完全無欠のオフローダー、ジープ・ラングラーはもはや走れない道はない!?
MotorFan / 2018年11月23日 7時0分
日本ではジープブランドのラインナップ中、約4割の販売を占めるほど人気のラングラー。いかにもアメリカらしい骨太なデザインと卓越した悪路走破性に魅せられた人は多い。そんなジープを象徴するモデルが11年ぶりにフルモデルチェンジを行った。さらに強化されたオフロード性能と快適性が向上したというオンロード性能を試した。 TEXT◎吉田拓生(YOSHIDA Takuo) PHOTO◎神村 聖(KAMIMURA Satoshi)
このタイミングでなぜ? と思わずにいられない。本格オフロードモデルのフルモデルチェンジが続いているのである。メルセデス・ベンツGクラスやスズキ・ジムニー、そして今回のジープ・ラングラーである。
Gクラスのフルモデルチェンジでは、こと外観に関する限り新旧モデルの区別が簡単にはつかないほどだったが、それは今回のジープ・ラングラーにもいえる。新旧を見分ける鍵は、LED化されたヘッドランプがグリルの縦バーにわずかに食い込んでいるか否か。原初のジープであるCJ5のデザインにヒントを得たこのフロントマスクのデザインこそ新型の特徴なのである。
パッと見では区別のつきにくいジープ・ラングラーとはいえ、11年ぶりのフルモデルチェンジである。では何がどう変わったのか?
ラダーフレームはコの字型の鋼材が閉断面になって剛性アップ。一方ボディはドアや前フェンダー等がアルミ製になり、スペアタイヤを固定するリヤゲートにマグネシウムを採用し、先代比で40㎏ほど軽量化されている。また例によってフロントガラスが前に倒れ、4枚のドアが外せ、ルーフ全体を脱着可能という「オフローダーの神髄」ともいえる機構は残されるが、Aピラー上部から天井部分を這うように鋼鉄製のロールバーが張り巡らされるのでボディ全体はかなり強固なはずだ。
また地上高とそれにともなうアプローチやブレークオーバーアングル、渡河性能等によるオフロード性能は新型でもまったく犠牲になっていない。
パワートレインは3.6ℓのV6の他に、今回から2.0ℓ直4ターボも導入される。ギヤボックスはすべて8速ATに副変速機が付くのでラングラーの伝統はちゃんと継承されている。本邦導入モデルは3モデルから構成される。2ドアのスポーツはV6搭載だが、これは受注生産となる。一方4ドアモデルは直4ターボのアンリミテッドスポーツと、V6のアンリミテッド・サハラローンチエディションの2モデルが揃う。
今回の試乗会には直4ターボ、V6モデル共にあったのだが、我々が公道とオフロードコースとも試乗できたのはV6モデルだった。
エンブレムに頼ることなくジープの代表モデルであることを主張できるデザインは、外観のみならず室内も同様である。とはいえダッシュパネルのデザインや素材の使い方などはラフな感覚を売り物にしていた先代よりもかなり洗練されている。スポーツには7インチ、サハラには8.4インチのタッチパネルモニターが装備されているが、質感の上がったインテリアに違和感なく溶け込んでいる。
ちなみにナビゲーションシステム等はアップルカープレイやアンドロイドオート任せだが、使い勝手は良好であり、クルマの性格にマッチした割り切りであると感じた。
公道で試乗したサハラの第一印象は「静寂」だった。以前のラングラーはボディ全体から当たり前のようにキシミ音がして、ステアリングフィールも緩く感じられたが、新型のボディはミシリとも言わず、ステアリングも芯が出ている感じで現代的になっている。Gクラスはフロントに独立懸架のサスペンションを奢ってハンドリングの改善を図ったが、ラングラーは前後リジッドアクスルのまま、サスペンションストロークの長さもそのままに車体全体でブラッシュアップを果たしている。
3.6ℓのV6は既存のペンタスター・ユニットだが、こちらも8速ATの助けを借りて静粛性が増し、低速トルクも豊富な印象だった。シフトレバーの左側に生えた副変速機にはロー(4L)とハイ(4H)の他に、4Hオートのモードが加わった。これはラングラーとして初のオンデマンドモードで、必要な時だけ4駆になるというもの。スタート&ストップ機能と相まって確実に燃費性能の改善に効くはずである。
一方、本格的なオフロードコースで試乗したのは、来春に発売される予定になっている「ルビコン」というモデルで、これはラインナップ中最も走破性の高いモデルとなる。
前後のデフをスイッチひとつでロックでき、さらにスウェイバー(スタビライザー)を切り離す機能も付いたルビコンの走破性は想像以上だった。湿った泥の急坂で、さらに片側が深く掘れているような文字通りの悪路を、4Hオートのままでグイグイと上り切ってしまう。相変わらず、ボディをミシリとも言わせずに。
公道、オフロードともにボディの見切りが悪いことが気になったが、そこはある意味アメ車らしい大らかさでもあると感じた。この性能、この遊び心にして、500万円前後の価格というのはライバルが見当たらない。確実に進化したラングラーは自身を持ってお薦めできる1台だ。
※本記事は『GENROQ』2018年12月号の記事を再編集・転載したものです。
SPECIFICATIONS
ジープ・ラングラー アンリミテッド・サハラ ローンチエディション〈スポーツ〉
■ ボ デ ィサ イ ズ:全 長4870×全幅1895×全高1840〈1845〉㎜ ホ イ ー ル ベ ース:3010㎜ ■車両重量:1980〈1950〉㎏ ■ エ ン ジ ン :V型6気筒DOHC〈直列4気筒DOHCターボ〉 ボア×ストローク:96×83〈84×90〉㎜ 総 排 気 量 :3604〈1995〉㏄ 最 高 出 力:209kW(284㎰ )/6400rpm〈200kW(272㎰ )/5250rpm〉 最 大ト ル ク:347Nm(35.4㎏m)/4100rpm〈400Nm(40.8㎏m)/3000rpm〉 ■ トラ ン ス ミッ シ ョン:8速AT ■ 駆 動 方 式:AWD ■ サ ス ペ ン ション 形 式:Ⓕ &Ⓡコイルリジッド ■ブレーキ:ⒻベンチレーテッドディスクⓇディスク ■タイヤサイズ:Ⓕ&Ⓡ255/70R18〈245/75R17〉 ■ 環 境 性 能(JC08モ ー ド ) 燃 料 消 費 率:9.2〈11.5〉㎞/ℓ ■車両本体価格:530〈494〉万 円
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