マツダの直噴ターボ——登場は14年前だった
MotorFan / 2019年2月7日 16時45分
■ L3-VDT シリンダー配列:直列4気筒 排気量:2260cc 内径×行程:87.5mm×94.0mm 圧縮比:9.5 最高出力:200kW/5500rpm 最大トルク:380Nm/3000rpm 給気方式:ターボチャージャー カム配置:DOHC ブロック材:アルミ合金 吸気弁/排気弁数:2/2 バルブ駆動方式:直打 燃料噴射方式:DI VVT/VVL:In/×
「ダウンサイジング」という言葉はすでに一般化していて、ご存じの方も多いだろう。エンジン排気量を縮小することでメカニカルロス/ポンピングロスを回復、低下したトルクは過給で補うというコンセプトである。欧米、とくにヨーロッパではもはや常道であるいっぽうで、日本ではハイブリッド技術が進んでいるためにそもそも過給という手段を積極的に選ばない印象がある。とはいうもののダウンサイジングに取り組んでいないのかといえばさにあらず、各社は現有エンジンとして下のような過給エンジンをラインアップしている。
トヨタ:8NR-FTS、8AR-FTS、V35A-FTS
日産:HR12DDR、MR16DDT、KR20DDTT、QR25DER、VR30DDTT、VR38DETT
ホンダ:S07、P10A2、L15B、K20C、JNC
三菱:3B20、4B40
SUBARU:FB16DIT、FA20DIT、EJ20
スズキ:R06A、K10C、K14C
ダイハツ:KF-DET、1KR-VET
厳密に言えば、これらの中にはダウンサイジングコンセプトではなくパフォーマンスを狙ったパワーターボとも言うべきエンジンも含まれているが、案外多いなというのが列挙してみた感想である。
さて、上記に含めていないマツダの話となるとどうだろうか。
マツダ:SKYACTIV-X、PY-VPTS、L3-VDT
スカイアクティブXはいいとして、18年秋にCX-5搭載で日本上陸を果たしたSKYACTIV-G 2.5T……もうひとつはなんだろう。このエンジンが本稿の主役である機種である。
L3-VDT型直噴ターボエンジン
2005年6月の初代アテンザのマイナーチェンジで追加された「マツダスピードアテンザ」に「MZR 2.3 DISI TURBO」のペットネームで初搭載された。DISIとはダイレクト・インジェクション・スパーク・イグニッションの頭字語。2002年5月の初代アテンザに搭載された当時の新規開発・オールアルミブロックのMZRエンジン2.3ℓ版(L3-VE型)をベースに直噴化し、ターボ過給を組み合わせた。
燃料インジェクタは側方配置で、最高燃料噴射圧は11.5MPa。筒内直接噴射は気化潜熱によって筒内温度を著しく下げられることがメリットのひとつで、これにより耐ノッキング性能を高め、圧縮比を9.5とすることができた。筒内温度の低下は充填効率も高めることにつながり、中低速のトルク向上、タービンへの排気エネルギーの向上というメリットを得ている。
結果として、L3-VDTのターボチャージャーはシングルスクロール型を採用するに至っている。ツインスクロール型に対して熱容量に優れることから、暖機時間の短縮、低エミッション化にも成功した。
出力向上にともなって、ブロックとヘッドは自然吸気2.3ℓ版の「コスワース鋳造法」を用いながらさらに改良を加えて高強度化、高強度ライナーの採用とあわせてブロック剛性を高めた。これによりブロックライナー間とヘッドバルブブリッジ間に冷却水路のためのドリル穴を穿つことでき、耐熱性向上などの変更もなされている。なお、エキゾーストバルブシート間にも冷却水路用のドリル穴が施工されている。
燃焼圧力が高まったことによる振動騒音対策としては、ピストンピンの大径化とフルフロート化、クランクシャフトの鋳造→スチールへの材質変更、コンロッドの高強度綱化、オイルパンの形状見直しなどがトピックである。
マツダスピードアテンザとマツダスピードアクセラというハイパフォーマンスカー用に仕立てられたL3-VDTだが、その後MPVやCX-7など大型車にも搭載されたことから、日本初のダウンサイジングエンジンと呼ぶにふさわしい存在だった。
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