ式
・点火装置形式★ DC-CDI点火
・潤滑方式★ 圧送飛沫併用式
・燃料タンク容量(L) 7.6
・クラッチ形式★ 湿式多板コイルスプリング式
・変速機形式 常時噛合式6段リターン
・変速比
1速 2.357
2速 1.705
3速 1.300
4速 1.090
5速 0.916
6速 0.793
・減速比 (1次★/2次)2.357/3.923
・キャスター角(度)★/トレール量(mm)★ 29°30´/127
・タイヤ 前 80/100-21M/C(51P)/後 120/80-18M/C(62P)
・ブレーキ形式 前 油圧式ディスク/後 油圧式ディスク
・懸架方式 前 テレスコピック式/後 スイングアーム式(プロリンク)
・フレーム形式 セミダブルクレードル
(Honda測定値)
*製造事業者/本田技研工業株式会社 熊本製作所
■道路運送車両法による型式指定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)
※1 燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境(気象、渋滞など)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります
※2 定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です
※3 WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果に基づいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます
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