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【モンキー】49ccのままで125km/h!! 驚速エンジンの”秘密のレシピ”を教えます

MotorFan / 2018年10月27日 11時25分

【モンキー】49ccのままで125km/h!! 驚速エンジンの”秘密のレシピ”を教えます

数あるモンキーカスタムの中でもノーマル排気量でのチューニングはとくにディープ。そんな世界で名を馳せる凄腕プライベーターが、49cc&8インチベースの車両で125km/hの最高速を叩き出した!そのキモとなった心臓部(エンジン)を大公開。【月刊モトチャンプ2018年10月号より】 PHOTO●小林克好 REPORT●モルツ

4スト50ccレース用がベース

車体は4スト50㏄レース参戦車に手を加えたもので、クラッチとミッションはキタコ製。前後サスはデイトナ製、スイングアームはGクラフト製6cmロングを組む。ギヤ比の変更やアウターローターの軽量化など、定番からマニアックなチューンまで余すことなく手が加えられた究極の49㏄ 8インチマシンだ!

最高出力7.77psとワイドなトルク特性!

1万1000rpm付近から7psを超え、1万4000rpm以上まで持続。最高出力7.77psももちろんだが、全体的にトルクが太いのも驚きだ。パワーとの兼ね合いから通常は0.4〜0.45kgm程度になるところ、こちらは0.47kgmを実現。これはクランクバランスの変更によってトルクが増しているためと並木さんは推測している。

耐久性にも配慮した定番+独自チューン

 モトチャンプ誌でお馴染みのモンキーチューナーから、49㏄で最高速125㎞/hをマークしたという情報が届いた。取材班は早速、彼のガレージへ赴き詳しい話を聞くことに。この記録を達成したのは、8月16日に富士スピードウェイで行われたマックスゾーン第2戦でのこと。「当日は追い風だったのでたまたまです」と謙遜しつつもこれは公式記録であり、この速度をハイスピードに不利な8インチ仕様で成し遂げている点も見逃せないところだ。

 並木さんは、2万rpm近くまで回る超高回転型エンジンを開発するなど“そこまでやるか!”という過激チューンで知られるが、今回はノーマル排気量でのトピック。「4スト50レースが転機でした。それまではストリート前提でのカスタムが主でしたが、ロスを徹底的に排除して少ないパワーを絞り出す面白さに気づかされました」と、まさにチューナー冥利に尽きる課題だったのだ。

 その結果、完成したのが最高出力7.77㎰を叩き出すエンジンである。ピーク回転数は1万3500rpmを狙ったが、結果的には1万1500〜2000rpmに落ち着いた。パワーこそ正義とまでは言わないが、あればレースでも有利なのは間違いないし、最高速アタックに限って言えばパワーグラフの数値からおおよその結果が見通せるのも事実。
 パワーアップとトレードオフになる耐久性についても熟考されており『2時間走りきれない改造はしない』をモットーに、クランクやコンラッドなど耐久性に難が生じる箇所には一切手を付けていない。並木さんは「一瞬の計測だけなら8㎰超えも可能だと思いますが、普段使いとサーキットを両立できなければ成功とは言えないと思っています」という信念を持ってマシンを作っている。

 さて、今回の記録達成は、懇意にしているカスタムショップBREの長谷川社長&店長などお仲間の助力、そして幾度もの試行錯誤があって実現した。その証拠に、最近は週に1回、多い時では3回も同店に訪れて情報交換をしつつシャシダイでのパワーチェックを行なっており、並木さんのガレージにはストック部品とそれ以上の失敗作がごっそり保管されている(バルブスプリングだけでも100個以上)!それだけ49㏄でのチューニングは難しいのだ。「124㏄クラスならポート加工を多少失敗しても排気を絞ったり、バルブタイミングでごまかすこともできますが、49㏄ではそれがまったく通用せず、一つ間違うとパワーが出ません。また、会心の出来栄えのピストンを別のシリンダーに入れ替えたら、なぜか0.5㎰以上も落ちるなんてことも日常茶飯事で、部品同士のマッチングもシビアです。ようやく方向性が見えた段階で、まだまだ完成には程遠いです」と並木さん。49㏄モンキーはどこまで速くなるのか。その可能性に魅せられた男の野望はまだまだ尽きない。

K.N CUSTOM 並木一義さん 本誌に幾度も登場しているモンキーチューンのスペシャリスト!2年前から参戦している4st50レースをきっかけに純正排気量でのチューニングにどっぷり。コアな情報が詰まったブログはこちら(https://93094163.at.webry.info/)。

ピストン:最大のキモは“混合気のセンター寄せ”!

左:加工前 右:加工後

キタコ製モンキーFI用ハイコンプピストンのスキッシュ部分を大胆に削って中央部に厚みを持たせている。これによって混合気を中央に集め、バルブを奥に追いやることで圧縮低下を防ぎ、無駄なく燃焼させることに成功。この山(クラウン)の角度や形状でピークパワーは大きく変化するという(※写真は試作品。左は比較用のキタコ製12V用ハイコンプ)。さらに、スリット加工を施して潤滑効果を高め焼き付きを防止。

シリンダーヘッド:ポート形状に秘密あり!?

左:12Vモンキー用 右:モトラ用

モトラ用のハイカムを使用するため、シリンダーヘッドも同車種用をチョイス。燃焼室はバルブの作用角に対して追い込み加工を施したうえ、0.5mmほど面研磨することで圧縮を維持。各ポート加工については秘密だが、入口付近には手を加えず、内側にだけ独自の処理を施している。なお未計測だが、圧縮比13.5は出ているとのこと。


今回は使用していないが、リーズナブルにパワーアップするためリン青銅の素材から削り出したシートリングもワンオフ製作している。この素材は耐摩耗性や耐熱性に優れ、バルブフェイスへの攻撃性も抑えられるのが特徴だ。

シリンダー:冷却効率を高めるジェット加工


シリンダーは12Vモンキー純正。これにドリルで1.2㎜の穴を貫通させ、ピストンの裏側にオイルを直接散布して冷却効果を高めるオイルジェット加工を施している。ピストンが高温になるチューンエンジンや耐久レースなどではトラブルを未然に防ぐためメジャーな手法であり、「レースの際、焼き付いてもここからオイルが潤滑するので、一時的にでも持ちこたえられるようにしました。これには何度か助けられていますね!」と並木さん。


プラグ:ロングリーチ+スペーサー


NGKレーシングプラグロングリーチ(9番)を使用。これにワンオフのアダプターを追加し、この高さによって任意に点火時期を遅角させることも。今回の仕様では、デイトナ製CDIで点火時期を35度に設定し、プラグアダプターで-2度(33度)に変更。

カムシャフト:カムプロファイルでチョイス

左:12Vモンキー用 右:SP武川製ハイカム

ハイカムシャフトはSP武川製のモトラ用(写真右)を使う。モンキー用とはベアリングの支持部の形状が大きく異なるのが特徴。カムはサージングに大きく影響するため、このハイカムのカムプロファイルが、自身が目指す耐久性とパワーアップを両立したエンジン特性に合致していたので採用した。

左:モトラ純正 右:SP武川製

SP武川製のモトラ用ハイカムはリフト量がIN5.0㎜/EX5.9㎜、バルブ作用角はIN226度/EX236度の設計。リフトカーブはなだらかに大きく、バルブが開いている時間が長いためオーバーラップに優れる。

バルブ:モトラ純正は改造に最適!?


バルブもモトラ純正でこちらはモンキーRと同じ。モンキー純正品よりも吸気、排気バルブともに1㎜大きく改造ベースに適している。ウエスト加工して5㎜から4㎜にスリム化し、流入抵抗を低減。なおバルブフェイス角は45度のまま変更なし。

ロッカーアーム:6V用で耐久性を重視

左:12V用 右:6V用

高回転を狙うならロッカーアームは軽量化がセオリーだが、あえてカムとの接触面が大きい6V系の純正品(写真右)を使用する。面圧を軽減することでカム山の摩耗を抑える耐久性重視のセレクトだ。これを12Vモンキー純正と同等程度(約36g)まで削り、アジャストスクリューをチタンナットで組み付けてスムーズに回るように仕上げている。



バルブスプリング:スペーサーで張力をコントロール


社外、純正問わず状況に適した様々なバルブスプリングを使用し、今回は荷重24kgのものを装着。ポイントはスプリングのセット長を任意に変更できるように、何通りもの高さのスペーサーを自作していること。エンジンによって入れ替え、適正なテンションが掛けられるようにしている。リテーナーは軽量化し、高回転域での追従性をアップする。

バルブスプリングの選別は自作のテスターで判断する。セット圧+フルリフト時の圧力を計測でき、装着時を想定してテストできるのだ。

クランクシャフト:ウエストバランスを大きく改善

加工後(CD50系)
12Vモンキー純正

CD50系のクランクシャフトを流用し、ウエイト部を削っている。回転に片寄りのあるウエイトバランスを見直し、軽やかに回るフルカウンタータイプの特性にアレンジ。なおバランス率は極秘とのこと。これに伴い、オイルポンプはシフトアップ製の大容量タイプに変更し、ケース側のオリフィスを1.5㎜に拡大してオイル流量を増大している。

こちらは並木さんが過去に製作した1万9000rpmまで回る超高回転型のクランクシャフト。社外品でもよく見られるが、カウンターウエイトが大幅に削られ“おにぎり型”になっているのが特徴だ。

自作のクランクバランス測定器。芯出しと上下バランスを細かに測定でき、これを元に加工を進めていく。

キャブレター:呼気ロスを最大限防ぐ!



キャブレターはセッティングが出しやすいとのことからCR-mini(φ22)を組む。マニホールドには、キャブの段付きに合わせたスリーブ付きのスペーサーを追加してシリンダーヘッド間のガタ付きを防ぎ、吸気漏れを極力なくしている。

富士の最高速アタックでライダーを務めた長谷川さん(BRE店長)曰く「直線は約1.5kmあるのですが、早い段階で吹け切ってしまい、空気抵抗をなくすため丸くなりながら、暴れまくる車体を抑えこむのに苦労しました」。またマフラーを作ったのも彼で、管長を長めに取り、エンジン回転数に応じてタイミングよく排圧が掛かるように緻密に設計されている。

これはエンジンを組んだ状態から、バルブタイミングとピストントップ位置が一度に計れる治具。SP武川の全円分度器や市販のメーターを使って製作。「ラクをするための道具です!」と並木さん。

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