モーターファン編集部年末トーク2018(2輪編)「今年を代表する2輪はホンダ・スーパーカブ! という当たり前の結論に至るまでの葛藤」
MotorFan / 2018年12月27日 17時30分
編集長K モーターファン編集長。4輪誌編集長も兼務。無類の車輪好き。クルマ1台、バイク4台を保有。 2輪担当編集A モーターファン2輪部門リーダー。2輪誌編集歴15年。小型バイクへの愛情過多。 技術担当編集M 技術担当編集として2輪から4輪まで辛口に評価。大型オフロードバイク保有。 司会:編集Y 4輪誌編集部にも所属。バイクの免許は持っているがペーパーライダーの門外漢。
2018年の2輪業界をモーターファン.jp的に総括してみよう
編集Y 今年の2輪業界はどんな年でしたか?
編集長K 2016〜17年にかけては排ガスのユーロ4適応があっていろいろあったけど、今年は大きなニュースがなかったような気がするな。
2輪編集A とはいえユーロ4規制を乗り越えて、ヤマハSR400やセロー、カワサキW800が復活してきたのは18年のうれしいニュースです。名車Z1の再来とも言えるZ900RSから続く流れですね。
編集Y ほかにもスズキ・カタナなんかも印象的でしたね。しかし、W800とかZ900RSはなんで復活したんですか? オマージュ的なものですか?
編集長K 日本のバイクは名車があっても、ずっと昔の基本設計を踏襲したまま作り続けてきたモデルが多かった。ところが、このところ欧州メーカーがヘリテージ、オーセンティック系のモデルをアグレッシブに展開してきて、それが人気になった。
2輪編集A デザインもモダンクラシックな感じで結構市場が盛り上がりましたね。
編集長K 欧州にもスーパースポーツ疲れみたいなのがあったんだな。一方で日本のバイクメーカーにはきちんとした歴史的モデルがあるのに、デザインや走りにおいてアップデートせずに売り続けていた傾向が強かった。2006〜08年にも排ガス規制の変更があって、もちろんその対応も大変だったんだけれど、今回のユーロ4への変更はさらに気合いを入れて作らなきゃいけなかった。それを機にヘリテージ、オーセンティック系を気合い入れて作ったら人気が出た……まとめるとそんな感じかな。
2輪編集A トライアンフにも似たようなのがあるけど、カワサキはホンモノの空冷だったり、いろいろ頑張りましたね。
編集Y この前、珍しく2輪の取材に立ち会ったのですが、最近日本にも入って来たインディアンなんかも、見た目はサイドバルブ風だけどOHVだったり中身は最新でした。そういうリバイバル的な演出は流行っているんですかね。
編集長K Z900RSなんかは色とかデザインが昔風なだけで、乗った感じは最新モデルだもんね。W800は空冷だったりして本格派だから、今年の傾向が単なるオマージュとくくることはできない。きちんと商品企画が適材適所で考えているなという印象だ。
2輪編集A ユーザー側もそれを柔軟に受け止めている節がありますね。
技術編集M とはいえ、今年出たバイクはまずマーケットありきのものばかりだった気がしています。たとえばカタナが昔人気だったから新しいカタナを作って、ZシリーズがあったからZ900RSを出して、モンキーが人気だったから125を出したり。そういうマーケットインの商品ばかりでした。日本2輪メーカーは本来、世界をリードするはずであるべきでしょう。今の日本メーカーの技術力を持ってすれば、もっと画期的なものを作れるはずなのに、あまり技術チャレンジが見られなかったのは残念です。
編集長K そうかなあ。今年はヤマハNIKEN(ナイケン)とホンダ・ゴールドウィングが出たんだけど。NIKENは前2輪のスポーツバイクだし、ゴールドウィングはフロントサスをダブルウイッシュボーンにしたり、すごい挑戦があったと思うけど。
技術編集M たしかにそういうバイクもあるけど、クルマで言うミニバンみたいな“売れるから作る”バイクが多過ぎでしょう。今年は1988年頃にあったような雰囲気や気概がないですよ。なにかしら出力とか性能でこだわりを感じるものがなかった。
編集Y 商品企画が勝ちすぎてしまったってことですかね? 怒りが収まらないようなので次の話題にいきましょう。
2輪編集A 個人的に今年はCB125Rが印象深かったかな〜。最初はこんなの誰が買うんだろうって思ったけど乗ったらよかった。他にも250R、1000Rとかもあるんですけど。
技術編集M (写真を見て)結構カッコイイじゃないですか。これは昔のヤマハSDRみたいなもんですね。
2輪編集A こういうのは輸入車に任せればいいのにと最初は思ったんですが、いざ乗ったら原付(二種)とは思えないくらい、こんなにちゃんと走れるなんて、と感激しました。125ccのミッション車は空冷が主流の中、水冷でかなり本格的なスポーツバイクでしたね。
編集長K 125ccなのにシート高が815mmもあったりして、いろいろ突き抜けているよね。
2輪編集A このクラスが軒並み30万円台なのに、CB125Rは約45万円だから結構高いんですけどね。
編集Y これなら技術編集Mも納得?
技術編集M たしかに、みんな良く出来たバイクですよ。でも国産4社はやっぱり世界のトップレベルであって欲しかったんです。パッションとかじゃなくて技術で。
編集Y まだ怒ってる。
今年の1台はやはりあのバイク……?
編集長K あと今年はホンダのディーラーが4月からドリーム店とコミューター店になったのも大きな話題だね。通勤路のいろんなお店が改装していた。
2輪編集A スズキ以外はカワサキやヤマハなんかも、そっと始めてますね。ちなみにホンダが専売店をやるのは車検が必要な排気量以上のラインナップですね。つまり251cc以上の白ナンバーのバイク以上は専売店じゃないと買えないってことです。
編集長K カワサキのH2を売りたかったら、ホンダが売れなくなる。この専売店化は、たとえばスズキ・ハヤブサを買って仲良くなったお店で、次はカワサキH2を買う、みたいなことができなくなるから、昔からバイクを乗り継いでいる人にはデメリットもある。でもホンダのバイクを買いたかったらホンダの店に行けばいいのだから、一般的にはわかりやすくなったと言えるだろうね。
編集Y これまでいろんなメーカーのスポーツバイクを取り扱っていたお店で、どれにしようかな?ってのができなくなるわけですね。
技術編集M クルマのディーラーと同じですね。
編集Y さあ座談会も締めに入りましょう。2018年のMOTYは何にしましょうか?
技術編集M MOTYってなんですか?
編集長K モーターファン・モーターサイクル・オブ・ザ・イヤーの略。
編集Y 今年最大の話題はなんといってもスーパーカブじゃないですか? スーパーカブ50と110が発売されたのは17年末でしたが、実質的にデリバリーが始まったのは18年ですし、クロスカブやC125の発売も18年でしたから。
編集長K 自分も買ったしな。
2輪編集A 戦後を支えた名車ですね。復旧した熊本工場で作ったりってストーリー展開もいい。
技術編集M まあ、スーパーカブはいいんじゃないですか。
編集Y それだけ(笑)?
技術編集M じゃあ、ほぼモノコックだけみたいな構造で、水平シリンダー、17インチという世にも珍しいフォーマットを守り続けていることですかね。NSUはあったけど。電動化にも走らず。欲を言えば値段をもう少し抑えて欲しかった。
編集長K いや、ユーロ4対応の技術を考えれば、逆に安いくらいだよ。排気量が小さいほど実は大変だし。スーパーカブは台数が出るから作れたけど、ヤマハ・メイトやスズキ・バーディーが過去に生産中止になった要因のひとつに排ガス規制があったのは間違いないからね。
技術編集M ボクはドゥカティ・パニガーレですかね。これまでVツインを通してきたのに、パラツインVがけ4気筒にしたってのは大ごとですね。あとホンダPCXハイブリッドは通勤スペシャルのバイクに48V技術を入れてきたっていうチャレンジは買いたいですね。あとスズキSWISH。原付フォーマットで10インチを貫いた。タイヤの外径が小さいからトルクを出しやすい。まさに通勤スペシャル。
編集Y 一気に来ましたね。
2輪編集A SWISHの10(とお)インチをみんな評価していますね。
技術編集M あとアプリリアSR50。これ2ストなんですよ。2ストでユーロ4クリアしてきたことを評価したいですね。CO、HCが不利だけど2ストはチャレンジしがいがある。
2輪編集A あれ最初FIだったんだけど、キャブになって入ってきたんですよね。
編集長K 自分、NIKENとゴールドウィングははずしたくないな。それとSV650Xも。詳しくは下の記事を見てほしい。
技術編集M いろいろ車種を言いましたが、普通に言ったらスーパーカブですね。
2輪編集A でも当たり前すぎて嫌だな〜(笑)。Z900RSを選んでも当たり前すぎて、モーターファンが無難なウェブサイトだと思われちゃう。
編集長K たしかに、そうなんだよな。
編集Y 具体的にスーパーカブのどのモデルですか?
技術編集M 50ですかね。水冷もDOHCも我慢してストイックに作った感じがいいです。
編集長K 50はなんだかんだ、普通四輪免許の人のために泣く泣く作った部分もあるから、自分は110がやっぱり本来の姿だと思う。
2輪編集A じゃあ、クロスとかスーパーカブそれぞれの50と110とC125もプロもぜーんぶ入れてスーパーカブシリーズ。
一同 ええー、超玉虫色な選択(笑)。
編集Y とはいえ今日は時間切れです。今年のモーターファン・モーターサイクル・オブ・ザ・イヤーはスーパーカブシリーズに決定しました!
モーターファン・モーターサイクル・オブ・ザ・イヤー2018 ホンダ・スーパーカブ
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