【新型SR400試乗レポ】決して速いわけではないけれど、それが楽しい。心地良い。/ヤマハ
MotorFan / 2018年11月13日 14時20分
SRのサイドカバーにさりげなく明記されたSINCE 1978の文字。どこか微笑ましく、そしてちょっぴり誇らしげにも感じられる。もう40年も前からこのスタルで市販されているロングセラーモデルが平成28年排出ガス規制をクリアして11月22日より新発売される。 REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
ヤマハ・SR400……572,400円〜
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進化という名の下に目まぐるしい変貌を遂げていく多くの製品群の中にあって、SRはまさに異端児だ。細部やカラーリングは別として、基本的には、筆者がまだモト・ライダー誌の編集部員だった大昔に目にした当初のスタイルと何ら変わりがないのである。
ハイパワーマルチへの憧れが全盛だった時代に放たれたビッグシングルスポーツというカテゴリーは当時でも懐古的ではあったが、ライバル無き存在として注目度はかなり高かった。少しだけ補足しておくと搭載エンジンはエンディーロモデルのXT500で開発された物。当然SRは500も存在し併売されたが免許制度の関係で400が主力商品となる。これまでキャストホイールの装着やあえてドラムブレーキの採用等、そしてキャブレターからインジェクションへの変遷は経てきているが、見た目はまさに当初のまま。現在は400のみの販売となっている。
余談ついでにSRの商品開発は、モト・ライダー誌がかつて企画し、長島英彦さんの手でオリジナル製作されたロードボンバーの存在抜きには語れないだろう。あまりにも大きかった同誌読者の反響が、SR発売への引き金になったことは間違いないからだ。この話題はいずれまたモーターファンjpでも掲載する機会が訪れると思っている。
![大排気量4気筒が台頭する1970年代後半に、モト・ライダー誌の企画で実現したXT-S500ロードボンバー。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006482/big_757600_201811130945430000001.jpg)
バイク然としたオーソドックススタイル
さてSR400は、どこを見てもオーソドックスな設計装備で成り立っている。スタイリングしかり、スチール製セミダブルクレードルフレームや前後スポークホイール、エンジンは空冷のSOHC。始動方法は今や絶滅状態にあるキック方式。「何それ」?と思う人も少なくないだろう。
頑固という言葉は相応しくない気がするが、昔から変わらぬ一徹な主張を込めた造りにはシンパシーを感じられるから不思議だ。走りの性能やスペック勝負、ましてや斬新な要素には一切無縁のところに、SRの個性とSRならではの魅力が潜んでいるのである。
走らせるのに、先ずはキック始動というセレモニーが必要。流石に電子制御の燃料噴射だけに、キック一発で目覚めてくれた。ライダーとして古い感覚を持ち合わせている筆者にとっては、心の中で「ヤッター」!とひりほくそ笑む瞬間がそこにある。ちなみに暖機後の再始動では少々手こずるシーンもあったが、それでもフルストローク3回程度のキックで始動でき、マスツーリングで一人置いてきぼりになる事もないだろう。
![カムシャフト右端に設けられたキックインジケーター。慣れれば見なくてもOKだが、写真の小窓を覗くことでピストンの上死点位置が容易に探し出せる。金属マークが見えればキックOKだ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006482/big_757603_201811130957280000001.jpg)
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心地よい4000rpmの鼓動感
初代SR500のパンチ力を知る筆者にとって SR400は少々非力に感じられる点に不満を覚えた事があったが、新型の印象は実用域での出力特性が豊かに調教されていて、スロットルレスポンスにトルク不足は感じられない。かつ、とても扱いやすいものだった。
高回転域まで引っ張ると回転に比例して震動も多くなるので、だいたい4000rpm前後までを駆使していくと穏やかで快適な乗り味を享受できる。 軽やかに、しかしトルクに十分な太さが感じられる鼓動との語らいが妙に心地よい。一言でいうと落ち着いた乗り味なのだ。
最大トルクの発生回転数は3000rpm。それだけでもSRが希有な存在であることがわかるだろう。アクセルをワイドオープンする事なく、早め早めにシフトアップしても加速感は衰えを知らない。逆に言うと思い切り引っ張ってもそれほど速くはないのだが、トトトッとさり気ない加速感の中に逞しい底力がある。心に大きなゆとりを持てる感じなのだ。
重すぎない車重と素直なハンドリング。タンデムツーリングにも快適な乗り味が得られる適切なライディンポジション。気が向いた時に気の向くまま散歩気分で心地よい風を浴びに行く。そんなシーンにピッタリのバイクだ。お互いが良く分かり合えた相棒の様な感覚で永く付き合える点に改めて独特の魅力が感じられた。
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足つきチェック(ライダー身長170cm)
![車体がスリムなので、足つきはご覧の通り楽に地面を捉える。シート高は790mm。膝にも余裕があり、両足共にベッタリと地面を踏ん張ることができた。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006482/big_757607_201811131000430000001.jpg)
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ディテール解説
![セリアーニタイプのフロントフォークにはインナーチューブを保護する蛇腹のラバーブーツが装備されている。クロームメッキフェンダーはスタビライザー効果もあるスチール製。ブレーキはφ298mmのシングルディスクローターと異径2ピストンキャリパーはピンスライド式だ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006482/big_757611_201811130955350000001.jpg)
![ビッグシングルと呼ぶに相応しいボリュームを感じさせる空冷単気筒エンジン。シリンダー及び同ヘッドの冷却フィンデザインも昔から変わらない。バフ掛けされたクランクケースカバーも美しい。排出ガス規制対応でキャニスター(蒸発ガス浄化室)が新装備された。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006482/big_757612_201811130955330000001.jpg)
![今や前世紀の遺物!? 多くの一般市販車の中でもはや唯一の存在と言えるキックレバーが採用されている。セルモーターはなく、エンジン始動は足踏みによるクランキングのみ。初めて扱う人には、それなりの慣れが必要となるだろう。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006482/big_757613_201811131011340000001.jpg)
![ごくなだらかに、その位置を少し高められていくストレートマフラーがスマート。ピリオンステップ位置が高すぎず、タンデムライディングも快適にこなせる基本機能は見逃せない魅力点だ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006482/big_757614_201811130955340000001.jpg)
![このデコンプレバーこそキック式を採用する、まさにSRならではの装備だ。レバーを握ると排気バルブが開放されてピストン上昇時の圧を抜く仕組み。これを使うと上死点を探し出す時の操作(踏)力が軽減される。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006482/big_757615_201811130955360000001.jpg)
![適度にアップされたバーハンドルも綺麗にクロームメッキ仕上げされている。ステアリングヘッド位置は低くないが、少しスポーティな雰囲気のポジションは街乗りにも程良い。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006482/big_757616_201811130957290000001.jpg)
![これも昔のままのイメージを踏襲しているセパレートされたツインメーター。右がエンジン回転計でヤマハの音叉マークとSRの文字。左が速度計で共に白い文字盤が印象的。赤い指針のアナログメーターでオド&トリップメーターもドラムが回転するアナログ式だ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006482/big_757617_201811130957290000001.jpg)
![左側のスイッチ。小さな丸形のホーンボタンが懐かしい。その上はプッシュキャンセル式のウインカースイッチ。上はヘッドライトの上下を切り替えるディマースイッチ(左上)とパッシングスイッチだ。ちなみに右側はキルスイッチとハザードランプスイッチのみ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006482/big_757618_201811131007390000001.jpg)
![燃料タンク容量は12L。キーロック付きのフィラーキャップは捻って開ける方式。タンク前方、ステアリングヘッド直後の黒いキャップはドライサンプ式潤滑オイルタンク用。フレームの中にタンクが納められている。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006482/big_757619_201811131002250000001.jpg)
![フラットなダブルシート。昔はこれが当たり前のスタイルだった。クロームのグラブバーも装備されタンデムライディングでも違和感の少ない乗車姿勢が決められて、なかなか快適だ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006482/big_757620_201811131006490000001.jpg)
![フレームのV字ゾーンを巧みに使ったツールボックス。右サイドカバーの下にキーロック付きで装備。これも昔からあるデザインだが現在では珍しい存在と言える。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006482/big_757621_201811130957300000001.jpg)
![ツールボックスの中の専用ケースに納められていた車載工具一式。スポークのニップルレンチやドライバー兼用のプラグレンチも装備されている。キチンと丁寧に詰めないと元あったツールボックスの中に工具袋を戻すのが難しくなってしまう。つまりボックスの大きさはギリギリのサイズだ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006482/big_757622_201811130957310000001.jpg)
●主要諸元
認定型式/原動機打刻型式 2BL-RH16J/H342E
全長×全幅×全高 2,085mm×750mm×1,100mm
シート高 790mm
軸間距離 1,410mm
最低地上高 130mm
車両重量 175kg
燃料消費率
国土交通省届出値 定地燃費値 40.7km/L(60km/h) 2名乗車時
WMTCモード値(クラス) 29.7km/L(クラス2 サブクラス2-2) 1名乗車時
原動機種類 空冷・4ストローク・SOHC・2バルブ
気筒数配列 単気筒
総排気量 399cm³
内径×行程 87.0mm×67.2mm
圧縮比 8.5:1
最高出力 18kW(24PS)/6,500r/min
最大トルク 28N・m(2.9kgf・m)/3,000r/min
始動方式 キック式
潤滑方式 ドライサンプ
エンジンオイル容量 2.40L
燃料タンク容量 12L(「無鉛レギュラーガソリン」指定)
燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式 12V,2.5Ah(10HR)/GT4B-5
1次減速比/2次減速比 2.566(77/30)/2.947(56/19)
クラッチ形式 湿式, 多板
変速装置/変速方式 常時噛合式5速/リターン式
変速比 1速2.357/2速1.555/3速1.190/4速0.916/5速0.777
フレーム形式 セミダブルクレードル
キャスター/トレール 27°40′/111mm
タイヤサイズ(前/後) 90/100-18M/C 54S/110/90-18M/C 61S (前後チューブタイプ)
制動装置形式(前/後) 油圧式シングルディスクブレーキ/
機械式リーディングトレーリングドラムブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック/スイングアーム
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ ハロゲンバルブ/12V,60/55W×1
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