⑤ノートe-POWER 走りと環境性能を両立するパワートレーンとは? 畑村耕一「2019年パワートレーン開発への提言」⑤
MotorFan / 2019年1月4日 14時55分
マツダでミラーサイクル・エンジン開発を主導したエンジン博士の畑村耕一博士(エンジンコンサルタント、畑村エンジン開発事務所主宰)が、2019年のスタートにあたり、「2018年パワートレーン重大ニュース」を寄稿してくださった。昨年年頭にも、「2017年のパワートレーン重大ニュース」を掲載したが、再びパワートレーンの現在と未来について、プロの見方を聞いてみよう。7回シリーズの第5回をお届けする。 TEXT◎畑村耕一(HATAMURA Koichi)
走りと環境性能を両立するパワートレーン
「2019年パワートレーン開発への提言」②でクルマの走りの理想を述べ、③で各種パワートレーンの環境性能について解説し、④では将来の大幅なCO2削減を実現するにはエネルギー(電力と燃料)の製造過程を変革する必要があることとその動きを紹介した。そこから次の二点の結論が導き出される。
①クルマの走りの理想を実現するには電動モーター駆動以外は考えられない。
②充電走行するEVの普及は中期的にはCO2削減の効果はない。長期的にはEVだけでなく、再生可能燃料で走るFCVやHEVもカーボンニュートラル走行をするようになる。
このことから、走りと環境性能を両立するクルマは、駆動は電動モーターを採用し、充電ではなく燃料を搭載して走るハイブリッドということになる。すなわちe-POWERに代表されるシリーズハイブリッドだ。走りの点ではEVも合格だが、中期的には再生可能エネルギーの普及(火力発電所の廃止)の程度に合わせて普及を抑制する必要がある。
クルマが移動体であることを考えると搭載するエネルギー源(電力または燃料)のエネルギー密度が重要な要素である。各種エネルギー源のエネルギー密度を図に示す。電池のエネルギー密度は液体燃料に比べて二桁も小さい。気体燃料はその間にある。電池の技術革新が進むとしても液体燃料の圧倒的なエネルギー密度の高さには到底及ばいないだろう。クルマの質量は走りと燃費(効率)に大きな影響を及ぼすことを考えると、カーボンニュートラル走行が実現したとしても、走りと環境性能の両立という意味ではEVは不利な立場を抜けきれない。
以上の理由から、ここではシリーズハイブリッドの可能性を追求することにする。シリーズハイブリッドの可能性を探るため2018年7月に北海道をノートe-POWERで1100km走った。
e-POWRはシリーズハイブリッドの構成でエンジンとタイヤは機械的な結合はなく、エンジンは発電専用の1.2ℓ4気筒ミラーサイクルを採用している。その比較的小さなエンジンをロードノイズが小さな低速では運転せず、車速が30km/hくらいに増加して初めてエンジンが始動する。エンジン騒音はロードノイズに隠れるか、聞こえたとしても車速の増加にともなって回転数を上げるので違和感がない。その制御は「エンジンがない方がいい」に徹している。
2018年の北海道の夏は猛暑でエアコンかけっぱなしであったが、燃費計の値は平均26km/ℓを示し、心配していた高速道路走行燃費も郊外走行燃費と同等だった。燃費を徹底的に追求するハイブリッドではなく、走りの快適性(エンジンはないほうがいい)を追求したシリーズハイブリッドに大いに満足した旅だった。広島に帰って我社の研究車両であるデミオディーゼルを運転して、それまでこんなものだと慣らされていたエンジンの停止・始動、低速加速での騒音、変速のタイムラグが気になって、エンジンで駆動することが走りの快適性を毀損していることを感じざるを得なかった。
夏のe-POWERの走りに惚れ込んだ筆者は、2018年暮れに、4年間慣れ親しんだデミオを手放しノートe-POWERを研究車両として購入した。広島大学への約30kmの往復ほか快適な走りを楽しんでいるが、夏と違ってエンジンの作動頻度が大幅に増えている。低速でエンジンがかかるとかなりうるさい。その原因は、冬は暖房をかけるのでエンジン水温を高温に維持するためにエンジンを運転しているようだ。デミオの場合も寒い時はアイドルストップが作動しないことがよくあったが、それと同じ現象で、暖房のためにエンジンを作動させるのは騒音面でも効率面でも褒められたものではない。今後の改善に期待したい。
e-POWERのエンジンの運転領域が示された図を見ると、実用走行では70Nm@2400rpmのピンポイントで運転しているのがわかる。高速道路や登坂路での加速時はこのトルクで回転数を増加して必要な出力を発生する。つまり、e-POWERのような使い方をするシリーズハイブリッドでは、特定の運転ポイントだけに特化したエンジンを使えるということで、従来とは大きく異なる専用エンジンを開発してさらに燃費を向上する余地があるということだ。
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