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ホンダ・シビック:シビック・セダンこそが、ホンダでもっともレーシングカーとの結びつきが強いクルマ

MotorFan / 2018年10月27日 18時0分

ホンダ・シビック:シビック・セダンこそが、ホンダでもっともレーシングカーとの結びつきが強いクルマ

ホンダ・シビックはホンダにとって重要なモデル名だ。だが、しばらく国内から姿を消していた。久しぶりに国内投入されたシビックは、シビック・タイプR、シビック・ハッチバック、そしてシビック・セダンというラインアップで構成されている。F1日本GPが開催された鈴鹿までロングドライブしたジャーナリスト、世良耕太がシビックを語る。 TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)


 例年のことだがF1日本グランプリ取材のため、東京〜鈴鹿サーキット(三重県)間を往復することになった。これ幸いとばかりに、機会があったら乗りたいと思っていたクルマに乗ることにした。

 ホンダ・シビックセダンである。F1の取材に行くのにこれ以上ないチョイスだと自画自讃しておく。モータースポーツと結びつけるならシビック・タイプRとかNSXとか、S660とかを思い浮かべてもよさそうなものだが、違うのである。筆者に言わせれば、シビック・セダンこそがホンダのラインアップでもっとも、レーシングカーとの結びつきが強いクルマだ。


 空力技術の面で。なにしろ、F1やスーパーGTなどのレーシングカーの空力開発に携わった、あるいは現在も携わっている技術者が形を決めたのだから(エクステリア開発側と連携しながら)。

 ホンダはユニークな会社で、量産車の空力開発とレーシングカーの空力開発を同じ部門で手がけている。現在スーパーGT GT500クラスに参戦しているNSX-GTの空力開発を担当しているエンジニアが、量産車の空力開発にも携わっているのだ。なかでも、シビック・セダンはモータースポーツの空力色が濃い1台である。

 レーシングカーにとっての空力性能は、動力性能と並ぶほど重要だ。F1やスーパーGTの場合、いくら動力性能にすぐれていても、空力性能が劣っていては勝負にならない。ところが量産車の場合は、レーシングカーほど空力性能は重要視されない。トップカテゴリーのレーシングカーに比べれば確かにそうだ。だが、影響は大きく、そこに着目して開発したのがシビックセダンである。

 一般に、量産車では車速の上昇とともにリフト(揚力)が発生する。空気の圧力差が車体を浮き上がらせようとし、その結果、タイヤの接地荷重が減って挙動が不安定になる。あるいは、意図通りに反応・収束してくれない。高速域になればなるほど、その傾向は強くなる。「なんだかフラフラする」とか、「理由はわからないけど、高速になればなるほど不安」という経験をしたことがあるかもしれない。

 シビックセダンの開発では、高速走行時の安心感と低燃費を実現するための空力開発に取り組んだ(以下、『新型CIVICの高速操縦安定性のための空力技術』真塩享/皆川真之 Honda R&D Technical Review Vol.29 No.1 April 2017を参照)。

 シビックセダンのようなFF車では重量配分が前寄りになるため、タイヤの垂直荷重はフロントに比べてリヤが小さくなる。そのため、フロントよりもリヤのほうが、垂直荷重の変化に対して敏感になる。運動特性に置き換えて表現すれば、高速になるほどオーバーステア傾向になるといわけだ。

 シビックセダンの開発では、この特性を穏やかにすることを高速操縦安定性の目標とした。また、低燃費を実現するために、空気抵抗の低減を目指した。エクステリアに絞って(床下は除く)具体的な策を紹介していこう。




 ポイントは3つ。1つ目はボンネットフード前端を張り出させたこと。2つ目は1つ目のフード前端の張り出しと合わせ、ルーフのピークを前側に設けたこと。フード前端の張り出しとルーフピークの前方化は、車体上面に発生する負圧域を前方化させるのが狙いである。これにより、リフトの発生領域がフロント側に移動(発生するリフト量自体は変わらない)。その結果、車体中心に働くピッチアップモーメントが増える(フロントを持ち上げ、リヤを沈ませる動きが生まれる)ため、リヤのリフトが小さくなる(タイヤの接地荷重が減らない→リヤが安定する)。

 3つ目のポイントは、Cピラーの根元を後方に引き、リヤウインドウ部分の角度を浅くしたことだ。前型シビックはCピラー側面とルーフ後端の空気の圧力差が大きかったが、新型シビックセダンは両者の圧力差が小さくなっている。圧力差が大きいと、車体側面からルーフ後端に回り込む流れが起き、Cピラーの下流で縦渦が発生する。ウエット走行時などでF1マシンのリヤウイング翼端板から糸を引くような白い渦が見えることがあるが、あれと同じ現象である。誘導抵抗が可視化されたものだ。


 その抵抗を小さくするためにも、車体側面とルーフ後端の圧力差は小さくしたい。シビックセダンの開発では、デザイン側の要望と空力側の要望をすり合わせながら、車体側面とルーフ後端の圧力差が小さくなる(すなわち、空気抵抗が小さくなる)形状とした。結果的に、クーペのようなシルエットになっている。どれもこれも、レーシングカーの空力開発で蓄積した技術を生かしたものだ。

 シビックセダンの空力はモータースポーツ直系の空力であることがおわかりいただけただろうか。空力性能の本領を発揮させるなら、ドイツにあるアウトバーンの速度無制限区間を走り、180km/hあたりでレーンチェンジしてみるのがいいだろう。ドライバーになんの不安も抱かせずスッと反応して隣のレーンに移動し、スッと収束するはずだ。


ホンダが久しぶりに投入したターボエンジン──L15B T/C

 最高速度110km/hの区間が試験的に設定されたとはいえ、新東名での走行などお茶の子さいさいである。スタビリティや操安のみならず、静粛性や動力性能(1.5ℓ直4直噴ターボ+CVT)、それに燃費も期待以上で、実に快適なロングツアラーであった。ま、レーシングカーの空力エンジニアが精魂を傾けて開発に取り組んだと聞いた時点で、惚れ込んでしまっているわけだが……。




フロントサスペンション 形式はマクファーソンストラット

マルチシンクのリヤサスペンション


ホンダ・シビック セダン
■ボディ寸法
全長×全幅×全高:4650×1800×1415mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1320kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット/Rマルチリンク
駆動方式:FF
■エンジン
形式:直列4気筒DOHC直噴ターボ
エンジン型式:L15B
排気量:1496cc
最高出力:173ps(127kW)/5500rpm
最大トルク:220Nm/1700-5500rpm
使用燃料:レギュラーガソリン
■トランスミッション
CVT(マニュアルモード付)
■燃費
JO08モード燃費:18.6km/ℓ
車両価格:265万320円(試乗車288万2520円op込み価格)

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