ZFの車載人工知能「ZF ProAI」: 高度な演算能力と柔軟性を両立
MotorFan / 2019年1月10日 6時45分
ZFはCES開幕直前に、車載コンピューター「ProAI」の最新モデルを発表した。ZFの「ProAI RoboThink」中央制御ユニットは業界最高レベルの性能と、モジュール設計および拡張性で完成車メーカーとモビリティ・サービス・プロバイダーにメリットを提供する。ProAIの4モデルは、基本的なADAS(先進運転支援システム)機能から完全自動運転の乗用車および商用車や建設機械に至るまで、用途に応じた最適化が可能。
顧客はまた、ソフトウエア・アーキテクチャーを指定することも可能で、これは特にMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)用途向けとしては革新的な特性。配車サービスなどが急成長する中、ZFはCESにおいて新しいモビリティー・コンセプト向けのソフトウェア・スタックも発表した。ZF ProAIおよび当社の包括的なセンサー・セットとこのスタックを組み合わせることで、モビリティサービスへの新規参入企業でも容易に採用できる自律走行車両用完全統合型システムの構築が可能だ。
NVIDIA DRIVE AutopilotはZF ProAIに最初に搭載
ZF ProAIの高い能力と柔軟性によって、ZFはNVIDIA DRIVE AutoPilot Level2+のローンチパートナーの一社に選ばれた。新しいモデルのProAIは今後12か月以内に量産が開始されるため、NVIDIAのローンチ・タイミングに合わせられる唯一の自動車向けAIとなる。ZFのウォルフ=へニング・シャイダーCEOは次のように述べている。「ZFが唯一、必要な性能を備えたスーパーコンピューターの量産が可能であるという事実は大きなアドバンテージです。オープンで柔軟性に富み、モジュール性と拡張性に優れたZF ProAI製品群が、多様な業界や自動運転機能の全レベル向けアプリケーションに対応できる構造を有しています」
NVIDIAのオートノマス・マシン担当Rob Csongor副社長は次のように語っている。「当社はZFとの提携がもたらした成果にとても喜んでいます。彼らの迅速な対応とシステム化に関するノウハウのおかげで、NVIDIA製DRIVE XavierプロセッサーとDRIVEソフトウェアを利用してレベル2+からレベル4/5のロボタクシー車両を可能にするProAIの開発が、驚くほど短期間で完了しました。ZFは、2020年に生産が開始される先進のレベル2+自動運転ソリューションを自動車メーカーに供給することができるとともに、より高いレベルの自動運転機能に迅速に対応することが可能になります」
ZF ProAIは、クローズ・システムに対する代替システム
レベル4以上の自動運転を実現するためは、より高い処理能力と高性能な人工知能が必要不可欠だ。車両の周辺環境360度を分析しながら、車内を監視して乗員の位置をモニターし、安全の確保と車両の挙動を制御するためには、高性能な制御ユニットが欠かせない。ZFは自動車用として最もパワフルな中央制御ユニット、「ProAI RoboThink」を開発した。グラフィック・プロセッサーを備えたこの最新バージョンは、毎秒150兆回の計算(150TOPS)以上の演算能力を備えている。さらに4基までの組み合わせが可能で、最大600TOPSまで能力を上げることができる。
「ハード面のモジュール設計とオープンなソフトウェア・アーキテクチャーが『ZF ProAI RoboThink』の特徴です。できるだけ広範囲にわたる自動運転関連機能を自動車メーカーに提供することが当社のねらいです」と、ZFのアドバンスト・エンジニアリングを統括し、ZFツークンフト・ベンチャー社のゼネラル・マネージャーを兼務するトーステン・ゴレウスキー氏は述べている。
この4モデルで、ZFは現実的にクルマに求められる機能の全てをカバーすることができる。ProAIの第1世代はコスト効率の良いエントリーモデルで、NCAP2022の全ての要件を満たすことができる性能を有している。第2世代は自動運転のレベル2を実現する能力を備え、デュアルモード時にはレベル3もサポートする。モジュール性に優れる第3世代では、最大3枚までのパフォーマンスボードに様々なチップを組み合わせて使用することで、レベル4までの自動運転に必要な情報のリアルタイム処理を可能にする能力に到達する。そして、演算能力を高める拡張性とグラフィック・プロセッサーを備えた最新モデルのZF ProAI RoboThinkは、自動運転のレベル4以上に理想的といえる、最も能力の高いハイエンドソリューションだ。
ZFのProAI製品群は、コンベンショナルな機能からAIアルゴリズムまで、必要に応じてソフトウェア・アルゴリズムを構築することが可能なオープンプラットフォームを提供している。さらに、AutoSAR、Adaptive AutoSARやQNXといった、自動車業界で一般的な複数のOSをサポートするとともに、今後新たなシステムが開発された場合にも対応していく。NVIDIAとの良好なパートナーシップはProAI RoboThinkにおいても継続しているが、要望に応じて他社のチップを使用することも可能。直近の例として、ZFはアダプティブ/インテリジェント・コンピューティングのリーディング・カンパニー、Xilinx社と新たにパートナーシップを結んだ。同社のマルチ・プロセッサー・システム・オン・チップ(Multi-Processor System-on-Chip: MPSoC)プラットフォームで、様々なセンサーからのデータ処理など、自動運転機能に求められる拡張性と柔軟性を提供すると同時に、待ち時間を短縮し(低レイテンシ)、高効率なAIコンピューター・アクセラレーションを実現する。
また、このアプローチはユニークなもので、同じハードウェアとソフトウェア・アーキテクチャーを組み合わせて提供するシステムと比べ、機能の制限やコスト増を避けることも可能だ。
ZF ProAIがMaaSを可能に
ロボットタクシーや自律走行型のヒトもしくはモノの移動手段開発のため、より高い演算能力をもつ中央制御ユニットの開発が加速している。MaaS用アプリケーションに使われる高性能なコンピューターは、カメラ、レーダーやLiDARからのデータを統合して周辺環境を解析するだけでなく、クラウドからのユーザーデータ、支払いシステム、そして最適なルート検索と実行などを統合する能力が求められるからだ。複雑なアルゴリズムがこうした計算を行い、リアルタイムで現実の道路状況と比較しながら最適な判断を下す。
「ロボットタクシーや自律走行車両用の制御ユニットには、自動運転の乗用車向けのものよりもはるかに高いコンピューター能力が求められます。配車サービス(ride-hailing service)事業者からの、より高度なコンピューター能力の要求は予想されたよりも早くやってきました。今日、自動運転市場は完成車メーカーよりも、こうしたモビリティサービス業界が牽引してると言えます」と、ゴレウスキー氏は語っている。
ZF ProAI製品群はカメラ、LiDARおよびレーダーシステムからのデータを統合解析する理想的なプラットフォームを顧客のニーズに応じて構築する処理能力を備えている。今年、e.GO Mobile社と共同でZFが量産を開始するヒト・モノの移動用車両も、自動運転機能とネットワーキング用にZFのProAIを搭載する。
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