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【モンキーRアーカイブ・開発者インタビュー】他社には出来ない、ホンダらしい独自のモンキー“R(レーシング)”バージョンを作ろうじゃないか!

MotorFan / 2019年2月11日 11時5分

【モンキーRアーカイブ・開発者インタビュー】他社には出来ない、ホンダらしい独自のモンキー“R(レーシング)”バージョンを作ろうじゃないか!

モンキーRの生みの親でもある本田研究所の神戸啓文さんと菊池準二さんに突撃インタビュー! モンキーRの誕生秘話に迫る! ※本記事は「4MINIちゃんぷ19(2011年発売)」の「モンキーR 開発者インタビュー」を再編集したものです。

“R”という名に相応しい、 レーシーな要素を徹底投入したい!

--モンキーのレーシングバージョンとして発売されたモンキーRは、ストリートも良く似合うし、サーキットも良く似合う。スタンダードなモンキーとは違った魅力が詰まっています。「手を加えれば、もっともっと速くできる」という、レース好きやカスタム好きにはたまらない稀有なモデルだと感じます。

●実は私(神戸さん)、大学時代、ダックスに乗ってましてね。その頃にエンジンを降ろしてメンテナンスをするなど、バイクをイジる楽しみを覚えました。モンキーRの企画時には、乗る楽しみだけでなく、イジる楽しみを持ち合わせたモデルを作りたいと考えていました。

--モンキーRが登場したのはバイクブーム真っ只中の1987年。2スト250ccや4スト400ccなどのレーサーレプリカも大人気の時代でした。

●当時は50ccスクーターも人気がありました。ただしモンキーなどのレジャー系小型モデルは、上記モデルに比べていまひとつ元気がなかった。世はまさにスクーターやスポーツモデルが花形の時代。そのような背景の中で、少しでもレジャー系小型モデルの活性化につなげたい。モンキーRの開発時には、そんな熱い思いもあったんです。

--ところでモンキーRの開発はいつ頃始まったんですか?

●1986年です。

--意外や意外。もっと早い段階で開発が始まったのかと。ちなみに1986年には4ストのスズキGAGと、空冷2ストエンジンを搭載したヤマハYSR50が登場しています。先行発売された2台を見た感想は?

●GAGとYSR50が出たときは、我々の間でも「んん? 面白いマシンが出てきたなあ…」と。

---「こんなの出されたよ!」という“焦り”のようなものは?

●モンキーRはすでに開発に入っていましたが、特に焦りはなかったです。我々としては「レジャー系だから中身はそこそこでいいや」という思いはなく、たとえレジャー系でも“R”という名に相応しい、レーシーな要素を可能な限り採り入れようと考えていました。逆に「他社には出来ない、ホンダらしい独自の4ストミニモデルを作ってやる!」と、意気込んでいましたね。

写真右はモンキーRのデザインPLを担当した菊池準二さん。写真左はエンジンを担当した神戸啓文さん。

モンキーRはNSR50、 そしてNSF100の兄貴分なのか?

--モンキーRが登場したわずか2ヵ月後には、水冷2スト7.2psエンジンを積んだNSR50がリリース。両車とも剛性の高い、ツインチューブフレームを採用しています。NSR50のフレームは、モンキーRのフレームがベースになったと聞いたことがありますが。

●ベースになったのは確かです。NSR50用フレームの開発者が、完成度の高かったモンキーR用の試作フレームに惚れ込んだのがきっかけです。ちなみにモンキーRの開発が始まった頃には、NSR50はまだ開発構想すらありませんでした。

--モンキーRのツインチューブフレームは、まったくのゼロから始まった新設計だったんですか?

●はい。素材となる角パイプや丸パイプ探しからスタートしました。「このパイプは細くて剛性が足りない」「このパイプは太すぎてバランスが悪い」なんて毎日議論しながら。

---モンキーR用フレームをベースにしたNSR50用フレームは、今では4スト100ccエンジンを積んだNSF100に受け継がれている。そう考えれば、4.5psの50ccエンジンでは、非常にもったいない気もします(笑)。

●“R”の名を付けるからには、外観だけ取り繕うのではなく、フレームや足周りもRでなければと考えていました。例えばレースでも十分楽しめるような。そういう意味ではモンキーRのフレームや足周りは、4.5psというエンジンパワーに対して余裕を持たせた設計がなされていると言えますね。

7.2PSの水冷2ストロークエンジンを搭載したNSR50。

「ハンドル、付け方間違ってないか?」 この一言がモンキーRの運命を変えた!?

--実際に発売されたモンキーRは、イラスト(上記)とは若干異なっています。

●イラストは初期の段階に描かれたものです。社内でいろいろと相談した結果、「どうもRっぽくないねえ」という意見が多数出ました。その結果、シートをもう少し薄めにしてシャープなデザインにする。加えてスワローハンドルに変更する、という変更案が出ました。

--市販車は低めに設定されたスワローハンドルが、いかにもRっぽくていいですね。やっぱりRはこうでなくちゃ。

●最終的にスワローハンドルで行こう! と決まったんですが、当時の社会の動向(※注1)から、「やっぱりイラストのようなセミアップじゃなきゃダメなんじゃないの?」なんて意見も出てきました。散々悩んだ結果、トップの人たちへのお披露目の場では、ハンドルを裏返しにして、“セミアップ”にしたんです。

--確かにモンキーRのハンドルを裏返しにしたら、セミアップになる(笑)。

●「これでどうだ!」という感じで披露したところ、当時のトップの中の一人が、セミアップハンドルのモンキーRを見て一言、「このハンドル、付け方間違ってないか? これじゃカッコ悪いだろ」と。まるで笑い話のようですが。

--スワローハンドルをよく知る人が見ても、まったく知らない人が見ても、裏返しに付けたらカッコ悪い(笑)。というわけでモンキーRは“運よく”発売時のスタイルになったんですね。

●そういうわけです。

モンキーRはスワローハンドルを“低め”に設定。

※注1:空前のバイクブームだった当時は、全国各地の峠や埠頭にローリング族と呼ばれるスポーツバイクに乗った若者が多数出没し、社会問題となった。

当時の開発陣たちは、 4MINIカスタムを徹底研究していた!?

--発売から25年を経た今でもまったく見劣りしない、まるでカスタム車のように完成された外観と車体。おまけにモンキーRって、“カユイ所”にもしっかりと手が届いているんです。

 例えばFCR28のようなビッグキャブの装着もしやすいですし、オイルクーラーの取り付け場所にも困らない。またダウンマフラー装着時も、基本的にキックペダルの交換がいりません。モンキーが七変化するヤンチャ坊主なら、モンキーRは優等生というイメージかな。モンキーシリーズの中でも、モンキーRは特別な存在ですよ。

●一般のユーザーさんが踏み込みにくい箇所は、メーカーがしっかりと設計・製作する必要があると考えています。例えばアフターパーツなどではフォローしにくいであろうガソリンタンク。モンキーRの場合も、形状などは、妥協することなくしっかりと作り込みました。

--手に入りにくいモノ(箇所)は、きちんと揃えておいてくれる。これこそバイクメーカーの仕事であり、プロの仕事ですよ! 当時の開発陣の皆さんは、4MINIカスタムも徹底的に研究しておられたのかな? なんて推測しちゃいます(笑)。

 ユーザーたちが購入後、どういう箇所をカスタムするのか? これを知らない人たちに、この車両は作れませんよ、絶対に!

●遊び心に満ち溢れたオジサンたちが、心をひとつにして作ったのが、このモンキーRだったのかも知れません(笑)。このモデルの開発は、ビッグバイクなどに比べてやりやすかったところもありましたから。

--やりやすい、というと?

●開発者の人数が、ビッグバイクよりも少なかった。また、「コレをやっちゃダメ」という制限も少なかった。おまけに、開発メンバー同士の意見交換もやりやすかったんです。

 「“R”なんだから、バッテリーはいらないでしょ」「熱を遮断するマフラーのインナーに穴開けてもいい?」なんて。専門分野を超えて、互いに言いたいことを言い合ってました。


ミニバイクレースとモンキーR

--1987年といえば、全国各地でミニバイクレースが開催されていた頃。サーキットでは2ストのYSR50や4ストのGAGをベースにしたチューニングマシンなどが、凌ぎを削ってバトルしていました。YSR50やGAGのライバルとなりうるモンキーRの開発時には、レースでの使用も視野に入っていたのですか?

●レジャーモデルという性格上、ミニバイクレース用として使用される可能性が非常に高い。その点も十分考慮しました。

--例えばどんな箇所に?

●弊社のカブ系エンジンの排気量は、50cc、70cc、90ccなどがあります。例えばモンキーの場合、70ccまではOKですが、90ccだとフロントタイヤとシリンダーヘッドが接触してしまう。モンキーRはこれを回避しています。また90ccの場合はキャブレターの大型化も必要。モンキーRはこの時にキャブがフレームやタンクに当たらないよう、キャブ周りにクリアランスを持たせています。

--その他にこだわった箇所は?

●電装系です。モンキーといえど、“R”ということで基本的にバッテリーは積みたくなかった。ただし初心者のためにはニュートラルランプも必要。そこで2Vのカードバッテリーを採用することにしました。バッテリーの寿命が来る頃には、初心者だったライダーもニュートラルランプはなくても大丈夫だろうと。

--個人的には、シフト状況を数字で表示するギアポジションインジケーターが欲しいところですね(笑)。やはりモンキーRの“R”はダテじゃない。走るために生まれた、ホンダイズムが凝縮されたモデルなんだなあとつくづく感じます。

●実は当時、かなり気合を入れて、「水冷エンジン」を搭載したミニバイクレース仕様のモンキーRを2台試作したんですよ。当時、千葉県にあった新東京サーキットにも頻繁に通いました。

--87年、88年頃の新東京といえば、ちょうど世界GPで活躍した故・加藤大二郎君や青木三兄弟、芳賀兄弟などがウデを磨いていた頃です。

●「モンキークラス」ではレーサー仕様のモンキー改がバトルを繰り広げていましたね。

モンキーRには大型の6Vや12Vバッテリーは非搭載。ニュートラルランプを点灯させるため、ガソリンタンクの下部に2Vのカードバッテリーを配置。

時代がようやく モンキーRに追い付いた?

--モンキーRは横型エンジンを積んだレジャー系という位置付けですが、カテゴリーは完全にスポーツ系だと思います。モンキーRベースのフレームがNSR50を生み、NSR50ベースのフレーム&足周りがNSR-Miniとなり、NSF100へとバトンタッチされた。そういう意味では、モンキーRは「近代ホンダにおけるスポーツミニの原点」と呼ぶべき存在なのかも。

●今振り返ってみれば、確かにそうですね。

--ただし、あまりにも命が短かった。

●発売当時はモンキーRよりも、既存のモンキーの方に人気がありました。さらに言えば、1987年当時は50ccの場合、パワーを稼ぎやすい2ストの人気が圧倒的に高かったですから。

--当時は「速くてパワーのあるバイク=いいバイク」という風潮が確かにあった。しかし1990年代に入ると「レーサーレプリカはもういい」と、カワサキゼファーなどのネイキッドモデルが人気になった。

 また、それとともに、「4ストミニには味のある」という価値観も強まってきた。そういう意味では、モンキーRは“早すぎたモデル”だったのかもしれません。ちなみに4MINIフリークの間では、「モンキーRを再販して欲しい」という声も、決して少なくありませんよ。

●こうしてお話をしていると、「モンキーRは今、なのかなあ…」と(笑)。

--まさしく今ですよ。仮にもし今出すとしたら、当然インジェクションでしょ。しかも原付2種で。

 もう一回り車体を大きくして、前後のホイールは12インチにサイズアップ。エンジンはカブ110ベースでクラッチ付きに変更。イメージはドンドン膨らみます!

※本記事は「4MINIちゃんぷ19(2011年発売)」の「モンキーR 開発者インタビュー」を再編集したものです。

記事掲載から7年後、モンキーは125ccとして発売された。

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4MINIちゃんぷ19

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