BMW Z4は実力派ロードスターの大本命たりえるか?
MotorFan / 2019年1月5日 12時0分
まもなく発表されるトヨタ・スープラと兄弟車となることで話題を呼んでいるBMW Z4。ルーフはソフトトップへと原点回帰して、さらなる軽量化を実現。走りの楽しさとラグジュアリーを高い次元で両立した本格的なオープンスポーツカーの誕生である。 REPORT◎清水和夫 (SHIMIZU Kazuo) PHOTO◎BMW AG
![全長は先代より85mmプラスの4324mm、全幅は同じく74mmプラスの1864mmとやや大きくなったが、ホイールベースは26mm短い2470mmだ。もちろん前後50対50の重量配分となっている。](https://motor-fan.jp/images/articles/10007352/big_897737_201901040757310000001.jpg)
ロードスターとはもちろん、2人乗りのオープンカーのことだ。誤解されやすいが、ROADSTAR(道の星)ではなくROADSTERと書く。STERという意味は「〜する人」というような意味で使われるから、ROADSTERは「道をゆく人」と理解するといいだろう。
代表格であるマツダ・ロードスターは四半世紀に渡って造り続けてきた名車であるが、実はBMWは戦前からロードスターを造っていた。1930年代に造られたBMW328がその元祖BMWロードスターだ。その後しばらくの間ロードスターは生産されなかったが、年に戦後初のロードスター、Z1が誕生している。しかしZ1は販売面では成功せず、その志は年登場のZ3に受けつがれた。
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10007352/big_897739_201901040757310000001.jpg)
Z3は3シリーズをベースにして開発されたモデルで、コンパクトなボディに直列6気筒エンジンを搭載するために、ロングノーズ・ショートデッキという古典的なフォルムを持っていた。日本でもヒットしたZ3は幾度となくマイナーチェンジを続け、2002年にZ4へとバトンタッチしたわけだ。
そして、今回はそのZ4が3代目へとフルモデルチェンジを行った。この新型Z4は来年早々のデビューが噂されているトヨタ・スープラと兄弟車となることが知られているので、どこかで親近感を感じる。試乗したモデルは「M40i」。3.0ℓストレート6の340psターボエンジンを積み、リアルMモデルほどホットではないが、Mのパフォーマンスは十分に味わえる、という位置づけだ。
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10007352/big_897741_201901040757310000001.jpg)
シャシーはモジュールとして3シリーズとの共通部分も存在するが、基本的には新規に開発されている。開発チームはよりダイナミクスを高めるために、ロードスターとしてどんなパッケージが必要なのか、という原点から改めて見直したという。
その結果、ボディサイズは全長4324×全幅1864×全高1304mmとなり、先代のZ4と比べて85mm長く、74mmワイドになったが、その一方でホイールベースは26mm短く、重心はより低くなった。気になる重量はM40iで約1.5tに収まっている。スポーツカーの運動性能はホイールベース、トレッド、重心点でおおよそ決まるから、フロントエンジンでもミッドシップのスポーツカーと肩を並べる走りが期待できそうだ。
![センターコンソールをドライバー側に傾けたインパネデザインはBMWの定石通りだが、エアコンのスイッチやシフトノブまわりなどは最新の意匠となっている。](https://motor-fan.jp/images/articles/10007352/big_897743_201901040800290000001.jpg)
実際の走りはその予想どおり、とにかく乗りやすい。路面に吸い付くような感覚の走りは、両手両足の延長線上に4つのタイヤが存在している感じだ。つまり、タイヤとの対話が鮮明。さらに見切りのよい視界によって、街中でもストレスがなく安全運転できる。まさに道をゆく人(ロードスター)になりきれるのだ。
エンジンは低速トルクも太く、トルコン式8速ATのおかげでイージードライブが可能だが、ワインディングではまるでDCTのようにダイレクトなシフトを楽しめる。流してよし、攻めてよし。そんなドライバーのあらゆるニーズに応えてくれる。妥協なきロードスターだ。
![写真の3.0ℓ直列6気筒ターボエンジンは340ps、500Nmを発揮。2.0ℓ直列4気筒ターボの30iは258ps、400Nm。どちらも8速のステップトロニックを組み合わせる。](https://motor-fan.jp/images/articles/10007352/big_897745_201901040800290000001.jpg)
そして最も感動したのはエンジンの素晴らしさ。パワーやトルクなどの数字ではなく、クルマ好きには堪えられないスムーズさなのだ。昔風に言えばシルキー6。直列6気筒はV12と並んで完全バランスだが、それを実感できる素晴らしさだ。
印象的なのはエンジンのレスポンスだけではない。ステアリングフィールとサスのダンピングも見事だ。ステアリングの動きとノーズの動きは見事にマッチしており、操作に対する遅れがない。それでいて過敏すぎることもないから、実に操縦しやすい。試乗したリスボンには海の上にかかる有名な長い橋があるが、ここは横風の強さでも有名な場所。だが、その橋の強い横風で進路が乱れても、わずかな操作で直進を維持できる。ショートホイールベースでも驚くほど直進性は高く、操縦性も素晴らしい。こんなシャシー性能は今までお目にかかったことがない、と言っても過言ではないほどだ。
![オープンの状態でもラゲッジスペースは281ℓを確保。先代より5割も広くなっている。](https://motor-fan.jp/images/articles/10007352/big_897747_201901040757320000001.jpg)
路面からのショックはボディ全体で受けとめる、いわゆるボディダンピングで、快適性も高い。うねった路面でもサスがしっかりとストロークしてくれるので、バネ上のボディはフラットに保たれる。
パフォーマンスをチェックすると、0→100km/hが4.5秒、ニュルブルクリンクではオープンカー最速の7分55秒台を叩き出しているという。新型Z4はオープンカーの楽しさだけでなく、ポルシェ・ボクスターとも勝負できる高い運動性能を持っている。もちろん最新モデルらしく、高度なドライバー・アシストシステムなども搭載しており、広いラゲッジスペースも確保されているから実用性も高い。まぎれもなく、BMWの技術を結集して開発された素晴らしいロードスターだ。
※本記事は『GENROQ』2019年1月号の記事を再編集・再構成したものです。
![ついに伝統の丸型メーターを捨てた新型Z4。タコメーターは逆回転するタイプだ。7インチのディスプレイには切り替えることで様々な情報を表示できる。](https://motor-fan.jp/images/articles/10007352/big_897749_201901040757320000001.jpg)
BMW Z4 M40i
■ボディサイズ:全長4324×全幅1864×全高1304mmホイールベース:2470mm ■車両重量:1535kg ■エンジン:直列6気筒DOHCターボ 総排気量:2998cc 最高出力:250kW(340ps)/5000〜6500rpm 最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1600〜4500rpm ■トランスミッション:8速AT ■駆動方式:RWD ■サスペンション形式:Fダブルウイッシュボーン Rマルチリンク ■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ(リム幅):F255/40ZR18(9J) R275/40ZR18(10J) ■性能:0→100km/h加速:4.5秒
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