【完璧な1日。】室屋選手がアブダビ戦で優勝/2019・レッドブルエアレース第1戦
MotorFan / 2019年2月13日 17時0分
2019年のレッドブルエアレース第1戦、室屋が勝った。久しぶりの勝利というだけではない。予選でトップタイムを記録し、決勝のファイナル4で勝利。二輪や四輪のレースでいうなら、ポール・トウ・ウインに相当する完璧な勝利だった。 室屋は2017年の世界チャンピオンである。しかし2018年はリズムを崩して勝つことができなかった。その問題点を分析。対策して結果を出すことができたのである。 REPORT●後藤武(GOTO Takeshi)
ルール変更で大きく変わった戦術面
2019年からレッドブルエアレースは、ルールにいくつかの変更が加えられた。一つはG。昨年は旋回中に10Gを0.6秒以上超えると2秒のペナルティ。12Gを超えるとDNFだった。今シーズンは12Gを超えたらDNFという点こそ変わらないものの11Gを少しでも超えたら1秒のペナルティが加えられることになった。
2018シーズンは優勝が15ポイント、11位以下は0ポイントだった。それが今シーズンからは優勝が25ポイント、14位でも1ポイントと全員にポイントが与えられる。また、決勝だけでなく予選の順位によっても1位は3ポイント、2位に2ポイント、3位は1とポイントが加算されることになった。この二つの変更によってパイロット達は戦い方やフライトを変えることになった。
ゲート7が鬼門
室屋はフリープラクティス(公式練習)から調子が良かった。そして予選では見事にトップタイムをマーク。3ポイントをゲットする。しかし安心はできなかった。14人のタイムは拮抗していて誰が勝ってもおかしくないような状態だ。
今回のレースで鬼門となったのはゲート7だった。コースのエンド、6ゲートから7ゲートで180度方向を変えなければならないのだが、その丁度真ん中に7ゲートがある。パイロット達はほとんど直角に機体を傾け、限界ギリギリのGをかけながら1/100秒でも早く旋回を終わらせようとする。ところがこの7ゲートを通るときは機体を水平にしなければならない。
速度が400km /hだとすれば機体は0.1秒で11m以上進んでしまう。エッジ540のロールレイト(機体が傾く速さ)は1秒間に420度(実際はもっと鋭くロールするようにチューニングされている)だから90度に傾いている機体を水平にする為には0.21秒かかる。パイロットは限界ギリギリの旋回をしながら、狭いゲートを通るラインに乗せ、0.2秒前に機体を水平にしてゲートを通過。すぐにまた機体を垂直に傾けて旋回を続けなければならない。3/100秒ずれるだけで2秒のペナルティが加算されてしまう。人間の反射神経では対応不可能なほどの速度。ペナルティを加算されるパイロットが続出した。そんな中、室屋はノーペナルティで勝ち進み、ファイナル4への進出を決めた。
室屋の出番は不利な一番手
ラウンド・オブ8で圧巻だったのはマーティン・ソンカのフライトだった。2018年の世界チャンピオン、ソンカは、マット・ホールと対戦。1周目で11Gを超えてしまい1秒のペナルティを受けてしまう。そこからグイグイと追い上げて遂にホールを下してしまう。
こうして決勝はニコラス・イワノフ、室屋、ソンカ、マイケル・ギューリアンの戦いとなった。イワノフがエンジントラブルで棄権したため、最初に飛んだのは室屋だった。レッドブルエアレースは後から飛ぶ方が有利だ。前に飛んだパイロットのタイムを見て作戦を立てられるからである。
しかも決勝では風が180度向きを変え、ゲート7では背後から風が吹いたことで更に難易度が上がってしまった。ライン全体が風下に流されてしまう為、ゲート6から脱出するラインを少し風上側に修正しなければならない。そんな難しいコンディションにも関わらず、室屋のフライトは安定していた。危なげなくフライトを終え、53秒780を記録する。
ギューリアンは、このタイムに追いつくことができなかった。問題は最後に飛ぶソンカだった。ゴーストで飛ぶ室屋の機体の前にソンカの機体が出る。しかし最終的には3/1000差という僅差で室屋が優勝。予選での3ポイントも加わって28ポイントを獲得。2位のソンカを6ポイント引き離すことになったのである。
こうして室屋は第一線からライバル達をリードすることに成功した。安定してミスの少ないフライトや落ち着いたレース運びを見ていると、このままチャンピオン奪還に対しての期待が膨らんできてしまう。今シーズンの室屋のレースは面目が離せそうもない。
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