日産セレナe-POWER:クルマとしてのデキや高級感は2.0ℓ系より明らかに上をいく
MotorFan / 2018年11月19日 17時15分
旬なクルマの情報を網羅した「モーターファン別冊 統括シリーズ」。今回は「Vol.108 2018-2019年 最新ミニバンのすべて」から「日産・セレナe-POWER」を抜粋してご紹介。 レポート=佐野弘宗[本文]/小林秀雄[写真解説] フォト=平野 陽
優秀な静粛性や燃費性能と 実用域でのスムーズな乗り味
セレナe-POWERはクラス最後発のハイブリッドだ。同クラスハイブリッドの元祖はトヨタだが、もう一台のライバルとなるホンダのスパーダハイブリッドは昨年9月末発売。つまり、日産が最後発といっても2番手のホンダとはわずか半年差。このクラスを寡占するトヨタ、日産、ホンダの三社は、販売だけでなく、クルマづくりや企画でもカツカツの競り合いを続けている。
セレナのハイブリッドには、エクストレイル用の2.0ℓ2モーター式ではなくe-POWERが選ばれた。e-POWERはエンジンが発電に専念して、直接駆動はモーターのみが担うシリーズハイブリッドである。シリーズハイブリッドの原理は古くから知られているが、本格商品化は実質的に日産e-POWERが世界初。セレナはその二例目だ。
セレナe-POWERのシステムは意外にもコンパクトカーのノート用と基本的に同じ。充電の源となるエンジンも1.2ℓのままだが、その最高出力を向上させて、駆動モーターの出力もアップ。さらにリチウムイオン電池も容量拡大するなど、ノートよりボディが大きく重いセレナに細部は最適化されている。
従来型のガソリン車と比較しても、e-POWER化によって居住性や実用性で犠牲を強いられる部分は、あまりない。ここで「まったくない」と言い切れないのは、e-POWER用のリチウムイオン電池が前席下に搭載される影響で、その部分のフロアがわずかに盛り上がっているからだ。その盛り上がり自体はわずかなものなので、各席の配置や実効空間に影響はなく、前後ウォークスルーもそのまま可能である。ただ、これによってセレナ伝統のスマートマルチセンターシートが省略されて、2列目が必然的に独立キャプテン式となり、乗車定員も7名となっている。というわけで、どうしても8人乗りが必要な向きは、e-POWERが選択肢から外れてしまう。
さすが最後発だけに、26.2㎞ /ℓ(JC08モード)というカタログ燃費は現時点でクラストップ。発電用エンジンは1.2ℓなので、全開付近での伸びや長い上り坂などでは、さすがに同じセレナの2.0ℓ系(純エンジン車、S-ハイブリッド含む)に譲るものの、市街地や都市高速などの加減速が強いられるシーンでは、e-POWERが最もパンチに富む。数㎞だけ可能というバッテリーEV走行も深夜早朝などには意外に重宝するし、自慢のワンペダルドライブも、慣れれば同乗者を不快にさせない運転がとてもやりやすい。
また、重量増(2.0ℓ系比で60〜100㎏ほど重い)やe-POWER専用の静粛対策、そしてバッテリー搭載のための強化フロアの恩恵か、実用域での乗り心地や静粛性も、セレナではe-POWERが最も好印象。さらにレスポンスのいい電動動力のおかげで、あのプロパイロット走行時のマナーやメリハリもハッキリと向上している。
車両本体価格で比較した場合の2.0ℓ系に対する「e-POWER料金」はおおよそ50万円。この差額分を普通の使い方でモトを取るのはむずかしいが、クルマとしてのデキや高級感が2.0ℓ系より明らかに上をいくのは確かである。
e-POWER ハイウェイスターV
全長×全幅×全高(㎜):4770×1740×1865
室内長×室内幅×室内高(㎜):3240×1545×1400
ホイールベース(㎜):2860
トレッド(㎜) 前/後:1485/1485
車両重量(㎏):1760
発電用エンジン種類:直列3気筒DOHC+モーター
総排気量(㏄):1198
エンジン最高出力(kW[㎰]/rpm):62[84]/6000
エンジン最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):103[10.5]/3200-5200
モーター最高出力(kW[㎰]):100[136]
モーター最大トルク(Nm[㎏m]):320[32.6]
燃料タンク容量(ℓ):55(レギュラー)
トランスミッション形式:―
駆動方式:FF
タイヤ・サイズ:195/65R15
最小回転半径(m):5.5
JC08モード燃費(㎞/ℓ):26.2
車両本体価格:340万4160円
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