「ハイR&セピアZZ」 独自路線を突き進むスズキの二大巨頭【原チャリカスタマイズ】
MotorFan / 2019年2月17日 6時30分
スクーターの黎明期~成長期であった80年代の名車&珍車をピックアップ。2スト・スポーツ・スクーターはDioやJOGだけにあらず!というわけで今回は、スズキ車にフィーチャー。さらに、ホンダのスーパーカ……ではなく、モトチャンプ的なレア車にも乗っちゃいました! (月刊モトチャンプ 2018年12月号より) PHOTO●星野耕作/佐藤恭央 REPORT●佐藤恭央
個性的なマシンメイクは 80 年代から変わらない !?
80年代を代表するスズキ車といえばハイとセピア。そんな両シリーズの上級種に分類されるのが、ハイRとセピアZZ(ジーツー)だ。
まずハイRだが、53㎏の軽量ボディに6.5㎰を発揮するエンジンを搭載しJOGの対抗馬としてサーキットなどで活躍。特徴的なのはエンジンで、シリンダーの前方にキャブレターを備え、後方からストレートに排気する「前方吸気・後方排気」というレーシーなレイアウトを採用。吸気管がストレートになりレスポンスに優れるのがメリットだ。しかし、エアクリーナーやプラグを外すのにいちいちカウルを外さなければならず、整備性が悪すぎて?ハイRを最後にこのエンジンは姿を消してしまう。
すると主力エンジンは一般的な吸排気レイアウトを持つシリンダーを寝かしたいわゆる横型へと移行し、セピアが登場。90年に入ると、セピアにZZ(ジーツー)の冠を持つモデルが追加され、フロントディスクブレーキやリヤスポイラーなどスポーツ性能と機能美がプラス。ライブDioZXとJOG-ZRに真っ向から勝負を仕掛けたが、二車のような爆発的なヒットには繋がらなかった。だが、このパワーユニットとスポーツコンセプトは後のZZへと受け継がれ、最後の日本製2ストスクーターとして名を残した。
チョイノリやストマジといった個性派を作り出すマニアック精神が魅力のひとつでもあるスズキ。今回紹介する二台はメジャーな存在ではあるものの、どこか同じ匂いを感じるのは筆者だけではないはずだ。
SUZUKI:Hi-R(ハイアール )
OWNER:アニコーHi-R
Hiの後継として87年にデビューしたHi-R。アンチノーズダイブサスやハイグリップタイヤを備えて足周りをリファイン!リヤスポイラーや個性的なフロントフェンダーもHi-Rのみの採用だ。
スズキ独自の前方吸気&後方排気エンジン四天王!
個性的なエンジンレイアウトの4車種をご紹介。
SUZUKI:SEPIA ZZ(セピアジーツー)
取材協力:TDF ☎045-786-0404(留守電対応)
「モリモリ低速トルクと高回転クラッチミートで鋭いダッシュが最高。バンク角も深く相当寝かし込める」(サンタサン)
89年にデビューした初代セピアは、若者に訴求した直線を基調にしたボディを採用。照明付きのシート下収納に加え、フロントラック & コンビニフック、リヤキャリアも装備するなど実用性にも優れる。
カプセルトイも登場!
DJ-1R の〝ガチャガチャ“で話題を呼んだSO-TA 社から、第二弾としてHiが新登場!全長約5cmながら実車をリアルに再現。カラバリはシークレットを含めて全6色。300円/1回。
カブのスクーター版(もちろんホンダ車)!
HONDA:EXPRESS BUSINESS(エクスプレス・ビジネス)
OWNER:AToRiKA521若尾店長
走りは一級品、だけどカブと比較される悲劇!
スーパーカブみたいだけどなにかが違う?ホンダが83年に発売した 「エクスプレス」はご覧の通りカブにそっくりで、平たく言えば“カブのスクーター版 ”である 。それなりにカブを知っていなければ見間違えてしまうほど酷似している。
今でこそPCXに代表される インチなどの大径(ハイ)ホイールスクーターは一般的だが、当時は『スクーター=小径ホイール』が通常認識にっており、市場ではなかなか受け入れられなかった。それでもホンダはイタリアで生産されたShシリーズやビアを日本でも発売。どれも高い走破性を持ちハンドリングも軽く、 素晴らしいポテンシャルを秘めているにも関わらず、残念ながら好セールスとはならなかった。
そんな時代を先取りした同車には 二つのグレードが存在する。通常版はカバー付きのインナーポケットやセルスターターを標準装備し、当時としてはハイエンドな仕様。一方で、 廉価版の「ビジネス」はこれらの機能を取り除き、その代わりにサイドスタンドやフロントキャリアを追加し、リヤキャリアも若干ワイドになっている。カラバリも通常版が4色なのに対してビジネスは2色のみの設定だった。なお両グレードの価格差はぽっきり1万円である。
今回撮影したマシンは、ビジネス をベースにプチカスタムを施したもの。本来は前後 インチホイールだが、前後インチに大径化。あとはフロントキャリアを取り除き、ミラーがメッキタイプに変更されていた。
試乗する為キックペダルを踏むと モクモクと白煙を上げ、スロットルをひねるとビィ〜ンという音が響く。エンジンは確かに2ストだ。前年に発売されたスペイシーがカブCを応用した4ストエンジンなのに、 なぜエクスプレスが2スト?という疑問はさておき、出足から鋭い加速を見せつけ、ハイホイールの恩恵もあって安定感があり、スピードに乗るとめっぽう速い最高出力は 5.2 と、同年発売のリード (5.5)やビート(7.2)には及ばないものの、乾燥重量55kgという軽さと大径ホイールの走破性を武器に、どんな道だろうと臆することなくスロットルを開けていける!
数年前に125ccスクーター比較を行なった際、同一エンジンを搭載するリード125よりもShモードがかなり好評だったのを思い出した。このエクスプレスも乗ってみれば納得の走りっぷりである。
これだけ走行性能に優れ、しかも割と安かったのに、なぜ認知されるにいたらなかったのか?それはハイホイール仕様やビジネス用途以前に、カブをモチーフにしているがゆえに「だったらカブでよくね 」という、なんとも皮肉な結末を迎えたの ではないかと予想している。せめてカブの名を冠していれば違った結果になっていたかもしれない。
ともあれ、各部の作りや質感は良く、専用設計の部品構成からみても かなり注力されていたのが伺える。 ハイホイールスクーターを探しているなら、エクスプレスを候補に入れてみてはいかがだろうか?
カブとは一味違う!ココがエクスプレス!
カウルを外さないと駆動系カバーが取れないため断念したが、他のスクーターと同じ無段変速(CVT)だ。
カブのバッグボーンフレームとは異なり、アンダーボーンフレーム & フロアステップなので大きく跨る必要なし。
どんな用途にも使えちゃう!
エクスプレス
当時価格:13万2000円 (ビジネスは12万2000円)
83年4月にビジネスユーザー向けに登場。スポークホイールの大径スクーターというのが珍しい! セルスターターやカバー付きフロントラックなど先進的な装備も。エクスプレス・ビジネスはこれらの機能がない代わりに前キャリア & サイドスタンドが追加されている。
16インチ兄弟たち
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